生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年11月11日
 
 

安全・危機管理 (あんぜん・ききかんり)

キーワード : 危機、管理、安全、生活体験学習、安全教育
井上豊久(いのうえとよひさ)
1.安全・危機管理
   
 
 
 
  【定義】
 ここでの安全・危機管理とは生活体験学習での安全・危機に関する予防・対処・事後対応等全般を意味する。生活体験学習では子でもたちが様々な経験を重ね、認識を高め、五感を豊かにし、思考力や判断力を付け、多種多様な状況に対応でき、主体的に問題解決を行えるようになっていくのであるが、その際、子ども達が自分自身で安全・危機管理ができていくことが基本である。支援者・指導者等は、安全教育の実施、危険の予防・予知、不測の事態への対応、事故処理・記録化、次回への対応など、安全・危機管理を行う必要が不可欠である。
【意義】
 体験学習においては従来、活動するいうことに重点が置かれすぎ、安全・危機管理においても「事故対応」は多々みられた。しかし、生活体験学習においては、安全・危機管理を子どもの学習として子ども参画・主体でよりよいものへと変えていくことは少なかった。しかし、安全・危機管理体験学習は重要かつ不可欠であり、生活体験学習では子どもの心身の発達と安全・危機管理能力をきり結んでいくために支援・指導者の安全・危機管理の力量形成を着実に行っていくことが並行して不可欠である。スウェーデン等では「生きる力の教育」ということで、自己安全・危機管理が体験的に学習されてきている。生活体験学習においては生活体験学習支援・促進組織の発展や技能向上の観点から安全性を重要視し、具体的な視点や留意点を明示することを前提とし、安全・危機管理が自分で確実にできるということを実現していくが求められる。安全・危機管理能力が高いからこそ生活体験が多様で豊かな身になるものとして展開されるということに留意していくことが重要である。
【安全・危機管理の内容】
 安全・危機管理は事件・事故等の発生を事前に防ぐための「予防対策」と、事件・事故等が発生した場合の被害を最小限に押さえ、再発防止を図るための発生時の対策、の大きく二つに分けられる。安全・危機管理のねらいは生活体験学習活動、あるいはその指導・支援・促進をできるだけ目的が達成できるように自由に展開させることであり、自己評価をいかすことであり、フィードバック機能は欠かせない。安全・危機管理では多面的にとらえながらも、健康、活動内容・指導体制などのソフト面、外的環境、施設・器具などのハード面、の対策が求められる。
【課題】
 安全・危機管理の意義が理解されていない、事故・事件結果が次回にいかされていない、生活体験学習における安全・危機管理のさらなる確立が求められる。その際、基本は子ども・参加者の自己安全・危機管理能力の育成であり、安全・危機管理は自己責任であるという理念の元で、道具等の安全な使い方、活動時の適切な服装、安全な行動の仕方、活動に伴って予想される傷害、危機回避の方法など指導者等と参加者の信頼関係を確立しながら個々人そして集団で主体的に安全・危機管理への実践力を高めていくという方向性が求められる。活動中においては整理・整頓・清掃・清潔・習慣といった5S活動の推進などが求められ、そのための研修や体験学習を充実していくことが課題である。参加者・スタッフが自ら安全・危機管理実践の成果を確かめるという意識を持ち、安全・危機は自分で責任をもってよりよく管理していくという方向性のもとで、管理方法・内容のマンネリ化を打破し、組織やシステムを確立し、多様な安全・危機管理を実施していくことが求められる。また、今後は安全・危機管理のための体系的な体験学習の場や時間の確保が重要となろう。


 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
   



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