登録/更新年月日:2006(平成18)年9月1日 |
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平成15(2003)年、政府は「若者自立・挑戦プラン」を発表した。その一環として、厚生労働省は合宿生活の体験学習を通して就労に結びつける「若者自立塾」の事業を、平成17(2005)年度から全国20カ所を認定してスタートした。平成18(2006)年度は5カ所を追加して合計25の施設で研修事業を展開している。 対象者はいわゆるニート(NEET. Not in Education, Employment and Training)と呼ばれる若者無業者(15歳から34歳まで)で、1施設20人を限度にして1回3カ月の宿泊共同生活の研修を実施して、就労に結びつける教育訓練事業である。 若者自立塾の創出した理由は3つある。第1は将来の社会経済の国家的問題である。若者無業者80万人といわれる人たちが、社会を支える担い手として働かなくては、将来の日本は危ない。加えて、若者が無業者のまま成人すれば、社会保障や生活保護の世話になる。二重の社会的負担を抱えるのは明白である。したがって早急に解決したい課題である。第2は資源のないわが国では、人づくりが中心である。若年期に職業能力を身につけないでいることは、社会も個人にとっても損失である。高品質の人材育成が必要な企業界にとっては致命的なマイナスになる。第3は若者自身の生き方にかかわる。生活設計が出来ないままでいること、キャリア形成の第一歩が躓いたままであることは、教育の由々しき問題である。これは大人の問題であり、社会教育の課題である。 若者自立塾の目的は、親や家族から離れて、同じ境遇にある若者が指導者と仲間と寝食を共にする合宿研修の体験を通して、自分を見つめ直し、自立の意識を養い、社会的技能を修得して、就職ができるように研修するのである。 塾のプログラムは、日常生活の基礎行動の確立(起床時間、食事、清掃、洗濯などの生活習慣)、社会的技能の習得(挨拶の励行、ビジネスマナー、仲間との協力作業、労働参加、奉仕活動など)、資格取得の学習(各種技能検定、パソコン認定など)に大別できる。加えて指導者の個別的アドバイスが日常的に行われる。 塾生活を通して、若者の態度や行動に変化をもたらすものは、 1.仲間と語り合うことが、苦しみの解消と相互の励ましになる 2.協同作業の参加体験が,お互いに助け合うことの学びになる 3.自然の中で過ごすことで、山畑の匂いや海の景色にふれて、自分を見つめ直す機会になる 4.指導者との個別面談やカウンセリングやコーチングといった個人的アドバイスなどの機会が、親身に相談してもらえて、人間として認めてもらえた満足感につながる 5.自分が認められ、尊重された経験をすることによって、自分の存在価値を認識するようになる 6.免許や資格を取得することで、自分も社会に役立つ存在と自覚する などである。 合宿研修の成果は、約半数の塾生は自立して就労にむすびついた。進学希望者や求職中の人を考慮すると、大半の若者はひきこもり状態から脱皮したといえる。ジョブカフェやハローワークが就職の斡旋をしており、サポート・ステーションのような連絡と支援体制が整備されてきたので将来に望みがもてる。 br> |
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参考文献 |
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