登録/更新年月日:2007(平成19)年12月20日 |
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【キャンパス市民ボランティア事業の概要】 大学のキャンパスには、具体的にどのような活動の舞台が設定されうるのであろうか。九州共立大学・九州女子大学・九州女子短期大学で平成9年度より実施されている「キャンパス市民ボランティア事業」の例でみてみる。「キャンパスをステージにあなたの能力を開花させてみませんか」と大学周辺地域に新聞広告チラシを配布し、応募者に事前説明会を実施した上で登録の意志を確認、手続きを進めた。登録は年度ごとに更新している。初年度以降は特に募集広報は行っていないが、口コミ等で新規登録の問い合わせが必ずある。活動の領域は、現実のキャンパスの物理的条件や受け入れる部署の組織的条件に制約されるため、まず可能な幾つかの領域で開始した。留学生を支援する市民ボランティア・チューターとホームステイ・ボランティア、図書館ボランティア、附属幼稚園や託児所の子どもたちに絵本の読みきかせをしたり遊びのサポートをする幼児教育ボランティア、茶道ボランティア、書道ボランティア、構内の草木や花の手入れを中心に美化に努める環境ボランティア、生涯学習研究センターの講座や行事のサポートをしながら学習する生涯学習ボランティアなどである。 公募対象は、1)大学近隣地域の健康な男女で、2)活動内容および条件に合意する市民である。年齢は問うていない。実施する過程で組織改革等によって領域が変更されたり、年によって登録数に増減があるが、登録者数は毎年のべ150人程度(複数の領域に重複して登録しているボランティアがいるのでのべ人数)である。 【大学の条件整備】 当初の公募や登録手続きの窓口は生涯学習研究センターであったが、事業が軌道に乗ってからは、各受け入れ部署が活動に関する実務を担当している。そのため、学内における共通理解を図り、連絡調整を行うための打ち合わせ会議を必要に応じて開く仕組みを作った。 大学が、市民ボランティア受け入れのために行った条件整備は、1)研修等による学内教職員の意識改革、2)組織体制づくりや活動プログラムの中身の検討、保険への加入、予算化と事務手続き等のシステムづくり、3)休憩室やロッカー、駐車場の確保等の物的条件整備である。 【成果と課題】 参加者を対象に実施した意識調査の結果から、以下のような成果がみられる。 1)活動を通して親しい仲間や友だちができたという人が多い。当初の不安や孤立が解消されて参加者相互の交流が深まり、人的ネットワークが拡大した。 2)日常の活動範囲を超えた国際交流などを通して自分を再発見したと評価している人が多い。新たな活動で自分を試してみるという挑戦や試行を奨励・支援した。 3)次なる学習への意欲が喚起され、より具体的な学習要求や目的意識が生まれてきた。同時に今後の企画について要望・提案をするなど、主体的・自主的な取り組みが出てきた。 4)「自分も人の役に立つことが分かって嬉しい」というように、参加者がやりがいや社会的貢献の実感を自己認識できる機会となっている。 特に在学生の学習支援への貢献は大きい。市民の経験が生かされてプログラムの厚みが増し、キャンパスが活性化してきたと言える。 大学は内容を再検討しながら条件整備を進め、市民も協議・企画に参画できる場を設定することが重要な課題である。質の維持・向上を図る定期的な研修の機会は、市民と教職員双方に必要であろう。 br> |
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参考文献 ・大島まな・永渕美法「大学における市民ボランティアの意識と特性に関する研究」日本生涯教育学会論集20、1999年 ・大島まな「成人学習者としての市民ボランティアに関する考察−学習者としての特性とチューター活動の意義−」九州共立大学・九州女子大学・九州女子短期大学生涯学習研究センター紀要、第5号、2000年 |
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