生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

博物館 (はくぶつかん)

museum
キーワード : 基本的機能資料、ICOM、登録博物館、博物館相当施設、博物館類似施設
大堀哲(おおぼりてつ)
2.博物館の現状と課題
  
 
 
 
   わが国の博物館数は、文部科学省社会教育調査によると平成14(2002)年10月1日現在、博物館法に基づく登録博物館、博物館相当施設および「登録」、「相当」の指定をうけていないが博物館施設と同等の規模を持つ博物館類似施設の3つのカテゴリーの博物館を合わせて5,363館園であり、それぞれ819、301、4、243館園と、圧倒的に博物館類似施設の数が多い。また、設置者別に見ると、公立博物館が全体の7割強、ついで私立博物館、国立博物館の順となっている。種類別では、歴史系が全体の6割弱で最も多く、次いで美術、科学博物館などの順となっている。
 こうしたわが国の博物館は、今日、人々のニーズの拡大、グローバル化、情報化・国際化の進展の中で、取り扱う資料が国際的に拡大しつつあること、インターネットによる博物館の外部の情報の流通が進んでいることなどもあって、これまでにない多様化を見せている。その例としては地域全体を博物館ととらえるエコ・ミュージアム、企業の社会貢献、製品の科学的・教育的説明の観点から設立された企業博物館などがある。そして博物館活動の内容の面でもそれぞれの個性、特色あるものを企画、実施することに力を入れだしている。参加体験型の展示は科学系博物館のみならず、人文系博物館においても積極的に導入されつつあるし、地域住民が学芸員のパートナーとなって調査研究に参加したり、その成果を共同で展示などに反映させたりするところも増えているし、学芸員やボランティアと利用者との交流、対話を重視し、利用者増を図るなど多彩な工夫が見られる。
 しかしながら、今なお博物館或いは博物館界が直面している問題点も少なくないのが実状である。即ち財政、組織や人的体制、施設設備、所蔵資料、地域や他の機関・団体等との連携、効果的な運営方法などの面で問題があり、博物館の孤立性、閉鎖性が解消されていないことなどである。こうしたことが経営の危機、利用者数の減少を招いていることは否定しがたく、従来は考えられなかった博物館の閉館も見られるに至っている。こうした問題点を直視しながら、博物館の発展・充実のためにどのような課題があるのかを把握しておかなければならない。
 バブル経済が崩壊して以来、規制緩和、地方分権化、学校における総合的学習時間の導入、完全週休二日制や生涯学習時代の到来に伴う自由時間の増大、個人レベルの学習意欲の高まり等々、博物館を取り巻く環境は激変している。人々の文化的環境や知的欲求の増大等に即して、博物館として地域住民、利用者の動向や多様なニーズを意識した活動を実施していくこと、生涯学習の場として地域の文化的役割を担うために常に利用者との豊かなコミュニケーションを図ることなど、運営上の課題は少なくない。さらに新しい時代の博物館には、より効果的、効率的なマネジメントを担当できる人材育成や財政基盤の確立、地域住民の博物館活動への参加・参画、地域住民や利用者に対する満足度の実現、説明責任を果たすための博物館評価の推進、平成15(2003)年の地方自治法の一部改正に伴い導入された指定管理者制度下の博物館運営のあり方等、博物館或いは博物館界の抱える課題は山積している。
 
 
 
  参考文献
・大堀哲編著『博物館概論』樹村房、1999年9月
・大堀哲編著『博物館概論』学文社、2005年4月 
 
 
 
 
  



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