生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2009(平成21)年8月27日
 
 

図書館の評価 (としょかんのひょうか)

library evaluation
キーワード : マネジメントサイクル、評価指標、ISO11620、JISX0812
青柳英治(あおやぎえいじ)
2.図書館サービスの評価指標
  
 
 
 
   図書館サービスを定量的に評価する場合、通常、収集された統計や測定されたデータをもとに評価指標を算出する。評価指標は、1)インプット、2)アウトプット、3)アウトカム、4)プロセスの4つに分けられる。1)インプットとは、アウトプットやアウトカムを提供するために、実際に使用した経営資源である。図書館サービスでは、資料や設備、図書館職員が経営資源にあたる。2)アウトプットとは、住民に提供されたサービスの量である。行政の執行部門が「何をしたのか」、その結果、住民に「何が提供されたのか」を示すものである。図書館サービスでは、貸出、閲覧、レファレンスといった各種サービスが相当する。3)アウトカムとは、アウトプットが住民に及ぼした影響の度合いである。行政サービスの実施によって、その結果、「何を導いたのか」を示すものである。図書館サービスでは、サービスが生み出した効果や使命の達成度に関わるものである。4)プロセスとは、インプットからアウトプットに至る過程の効率性に関わるものである。
 上述したインプット、アウトプット、アウトカムを加工することによって、経済性、効率性、有効性の3つの基準が設定できる。経済性とは、アウトプットを一定にしてインプットの最小化を図ることであり、効率性とは、インプットを一定にしてアウトプットの最大化を図ることであり、有効性とは、アウトプットを通じてアウトカムを達成することである。この3つの基準を分析・評価できる指標がパフォーマンス指標であり、パフォーマンス指標にもとづく評価をパフォーマンス評価という。
 図書館界では、1980年代に米国において、行政評価におけるパフォーマンス測定の手法を導入したサービス計画立案の考え方が提案され、以降、さまざまな評価指標が考案されてきた。これらの代表的なものに、国際標準化機構(ISO)によって1998年に制定された図書館パフォーマンス指標の国際規格(ISO 11620)がある。
パフォーマンス指標は、数値によって表示されることから、図書館サービスを数量的に評価するためのツールであると見なされる。
 1990年代に入ると、利用者による評価という新しい領域も注目され始めた。図書館サービスの品質評価に関しては、テキサスA&M大学の研究者らによって進められたLibQUAL+がある。これは、マーケティング分野におけるサービス品質評価手法であるSERVQUALを基盤にし、実際に受け取ったサービスの水準(実感値)と期待していたサービスの水準(期待値)との差を調べることで品質を評価するものである。そのため、主観的な判断や意見をもとにした質的評価の手法であると言える。
 図書館サービスの測定・評価にあたっては、個々の図書館のサービス目標や図書館経営上の測定・評価の目的に照らして、経営的な判断のもとで評価ツールを選択する必要がある。そのため、図書館経営者には、図書館を取り巻く環境、図書館の理念、サービスのあり方などに関する深い知識と経験が求められる。図書館経営者が、こうした資質をいかにして習得するか今後の課題となる。
 
 
 
  参考文献
•日本図書館協会図書館ハンドブック編集委員会編『図書館ハンドブック』第6版、日本図書館協会、2005、p.127-138.(田村俊作「B.公立図書館の計画と評価」)
•図書館情報学ハンドブック編集委員会編『図書館情報学ハンドブック』第2版、丸善、1999、p.693-697(糸賀雅児「6.4 サービスの測定と評価」)
 
 
 
 
  



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