登録/更新年月日:2013(平成25)年10月26日 |
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教育基本法の論点は多岐にわたるが、本稿ではそのうちのいくつかについて検討する。 【教育をめぐる諸課題の解決における教育基本法改正の有効性】 実際の教育現場で生起する様々な課題は、教育基本法に欠陥があるから生じているわけではなく、基本法の改正はそれらの差し迫った課題の解決を図る上で効果はないのではないか。国会審議においても同様の指摘があった。 確かに、多くの課題は教育基本法改正前からあり、改正後も後を絶たない。しかし、そのことは、教育に基本理念が不要だということを意味するわけでは決してない。改正内容の是非は措くとしても、個々の具体的な法令の制定改廃、解釈運用、予算の編成・執行から日常的な教育活動の実施まで、基本法の示す理念に即して行われることが求められているのである。したがって、むしろ、我々の日々の実践が教育基本法の理念に沿ったものとなっているのかどうかが問われているというべきであろう。 【旧法の全部改正という形式がとられた理由】 教育基本法の改正は、旧法の理念を否定したものではなく、旧法の普遍的な理念は引き継ぎつつ、かつ時代の変遷を踏まえて、これからの教育の基本理念の全体を明示することを趣旨としたものである。一般的には旧法の一部に限って部分的に見直しを行う場合は一部改正という形を、旧法との継続性を維持しない場合には廃止新設という形式をとる。しかし、今回の改正がそのいずれでもなく、全部改正という形をとっているのは、今回の改正が、教育の根本に立ち返って幅広く検討を行い、引き継ぐべきものは引き継ぎ、付け加えるべきものは付け加え、あるいは表現を改めて規定し、国民の共通理解のもとで社会全体で教育改革に取り組むために、その基本理念の全体を明示することを趣旨とするものであることを示しているということができる。 【第3条(生涯学習の理念)の新設の意義】 旧法においても、第2条(教育の方針)の規定が置かれており、学習の機会に関する「いつでも、どこでも、誰でも」という理念と、個人の人格の完成のみならず、学習の成果を社会の発展のために生かしていくという学習の目的に関する理念とが盛り込まれていたと考えることができるが、同法制定(1947年)当時は、生涯学習という理念はまだ確立されていなかった。 本条によって、生涯学習の理念が、教育の機会均等とともに教育の基本理念として位置づけられ、その目指す社会が、学習することができる社会であるだけでなく、その成果を生かすことができる社会として明確に示された意義は極めて重要である。 【教育振興基本計画の意義】 教育振興基本計画の策定が教育基本法に位置付けられたことは、今回の改正の最も重要な成果のひとつである。平成20−24(2008−2012)年度を計画期間とする第1期計画に引き続き、平成25年6月には第2期(平成25−29年度)計画が閣議決定された。 教育投資の数値目標や特定の個別施策に関する記述ぶりばかりが注目されがちであるが、基本計画の最も重要な役割は、計画期間を通じて目指すべき社会とその実現に向けた教育についての基本的考え方、そしてそれに沿った具体的施策の見取り図を国民が共有することである。その意味で、第2期の基本計画が、「自立・協働・創造の生涯学習社会の実現を目指す」という考え方に立っているという点がもっと強調されるべきであろう。 br> |
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参考文献 ・教育基本法研究会『逐条解説改正教育基本法』第一法規、平成19(2007)年 ・教育基本法:http://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/about/index.htm ・浅井経子編著『生涯学習概論(増補改訂版)』理想社、平成25(2013)年 ・教育振興基本計画:http://www.mext.go.jp/a_menu/keikaku/ |
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