生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2007(平成19)年3月5日
 
 

静岡県の実践事例:掛川市の生涯学習まちづくりと清見潟大学塾 (しずおかけんのじっせんじれい:かけがわしのしょうがいがくしゅうまちづくりときよみがただいがくじゅく)

キーワード : 生涯学習まちづくり
阿部耕也(あべこうや)
2.清見潟大学塾
  
 
 
 
  【概要】
 清見潟大学塾は、清水市(現静岡市清水区)の生涯学習の一環として、昭和60(1985)年設立された市民参加型生涯学習システムである。きっかけは昭和59(1984)年の「清水市高齢者教育促進会議」の提言にあり、地域の生涯学習のため学ぶシステムと人をつなぐネットワークの必要性を説き、民間活力と「市場原理」の導入、ボランティア精神を重んじるという方向が示された。また、高齢者の生きがいが学ぶことと共に教えることにもあるとし、そうした場を市の支援を受けながら市民が提供するという、清見潟大学塾の原型ができあがった。平成18(2006)年度現在、受講生3023名、教授数91名を数え、講座数は150を越える。受講生の年齢も7歳〜93歳と幅広い。
 大学塾の基本理念は 「遊び心で 大学ごっこ」であり、市民教授による開講が基本だが、市内外企業の後援によって運営され、大学教授を招聘して開かれる「清見潟セミナー」もある。
【システムの特徴】
 市民参加型生涯学習システムを実現するため、大学塾は以下のような制度を導入する。
1)教授公募制──従来の生涯学習システムが学習機会を求める市民に焦点化したのに対し、清見潟大学塾は「教えることを自らの生涯学習・生甲斐」としたい市民教授を公募し、自己推薦によって講座を開講する。
2)有料制とクーリングオフ制度
講座は月1回と2回のいずれかであり公民館で行われる。月1回の講座は塾生が受講料5000円と塾運営費1000円、月2回の講座はそれぞれ10000円と1500円を支払れ、原則として受講料はすべて講師に支払われる。また、開講して2ヶ月以内に申出れば授業料は返還される。
3)教授陣による自主運営制度──基本的に塾の運営は教授自身によるものとし、全体的な運営は、教授陣より選出された塾長・副塾長を中心に管理責任者である中央公民館長がコントロールする。
4)市場原理の導入:受講希望者10人未満の講座については不成立となる。大学塾の運営費用は授業料を含めそのほとんどが塾生負担であり、講師料は塾生数により異なる。
【市民と行政の役割分担】
 清見潟大学塾は市民教授による講座開催であり、コーディネートも市民が行う。行政は広報、場所の確保など、陰で支えるかたちをとる。
 事務局は、現在清水中央公民館に置かれているが、各講座の運営はほとんどが市民教授によって行われている。清見潟大学塾としては講座開催場所の確保・調整、市との連絡、受講生の苦情処理といったコーディネートを行っている。
【ネットワーク】
 富山県生涯学習カレッジ「自遊塾」、「たま市民塾」、「東海道金谷宿大学」など、清見潟大学塾のシステム(特に教授公募制)に影響を受けた生涯学習システムが全国にでき、連絡・交流が行われている。また、10周年記念全国サミット、15周年記念生涯学習のまちサミット・IN清水、20周年記念生涯学習全国フォーラムなどの事業も開催しており、積極的に地域間交流をはかっている。
【課題】
 市民による自主運営を基本にした清見潟大学塾であるが、庄司勲塾長によれば、現在、教室の確保と経営を考える人材の確保という2つの課題に直面しているという。特に、発足時には市内各公民館等の空室を無料で借用するという条件であった教室確保が、市町村合併などの影響もあって難しくなってきており、緊急の課題となっている。
 
 
 
  参考文献
・清見潟大学塾編『新静岡市発・生涯学習20年・自立型長寿社会へのアプローチ』学文社、2004年
 
 
 
 
  



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