生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年12月21日
 
 

高校生の介護に関する意識 (こうこうせいのかいごにかんするいしき)

キーワード : 高校生、介護意識
青柳育子(あおやぎいくこ)
1.高校生の介護意識
   
 
 
 
  【定義】
 少し前まで介護という言葉は一般的ではなく、看護という言葉で表されていた。関係法規で使用されたのは昭和36(1961)年の児童扶養手当法施行令が最初であったが、昭和62(1987)年の「社会福祉士及び介護福祉士法」で「介護」が初めて法律名に用いられてから「介護」は徐々に一般化されてきた。その法律では、介護を「入浴、排泄、食事その他の日常生活を営むための世話」として示している。
【動向】
 わが国の高齢化は急速に進展し、平成19(2007)年総務省発表によれば、65歳以上の高齢者人口は2740万人となり、全人口に占める割合は21.5%となった。今後、まだまだ高齢化は進み、2050年には、39.5%になると推計されており、現在の高校生が高齢期に入るときには、大人の約二人にひとりが高齢者の社会となる。
 近年、核家族化や女性の就業率の増加などによる家庭介護力の低下があり、長寿化による介護期間の長期化及び介護の重度化があり、また、独居高齢者や高齢者夫婦のみ世帯が増加し、多様な介護問題が顕在化している。介護の社会化が検討され、平成12(2000)年度から介護保険制度が発足したが、制度が始まって8年経った現在、当初の予想をはるかに超える要介護者の増加に介護サービス量が追いつかない状況にある。また、3Kと言われる介護の職場の人手不足が大きな問題となっており、わが国はアジア諸国から介護者を募集する事態になっている。
【課題】
 これからは誰もが介護問題を持つ人生となるが、「介護」については、現在の高校生は、教科「家庭」の中で高齢者の生活と福祉について学ぶにすぎない。また、総合学習の時間で老人ホームに訪問している高校もあるが、一部にすぎない。
 毎日の報道の中で、介護問題が取り上げられる機会が多いが、若い高校生はまだ自分のこととして受け止めていないだろうし、介護職を希望する高校生には夢がなくなる報道が多い。高齢社会を自分らしくよりよく生きる手立てのひとつとして、介護の学習で正しい知識と技術を身につけることが必要と考える。
【事例】
 平成19(2007)年6月に高等学校3校で高校生660名対象に行った介護意識についての調査結果をみると、有効回答632(95.8%)で、女子532名、男子100名の中では、祖父母と同居しているものは164名(25.9%)、身近に要介護者のいるものは107名(16.9%)であった。中学で老人ホームに行ったことがある者は364名(57.6%)、高校では42名(6.6%)である。父母を介護したいと思うものは523名(82.7%)、介護の仕事を重要と思うものは597名(94.5%)、介護を中学や高校で学びたいと思うものは185名(29.2%)、介護の仕事に就きたいと思うものは93名(14.7%)であった。介護の仕事は重要だが、介護は学びたくない、介護職に就きたくないと思うものが多かった。
 
 
 
  参考文献
・『国民の福祉の動向』(財)厚生統計協会、2008年
・青柳育子「高校生の介護意識の実態と課題−高等学校3校のアンケート調査から−」日本生涯教育学会論集29、2008年
 
 
 
 
   



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