登録/更新年月日:2012(平成24)年1月3日 |
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欧州では、2000年のリスボン戦略以降、生涯学習ネットワークの形成が盛んに行われている。知識基盤型社会の到来に対して、EUを中心とした欧州地域が世界において牽引役となっていくために、生涯学習がその鍵となると考えられている。 リスボン戦略以前から、EUにおける生涯学習振興や人的交流のプログラムは実施されていた。「ソクラテス1(SOCRATES1)」はその一つであり、中等教育段階、また高等教育段階の生徒たちの人的交流や短期留学、そして職業訓練分野も含めた「教育におけるヨーロッパ的次元(European Dimension)」を目標として共同事業が実施された。そして1997年には「知のヨーロッパに向けて(Toward a Europe of knowledge)」が発表され、生涯学習を基盤とした「知識基盤型社会」構想が打ち出され、雇用の促進とヨーロッパ市民の育成がその主題とされた。 そしてリスボン戦略で、2010年までに欧州の経済を雇用改善や社会的結束力を伴った持続可能な経済成長力を持ち競争力のある社会にすることが謳われ、2000年に「ソクラテス2(SOCRATES2)」が開始される。これにより開始されたのが、「グルントヴィ(GRUNDTVIG)」であり、「ソクラテス2」内の成人教育分野のプログラムとして開始された。「グルントヴィ」という名称は、デンマークにおける19世紀半ばからの伝統を有する自由成人教育であるフォルケホイスコーレ(Folkehøjskole)を始めとして、国内外の特に成人教育において大きな影響を与えたニコライ・フレデリク・セヴェリン・グルントヴィ(Nikolaj Frederik Severin Grundtvig)の名前から付けられている。 「グルントヴィ」では、フォーマル、ノンフォーマル、インフォーマルな学習を含めて、国を超えた協力活動、成人教育関係者の研修やネットワーク作りを支援し、生涯学習を促進することが狙いとされている。そして2007年にはこれまでの各プログラムを統合・再編し発展させる形で、「生涯学習プログラム(Lifelong learning Program)」が開始された。 「生涯学習プログラム」においても、「グルントヴィ」は成人教育分野の名称とされ、具体的な目標としては、成人教育に関わる全ての組織と個人を対象とし、非訓練者に限らず、教員やスタッフ、学校、関連団体、NGO、図書館、博物館、組合、ボランティアグループ、地方から国レベルの組織も対象とし、特に基礎教育を受ける権利のなかった人々や、社会的、経済的に不利益な状況にある人々に焦点を当てている。そして成人の知識とスキルを向上させ、精神的な面、また被雇用能力や潜在的な各人の能力を高めることを目的としている。 数値的な目標として、2013年までに成人教育への参加者を2万5,000人に増加させること、1年で最低7,000人の人的移動を実現すること、そして従来成人教育に馴染みのなかった人々(高齢者や低学歴者)を成人教育にアクセスさせることも盛り込まれている。 多国間での共同プロジェクトが基本となっており、様々な国の機関が参加しプロジェクトを実施し、そこに助成金が下りる形式となっている。 具体的に実施されているプロジェクトとしては、移民労働者をその国の社会、文化に適応させるための学習や、高等教育を受けた退職者と、早期に学校教育からドロップアウトをした若者との交流プログラムといったものがあり、経済的、社会的不利益層や、社会的に周縁にいる人々を対象にしたもので、社会的な結束力を高めるという意図も見られる。但し、参加国の割合の不均等、予算の拡充の必要性、研究者のネットワークの構築といった課題も指摘されている。 br> |
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参考文献 ・澤野由紀子「EUの生涯学習政策とガイドライン」『日本生涯教育学会年報』日本生涯教育学会編、第31号、2010年。 ・佐藤裕紀「EUにおける「生涯学習プログラム(2007-2013)」の特徴−教育政策の史的変遷と実際から」『比較・国際教育学論集』早稲田大学大学院教育学研究科比較・国際教育学研究会編、第4号、2010年。 |
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