登録/更新年月日:2009(平成21)年9月3日 |
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「朝の読書」は、平成8(1996)年11月4日刊行の朝日新聞広告特集(林公教諭 VS 江藤淳氏対談「青春の読書『朝の読書』がもたらしたもの」)で全国的な脚光を集めることとなる。その後,林公教諭が「第44回菊池寛賞」を受賞することで知名度とともに「朝の読書」の認知度も飛躍的に高まっていった。 その頃,「ゆとり教育」の集大成とも称される「平成10(1998)年度版学習指導要領」が告示され,学校週五日制の完全施行に伴う年間総授業時数の削減及び「総合的な学習の時間」の新設等,学校教育の動向に社会からの関心が集まるようになった。特に,マスコミによる「学力低下」論争が大きなうねりを見せる中,文部科学省は,2001年を「教育新生元年」として位置付けるとともに「21世紀教育新生プラン」の三本柱として“朝の読書運動”を取り上げた。国会では平成13(2001)年12月には「子どもの読書活動の推進に関する法律」が成立し,4月23日を「子ども読書の日」と定めた。また,平成14(2002)年1月,遠山文部科学大臣が「確かな学力の向上のための2002アピール(学びのすすめ)」を表明し,その中で「朝の読書」実施を推奨した。このような国家レベルでの推進活動への後押しもあり,「朝の読書」は急速に全国に広まるようになった。 「朝の読書」の教育効果は,書籍やホームページ等を通して様々な実践報告がされているが,大きく括ると次のように報告されている。本を読まなかった子が読書好きになった,図書室利用の増加,読解力がついた,語彙が豊かになった等。他方,読書活動が定着していくと新たな課題が明らかになっている。例えば,学校図書館には読む本が少ない,古い本ばかりで子どもたちの要望に対応していない,蔵書が少ないので継続困難など環境面の整備が指摘されている。この対応には相当の費用がかかるので難しい問題といえよう。また、読書教育と異なる視点からの教育的効果には,遅刻やいじめの減少,他人をおもいやる気持ちの育成,生涯学習の出発点としての役割,メンタルヘルスとしての機能,学校生活に落ち着きをもたらすなど生徒指導面における成果が報告されている。 現在の学校では,平成20(2008)年度に新学習指導要領が告示され,「ゆとり教育」の大幅な見直しが始まろうとしている。例えば、「国語力」をキーワードとした学力向上に授業内容がシフトしたことで,朝の時間にかつて広く行われていたドリル学習の復活論がみられる。新学習指導要領移行にともなう「学力向上論」の風潮の中,児童生徒の活字離れに有効な手立てとして「朝の読書」の果たす役割は極めて大きいと考えられる。これまでに順調に実践校を伸ばし続けてきた「朝の読書」であるが,改めてその教育的意義と真価が否応なく問われているといえよう。 br> |
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参考文献 |
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