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登録/更新年月日:2010(平成22)年1月4日
 
 

派遣社会教育主事制度の歴史 (はけんしゃかいきょういくしゅじせいどのれきし)

キーワード : 社会教育主事、派遣社会教育主事、専門的職員、社会教育主事未設置市町村、派遣社会教育主事給与費補助
坂本登(さかもとのぼる)
2.派遣社会教育主事の任用と身分等
  
 
 
 
   派遣社会教育主事制度は,市町村が社会教育推進の中核としての専門的職員を確保できるよう,すなわち,市町村における社会教育を充実・振興するための適切な人材を,都道府県が市町村の求めに応じて派遣する方法である。これによって派遣を受けた市町村には,市町村任用の社会教育主事と都道府県任用の社会教育主事が並存することとなり,両者の相違を明確にする必要から,都道府県から町村に派遣する社会教育主事は派遣社会教育主事と呼称された。
 この制度は,昭和49(1974)年度から国庫補助による方法で開始された。派遣社会教育主事の給与は都道府県の社会教育主事と同様に都道府県が負担することとが原則であるが,このうち,派遣社会教育主事の給与費は,国が予算の範囲内で,二分の一以内の定額補助をする方式(「派遣社会教育主事給与費補助制度」)が採られた。なお,昭和50(1975)年度からは,地域におけるスポーツ・社会体育の振興を目的に,スポーツ担当の社会教育主事(スポーツ主事)を市町村に派遣する制度がスタートしたが,この給与費にも国庫補助が導入された。
 本来,市町村の社会教育主事は市町村自らが任用することが原則であり,市町村がこの制度に依存的であることは好ましくない。こうした観点からいえば,派遣社会教育主事の制度は,市町村の社会教育主事の任用・設置の気運を醸成するための緊急避難的措置であったということになろう。それゆえ,当制度が開始された当時,派遣社会主事をもって市町村が任用すべき社会教育主事の肩代わりとすることが戒められた。したがって都道府県は,社会教育主事の派遣を,すでに市町村独自の社会教育主事を任用している市町村(すなわち,派遣を受けることによって社会教育主事が複数以上となる市町村)に派遣することを原則とした。 しかし,当時,社会教育主事の未設置市町村の解消が喫禁の課題となっていたため,未設置の市町村であっても,派遣期間中に市町村独自の社会教育主事を設置することが可能ないし,その設置計画を有している市町村に派遣するというケースも多く見られた。
 派遣社会教育主事は,資格や職務内容が一般の社会教育主事と同じであるが,その身分が都道府県と市町村の身分を併せもつところに大きな特徴がある。給与は都道府県費によって全額負担されたが,この制度を推進するため,国は,前述したように,都道府県に対し必要な財政的援助の措置(国庫補助)を講じた。
 この制度の推進に際し,都道府県教育委員会は,社会教育主事の派遣を要請した管下の市町村教育委員会との間で協定書を交わした。協定の内容は,派遣の条件,派遣社会教育主事の身分,職務,服務,分限,懲戒,給与,派遣期間などであった。たとえば,派遣期間については3年(3年がもっとも多かった。),服務については派遣先の市町村教育委員会が監督し,分限及び懲戒については都道府県教育委員会が行うという具合に,両者間の合意をもとに具体的に定められていた。
 なお派遣社会教育主事の任用は,都道府県の社会教育主事と同様に,都道府県教育委員会の教育長が選考し,都道府県教育委員会が任命する。また,派遣社会教育主事のなかには,3年を経過した後に,他の市町村に再度派遣されるなど,いくつかの市町村に順次派遣され経験と専門性を高めていく者も多く見られた。
 
 
 
  参考文献
・今村武俊編著『新訂社会教育行政入門』第一法規
 
 
 
 
  



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