生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年11月11日
 
 

生活体験学習の評価 (せいかつたいけんがくしゅうのひょうか)

キーワード : 生活体験、評価、事業評価、フィードバック、プロセス評価
井上豊久(いのうえとよひさ)
1.生活体験学習の評価
   
 
 
 
  【定義】
 生活体験学習に関する評価全般を意味する。生活体験学習の評価とは、生活体験学習の過程に沿って価値・目的・目標が達成できたかどうかを省察し、次回へとつなげていき、改善の視点を示していくものである。
【意義】
 体験学習においては従来、活動したということに重点が置かれすぎ、「やりっぱなし」という現状が多々みられたが、生活体験学習においては、その成果をよりよいものへと変えていくものであり、生活体験学習を子どもの心身の発達ときり結んでいくためには評価を着実に行っていくことが不可欠である。生活体験学習においては確かに、実施者の「思い」や「実施環境」によって評価も多様となることも事実であり、実施者以外の評価は単なる感想や意味のない攻撃的批判としてとらえることもできる。しかし、「勘や経験」「思いつきや思いこみ」だけではなく、生活体験学習支援・促進組織の発展や技能向上の観点から可視性を重要視し、具体的な視点や目標といった評価基準を公開することを前提とし、評価は誰がしても確実にできるということを実現していくことも1つの方向として求められる。また、今後は環境への負荷、施設・設備・備品、準備業務、心身両面への負担、人員、労力、予算の投入といった観点から目標と成果のあり方を検証し、コストパフォーマンスに基づいた成果アピールも重要となろう。
【評価すべき目的・目標・内容】
 評価のねらいは生活体験学習活動、あるいはその指導・支援・促進の実態を知ることであり、実態をいかすことであり、フィードバック機能は欠かせない。活動の実態を知るということでは、従来は結果を知るという意味での「プロダクト評価」が中心に考えられてきたが、現在は活動あるいは支援の過程を知るという意味での「プロセス評価」が重要視され、体験活動の評価においても、スパイラル的な短期・中期・長期の評価の効果が示されてきている。具体的には、問題発見期、ニーズ把握期、企画・計画期、準備期、試行期、実施期、実施直後期、実施後時間を経た期、それぞれの期で評価を実施し、それぞれの期でフィードバックしていくということを過程として組み入れていくダイナミックな評価のあり方が求められてきている。
【評価の方法】
 誰が評価するかということに関しては大きく自己評価・他者評価がある。事業評価の場合には事業実施者の評価と共に、参加者、依頼者・資金提供者・ボランティア、地元住民、関係官庁等の関係者、及び外部の専門家からの評価も求められる。また、それぞれの過程において、企画者、現場スタッフ、現場リーダー、プログラムの監督者といった評価責任者の分担も求められよう。どう評価するかについて、記録、面接、ミーティング、相互評価、ポートフォリオ、レポート、報告・交流会、アンケートから参与観察まで、生活体験学習と関わる評価方法は多様であるが、生活体験学習においては、それに加え「・・・について知る」という視点よりも「・・・についてできる」という行動評価が取り入れられる必要がある。
【課題】
 評価の意義が理解されていない、評価結果がいかされていない、生活体験学習の評価の視点のさらなる確立が求められる、スタッフが自ら実践の成果を確かめるという意識が少ない、評価方法・内容のマンネリ化、評価組織やシステムが確立されていない、多様な評価がなされていない、などが挙げられる。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
   



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