生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年12月30日
 
 

指導者養成講座の内容と方法 (しどうしゃようせいこうざのないようとほうほう)

contents and methods of educational leader training program
キーワード : 実践力の養成、人材蓄積、宿泊型断続研修、人間関係形成、理論と実践の往復
大島まな(おおしままな)
2.実践を育てる指導者養成講座の内容と方法
  
 
 
 
  【実践を必修とした指導者養成講座】
 山口県生涯学習推進センターは、従来型の座学研修では期待する人材は育たず、蓄積もされていないことから、実践の遂行を必修とする研修プログラムを実施した。そのねらいは、1)実践者を育成し、県内各地で自らの意志と方法によって持続的に何らかの生涯学習関連事業を創始するイニシャティヴ・グループを形成すること、2)研修後に、引き続きセンターの事業に参加・協力してくれる生涯学習ボランティアの確保および蓄積である。これらが達成されるならば、研修の効用度が証明され、公金投資のアカウンタビリティが向上するからである。
【講座の概要】
 講座は、平成16(2004)年度から3年間、同一事務局、同一テーマ、同一講師陣によって山口県セミナーパークで実施された。土日にわたる2日間研修を2回繰り返し、最後は土曜日の1日研修で締めくくる「3回−2泊−5日間」の断続研修で、土日の研修には宿泊と懇親会を組み込んだ。
 受講生は公募制(2年次以降)で、毎年30〜40人の受講があり、民間グループ・サークルのメンバーと一般の個人参加者が主流であった。
 最大の特徴は、受講生がテーマ別のグループを編成して、県内各地で生涯学習事業を起業するという点である。最終回には各グループの実践報告会を行い、レポートを作成した。
【プログラムの視点と工夫】
 グループワークが中心的活動であるため、集団の人間関係形成が研修効果に大きく作用する。また、実践が必修といってもそこに強制力があるわけではない。このような点を考慮して、実践力を効果的に育成するための視点と工夫は、以下の通りである。
1)実践を必修とした研修であることを事前に周知することによって、受講生に覚悟ができている。あるいは、それを望んで参加している。
2)教育行政の推薦方式による義務的参加者から脱却し、完全公募制による希望参加者に絞ることで、やる気のある受講生が集まった。
3)受講生の問題意識を紡ぎ出すために、さまざまな具体的事例を「モデル」として提示し、その背景、目的、内容、方法を解説、分析した。
4)理論や計画案の「現場検証」を行うとともに、現場実態から新しいアプローチや考え方を導いて、それを次の企画に生かす「理論と実践の往復」がある。
5)宿泊型断続研修によって、懇親会などの「交流」や寝食を共にするなど「体験の共有」の場が多く設定され、研修および実践に対する意識を焦点化することができた。
6)KJ法の作業過程をグループの全員で共有することにより、メンバーの参画度が高まり、共通理解が深まり、チームワークの姿勢が確立し、実践場面における目的・方法が最後までぶれない。
7)事務局および講師陣は、実践現場へ足を運んだり、事業スタートの予算を準備するなどの「応援」や、実践の意義を認めて評価する「社会的承認」、各グループの進捗状況を報告しあう通信紙の「広報」など、物心両面での支援体制に留意した。
【講座の具体的な成果】
 グループ別事業では、世代間交流、環境学習、過疎対策、防災、高齢者の学習、子育て支援などのテーマで、すべてのグループが事業を実施した。研修終了後も、継続・発展しているものもある。また、現実対応能力を身に付けた講座の修了生が生涯学習ボランティアとしてセンターの中核事業に参加するなど、生涯学習関連事業の核となりうる人的資源が蓄積されている。
 
 
 
  参考文献
・三浦清一郎「研修効果を問わなくていいか−『公金投資のアカウンタビリティ』−実践を前提とした宿泊型断続研修における人間関係の形成過程と実践力の養成」社会教育、財団法人全日本社会教育連合会、第62巻6月号、2007年
・『平成18年度生涯学習活動プランナー養成セミナー実践事例集』山口県ひとづくり財団 生涯学習推進センター、平成19年
 
 
 
 
  



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