生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2008(平成20)年1月1日
 
 

初等・中等教育における出産・育児教育 (しょとう・ちゅうとうきょういくにおけるしゅっさん・いくじきょういく)

キーワード : 少子化、出産・育児教育、男女共修
青柳育子(あおやぎいくこ)
1.初等・中等教育における出産・育児教育
   
 
 
 
  【説明・動向】
 わが国の65歳以上の高齢者は平成18(2006)年には2660万人を越し、総人口の20.8%となり、5人に一人は高齢者となった。また、15歳未満の年少人口は1743万人で総人口の13.6%であり、昭和50(1975)年から一貫して低下を続けている。少子化の原因は親世代の縮小と結婚の晩婚化、未婚化、それに伴う子どもの生み方の変化等といわれるが、初等・中等教育での学習に課題はないだろうか。
 現在の初等・中等教育における出産・育児教育は、主に「家庭科」と「保健体育」で扱われている。歴史的には、わが国の家事や裁縫などの家庭科教育は明治以降女子のための教育であった。しかし、昭和62(1987)年の教育課程審査会答申で「全国の中学・高校で家庭科の男女共修の実現」が述べられ、平成元(1989)年に学習指導要領が公示され、「家庭科」は男女共修で開始する運びとなった。男女が協力して家庭や地域の生活を創造する能力や実践的な態度を育てるという教育方針が打ち出されたのである。
 生活や健康、結婚や育児については、男女とも発達に応じて学び、正しい知識や生活技術を習得することが大切である。現在の小学校・中学校・高等学校の学習指導要領をみると、出産に関係する教育部分は、小学校では、3・4年の「保健」で体つきが変わったり、初経や精通について学び、中学校では、「保健体育」の保健分野で身体の発達や内分泌の働きによって生殖に関わる機能が成熟し、妊娠や出産が可能になるということを学ぶ。高等学校においては、中学校と同様に「保健体育」の保健分野で、生涯の各段階における健康生活について学び、そこには結婚生活も含まれている。
 育児に関しては、「家庭科」で取り扱われ、中学校では「技術・家庭」の家庭分野で、家族と家庭生活の中で幼児の心身の発達を考え、幼児とのふれあいや関わりについて学ぶ。高等学校の「家庭」では、乳幼児の発達と保育・福祉において、子どもを産み育てることの意義を考えさせ、親の果たす役割と保育、子どもの福祉について学ぶ。中学・高校とも、幼稚園や保育園に行って乳幼児との触れ合いや交流の機会を持つことが勧められている。
【課題】
 平成18(2006)年に話題となった教育問題に、高等学校の必修科目未履修問題がある。必修科目である世界史や家庭科、保健など大学入試にあまり関係のない科目を600を越す高等学校で未履修であることが発覚し、改善指導により卒業間際に集中授業が行われた。中学・高校の受験生の一番の関心事は希望校に合格することと考えるが、発達・成長過程にある生徒の学習の中で、生活や健康に関する学習は重要であり、学ぶ機会を省いてはならない。
 現在は、兄弟数が少なく、乳幼児と触れる機会の少ない環境で育つ生徒が多い。家庭や地域と連携し、総合学習の時間なども活用して、男女共に発達段階に応じ、学校教育で結婚や出産、子育てなどの学習もできる工夫が欲しい。
 
 
 
  参考文献
・文部科学省『小学校学習指導要領』国立印刷局、平成16年
・文部科学省『中学校学習指導要領』国立印刷局、平成16年
・文部科学省『高等学校学習指導要領』国立印刷局、平成16年
・家庭科の男女共修をすすめる会編『家庭科、男も女も』ドメス出版、 平成9年
・青柳育子「初等・中等教育における出産・育児教育と学習者の意識に 関する研究」日本生涯教育学会論集28,平成19年
・総務省統計局http://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/20062.pdf  平成19年12月29日参照
 
 
 
 
   



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