生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2007(平成19)年9月3日
 
 

イギリスのコネクションズ (いぎりすのこねくしょんず)

connexions service in England
キーワード : 青少年の支援活動、パーソナル・アドバイザー、ユース・ワーク
坂口順治(さかぐちじゅんじ)
1.青少年の支援活動
   
 
 
 
   コネクションズ・サービスは,1998年プレヤー政権が青少年の非行や不況による失業が増えている社会状況を克服し,健全育成を推進する政策の一環として創設した機構である。「Welfare to Work」というスローガンを掲げて,ニュー・ディール政策を打ち出し,次代をになう青少年の福祉的教育的支援活動である。
 2001年には教育雇用省には「コネクションズ」のサービス部門を設置して支援活動を開始した。青少年の育成には,専門領域を超えた指導者のネット・ワークを構築し,若いうちから個別的でしかも総合的に支援する組織をもつことが望まれ,青少年が成人の社会生活へスムーズに移行できるように導くワーカーの効果的なはたらきを期待された。
 支援の対象者は13歳から19歳までの全ての青少年で,個人が抱えている問題(例えば,麻薬・アルコール,性と病気,こころの悩み,心理的精神的問題,男女問題,健康,学業,就職,家族の人間関係など)に対して,問題解決に適切なパーソナル・アドバイザーが個別訪問して,情報の提供やガイダンスや相談に応じる支援を行うのである。
 コネクションズの特徴は,
1)地域密着型の総合的組織である。学校,職場,青少年犯罪部署,地域住民,薬物対策チーム,職業紹介所,地域社会の民間団体,ボランティア活動団体,青少年自身が行政と一体になって活動を推進していくことである。従来の青少年育成には,特定のユース専門家が担当していたが,問題の多様性に対応しながら,相互連携のネット・ワークを活用し,青少年の居場所で支援活動をしていく。
2)パーソナル・アドバイザー(Personal Adviser. PA. 個人的助言指導者)制度を採用したことである。パーソナル・アドハイザーのはたらきには2つの利点がある。ひとつはアドバイザーが訪問をして相談にのることである。いわば出張して個別に支援する。出前のサービスは従来のユース・ワークと比較してみると,センターに集ってきた青少年に対して一括サービスをしていたが,アドバイザーのはたらきは具体的で訪問して細やかな相談をするという人間性の尊重である。もう一つは一人の青少年を解決の目途がつくまで見守りアドバイスをしていく。カウンセリングは一般的にその場その時のヨコの一時的関係で心理的問題を解消することが多いが,アドバイザーは一人の青少年の生活全般にかかわって相談をするので,成長過程というタテ型の時間的関係をもつ。いわば生活のメンターとして人生の伴走者になる点である。
 パーソナル・アトバイザーは,国から専門職の資格が与えられる。ソーシャル・ワーカーや学校教師,ビジネス・コンサルタントやファミリー・ワーカーなどの経験を積んだ人が多い。青少年と個別に深くかかわると同時に,コネクションズの組織と連携して支援活動を多様な方法で効果的に推進していく努力をしている。
 コネクションズの窓口は現在のところ全国に約300ヶ所あり,アドバイザーは約1万人がはたらいている。
 コネクションズの設置と活動の効果については,2003年の報告によるとニート(無業者)が約 8 %減少した,従来のユース・ワークよりも貢献しているとの評価がある。
 わが国では平成17(2005)年からコネクションズの活動を参考に,各支援組織のネット・ワークをひろげたサポート・ステーションが設置されて活動をはじめた。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
   



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