登録/更新年月日:2012(平成24)年3月5日 |
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生涯学習活動を人的交流の効果の面から捉え直すことは、その活動を通じた心身の変化や成長を個々に理解することに繋がり意義があることと考える。 近年、通信技術の発展により増加しているeラーニングにおいても、オフ会やスクーリング等で学習に参加している者同士が集い、互いの学習を共有したりといった直接的な人的交流を行う機会が盛り込まれるケースが多い。その背景には、他者との直接的な人との関わりが充実することで、学習効果を上げることへの期待が大きいものと考える。しかし、このような人的交流に伴う効果は、個々の内面に留めたままであったり、他者へ伝えたりする機会が少なく、企画側がそのことを学習活動の成果として捉え、それらを評価する手法は確立していない。 これまで、生涯学習の成果に関して、主に参加者数やリピーター率、活動期間や設備・立地の充実度等、ストラクチャにおける評価やプロセスにおける評価を用いて検討された報告が多い。しかし、今後は、参加者の内面的な変容にも焦点を当て検証することで、その活動での充実度や達成度等のアウトカムでの評価を行うことが重要になるのではないであろうか。何故なら、企画側として関わる者が、参加者の心身の変容に気付き理解したり、参加者自身が自己の存在や心身の状態に気付く機会を支えたり、さらには、活動時における参加者間の相互作用の関係を把握する役割をもつように努めることにより、最適な活動人数や空間配置、および支援方法や期間等の参加者のニーズを把握することが可能となり、さらなる企画の充実に繋がることになるからである。 そもそも、他者を知覚するということは、自分と同じ空間に実在するヒトの情報を表情、動作、距離等の視覚・聴覚・嗅覚等の様々な刺激を受け取り、その情報処理を行うため、一時応答的な感覚レベルとしても心身の活性化に繋がることである。このような一時応答的な感覚を積み重ねて他者の存在を認識することで、自己の存在や心身の状態に気付くきっかけを作る。さらに、人的交流というレベルでは、他者との相互作用による様々な経験と感情を合わせた複合的な感覚の体験へと至る。このようにして積み重ねた対人上の経験は、他者の存在を受容するか否か等、人との柔軟な距離を保つ能力を養っていく上で重要である。 生涯学習の立場から、このような心身の変容を評価する新たな尺度を開発するためには、精神生理学的変化としての一時的な応答を一つの側面から実証するだけでは不十分であり、まず人的交流が心身に与える要素を幾つか抽出し、それらの要素に関して活動内容と併せて継時的に知見を積み重ね明確化していくことが必要である。生涯学習を企画する側が、参加者同士の交流の在り方を心身の変容に影響を与える重要なファクターとして捉え評価することが可能となれば、生涯学習が参加者の内面的ニーズに応えた交流の場として展開し、地域社会においてより身近なメンタルヘルスケアとしての機能も備えた活動となるのではないかと考える。 br> |
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参考文献 |
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