生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

男性の生涯学習 (だんせいのしょうがいがくしゅう)

lifelong learning for man
キーワード : カルチャーセンター、団塊の世代、中高年の生き方、男性の好む講座
野崎俊一(のざきしゅんいち)
1.男性の生涯学習−カルチャーセンターを中心に−
   
 
 
 
  【概況】
 ライフスタイルの変化、価値観の多様化と人生80年時代の到来を背景に人々の生涯学習への関心が高い。これとともに国民の求める生涯学習の中身も幅広いものがある。
 生涯学習の意義が強調されるようになったのは1980年代に始まる。生涯学習の受け入れ体制のうち、民間社会教育機関でその一翼を担っているのがカルチャーセンターである。一般的なイメージとして、「市民大学」とか「成人学級」「学習サークル」「知的サロン」として知られた存在になっている。しかし、「カルチャーセンター」の名称が国の白書に登場したのは20年ほど前であるように、いわば新興教育産業ということができる。
【カルチャーセンターの実態】
 受講生の実態はどうか。
 男女比率をみると、全体の83パーセントは女性で占められ、男性は60代と50代が中心だが、この年代を合わせても全体の7.5パーセントにすぎない。また、20代と30代男性はいずれも1パーセントにとどまり、40代にしても2パーセントの低い数字。いわゆる働き盛りの男性はカルチャーセンターとは縁が薄い存在であることがわかる。
 男性受講生が少ない原因については様々ある。全国民間カルチャー事業協議会(加盟48社)のアンケート「男性受講生の現状とその対策」(平成6(1994)年)によると、男性をターゲットにした講座はほぼ過半数のカルチャーで開講にしている。それにもかかわらず数字が低い最大理由は、「開講の時間帯が働き盛りの年代の男性向けでない」としている。男性受講生の多い講座は多い順に並べると、油絵・日本画・水墨画など「絵画関係講座」と「囲碁」が双璧。続いて社交ダンス、写真、ゴルフ・陶芸が目立つ。
 統計予測によると、65歳以上の全人口に占める割合は、平成7(1995)年の14.6パーセントから急速に上昇し、平成27(2015)年25パーセントを上回り、4人に1人が65歳以上ということになる。そして平成37(2025)年には27.4パーセント、平成50(2038)年には30 パーセントを超え、 平成62(2050)年には32.3パーセントに上昇、その時は3人に1人が65歳以上という計算になる。この半数が男性である。
 平成19(2007)には直面する課題がある。つまり団塊世代のリタイア後の生き方である。この世代は比較的自由になる所得を有しており、主体性を持ち、個性が強いとされる。これまでの中高年層の男性は会社人間と揶揄され、これといった趣味や楽しみも持たずに定年まで一生懸命働くという「人生50年型」であった。しかし、高齢社会を迎えた今、この団塊世代の生き方は国にとっても大きな関心事になっている。
 その一つが生涯学習であろう。本人がその気になれば、金銭的には多少の制約は受けるものの、現役時代に比べれば、はるかに自由な時間と精神的なゆとりで多彩な活動ができる。しかし、高学歴で、個性も強い世代だけに「公民館で囲碁・将棋をする」といった隠居的なイメージの講座では満足しないし、民間カルチャーでも従来の講座では見向きされないのではないか。
 ではどうするか。趣味・教養講座の充実に加えて、実務・資格講座の新設と拡充など時代の流れに対応することはもちろんのこと、履修科目や単位の互換性など改革することはいくらでもある。民間カルチャーセンタでも男性対策を重要課題としてとらえている。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
   



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