生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2005(平成17)年9月14日
 
 

学校教育改革と生涯学習 (がっこうきょういくかいかくとしょうがいがくしゅう)

school education reform and lifelong learning
キーワード : 教育改革、学校教育、臨時教育審議会、中央教育審議会、生涯学習体系への移行
吉武弘喜(よしたけひろき)
1.学校教育改革と生涯学習
   
 
 
 
  【説明】
 教育政策の理念として生涯教育の考え方が国際的に取り上げられた背景には、現代の急激な社会の変化に学校教育だけでは対応が困難になったという背景がある。したがって、生涯教育・生涯学習政策の中心的な課題は、特にその取り組みの初期においては、学校外の教育システムを整備充実することにその力点が置かれた。しかし、1960年代にユネスコで取り上げられた生涯教育の構想には、当初から、学校教育を含めた人間の生涯にわたる総合的な人格形成のための教育原理の構築という視点が含まれていた。
 我が国では、早くは昭和46(1971)年や56(1981)年の中央教育審議会(以下「中教審」と略称)の答申で、既に生涯教育の視点から教育体系を総合的に見直す必要性についての言及がある。しかし、学校施設の開放、公開講座の拡大、放送大学開設への努力などの取り組みは早くからあったものの、生涯教育を標榜する施策は、主にはやはり社会教育、職業訓練など学校外の教育分野で進められていた。
 学校教育に関して生涯学習の視点からの要請が改革の動機とされるようになったのは臨時教育審議会(昭和59(1984)年〜62(1987)年、以下「臨教審」と略称)の答申からであるといえよう。臨教審答申が、「生涯学習体系への移行」を改革の柱とし、初等中等教育では「自己教育力の育成」を重視し、大学、高等学校等では「社会人が学習できる場として整備する」という方向を示したことによって、その後、学校教育に関しても、学習社会の理想に向かって種々の改革がなされつつある。
【動向】
 生涯学習の視点に立てば、人生初期の学校教育においては、生涯学び続ける意欲や学び方を身に付けさせる教育を重視する必要がある。平成8年の中教審答申は「ゆとり」の中で「生きる力」を育むという考え方に立って、学習内容の精選、学校週五日制の導入、横断的・総合的な学習の推進などを提言した。これに基づく新教育課程は、小・中学校では平成14(2002)年度から、高等学校では15年度入学者から実施されている。
 また、学校の教育資源を社会人の学習のために活用することについては、まず昭和40年代には小・中学校の校庭や教室など学校施設の地域への開放を促進する施策が講じられた。次に、学園紛争を終えた昭和50年ごろから、高校や大学についても、その学習資源(教員、施設・設備)を活用することが検討されるようになり、特に高校開放講座や大学公開講座の拡大が推進された。
 さらにその後のほぼ20年間においては、特に高等教育段階において、放送大学の発足、科目履修生制度の導入、単位の累積加算による学位認定制度の創設(学位授与機構の発足)、大学間の単位互換制度の専門学校や資格試験への拡大等、画期的な制度面の改善がなされてきた。加えて、入学者選抜方法の多様化、編入学条件の緩和、学部・学科等組織改編の規制緩和などによって社会人が学びやすい学部や大学院のコースも増えている。その後、放送大学は通信衛星と全都道府県への学習センター配置によって全国化され、インターネットを利用した大学、高等学校も開設された。
 また、最近では、「開かれた学校」をめざす施策の推進によって、小中学校の教育に地域の人材を活用するという動きも広がりつつある。こうした改革は、人々の生涯学習の機会を豊かにする上で有意義なものであると思われる。
 
 
 
  参考文献
・『文部科学白書』(旧称:「教育白書」)各年度版(特に平成13年度版の特集「21世紀の教育改革」)国立印刷局
・中央教育審議会答申「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策」(昭和46年6月)文部科学省ホームページ
・中央教育審議会答申(昭56.6)、臨時教育審議会答申(昭60.6〜62.8)については生涯学習・社会教育行政研究会編集『生涯学習・社会教育行政必携(平成16年版)』第一法規
 
 
 
 
   



『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。
<トップページへ戻る
 
       
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved.