生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2012(平成24)年4月2日
 
 

パリ市における音楽領域の生涯学習支援 (ぱりしにおけるおんがくりょういきのしょうがいがくしゅうしえん)

キーワード : フランスの生涯学習、フランスの音楽教育、フランスの音楽支援、生涯学習と音楽
永島茜(ながしまあかね)
2.パリ市における音楽領域の生涯学習支援
  
 
 
 
   パリは、芸術の中心地として美術館や華やかなコンサートなどが注目されるが、生涯学習としての音楽活動支援については、概ね1)アニマシオン活動、2)アマチュア芸術活動支援、3)多様な音楽活動支援の枠組みで行われている。
 1)アニマシオン活動については、パリ市には、48のアニマシオンセンターが設置されている。これは、パリ市各区に均等に設置されているのではなく、市中心部や高所得者が多く住む地域には設置されていない。提供されるプログラムは、スポーツ、ダンス、演劇、音楽、マルチメディア、手工芸、環境教育などの分野からおよそ400講座が提供されている。毎年約6万人がこれらのプログラムに参加している 。音楽分野については、ピアノやソルフェージュなど芸術音楽に関する講座のみならず、エレキギター、コンピューターによる作曲などポピュラー音楽に関する講座や民族音楽の講座まで多彩なプログラムが用意されている。それぞれのセンターが、例えば環境や視聴覚など重点的に力を入れている分野があり、それに沿った講座を提供している。殆どのセンターで音楽分野の講座が設定されているが、もし至近のセンターに無い場合でも徒歩が可能な範囲の他のセンターで用意されている。
 2)アマチュア芸術活動支援については、2006年に「アマチュア芸術活動館」が開館した。これは、a.アマチュア活動家への情報提供、b.活動分野に対するより深い理解を促す、c.アマチュアとプロフェッショナルの出会いの機会を提供する、d.実験的な試みや活動の共有を促進する、e.舞台を制作することが目的とされる。
 アマチュア活動家に対する情報提供の面では、例えばコーラスをしたい人に活動グループを紹介したり、個人レッスンを受けたい人に教師を紹介したりしている。またプロフェッショナルによるコンサートや舞台を企画しているが、これらは実験的な試みによるコンサートやパリ地域圏立音楽院や区立音楽院の学生とプロフェッショナルのコラボレーション、またはワークショップ型のコンサートなど伝統的なコンサートの形式ではない。
 アニマシオンセンターの活動が全年齢層を対象とした学習に重点が置かれていたのに対し、この「アマチュア芸術活動館」は、成人のアマチュア活動自体の支援を行っていると言える。従って、コンサートの内容を見ても分かるようにアマチュア活動家に要求されるレベルも高く、成熟した観客、活動家でないとこの機関が提供するものを享受する事は難しい。
 3)多様な音楽活動支援としては、主に「現在の音楽(musiques actuelles)」と呼ばれる分野における支援である。これはクラシック音楽や現代音楽などの芸術音楽には含まれない音楽を示している。2008年にはパリ18区に音楽センター「バルバラ」が開館し、主にこれからデビューしたいグループの支援やコンサート開催、情報提供を行っている。アニマシオンセンターやアマチュア芸術活動館のような生涯学習活動支援という目的は前面に出されないものの、これからの音楽活動支援のひとつの参考例として興味深い。具体的には、活動するグループの要望を聞きそれを実現できるような支援を行っている。要望内容としては、マイナーレーベルからのデビュー等があり、それに対して音楽内容から関係者の紹介まで総合的な支援を行っている。また最近では、インターネット上の音楽や動画サイトにもセンター自ら投稿するなどの方法でプロモーション活動を行っている。
 
 
 
  参考文献
・永島茜「フランスの社会教育・生涯学習における音楽分野―パリ市とその周辺における実践活動の調査から―」『日本生涯教育学会論集(2009年度日本生涯教育学会研究助成研究成果報告書)』32号2011年、pp.191-202.
 
 
 
 
  



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