生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2007(平成19)年4月2日
 
 

博物館と生涯学習 (はくぶつかんとしょうがいがくしゅう)

museum and lifelong learning
キーワード : 博物館、学習支援
石川昇(いしかわのぼる)
2.博物館における学習支援活動の特色と課題
  
 
 
 
  1)博物館における学習支援活動の特色
ア)モノによる学習
 展示はいつでも誰でも見学することができる。幼児から高齢者まで同じものを見ながら、さまざまなレベル、テーマ、内容、方法の学習ができる。それもさまざまな支援を得ることができる。実物やレプリカなどのモノに触れたり体験することは、知識だけでなく五感に働きかけ、感性を伴う知の創造に貢献する。そのことは幼児や青少年だけでなく、大人にとっても有意義にして魅力的だ。触れることができる展示は視覚障害者にとっては貴重な体験学習の機会だ。外国人にとっても本やウェブサイトではなく、展示での学習は日本の文化への理解を助ける。高齢者にとって青春時代の懐かしいモノは青春時代を回想させ、癒されるものでもある。また、学校や子ども会など団体の見学は必ずしも博物館のテーマに興味のない子もいるが、モノの持つ迫力、魅力で引き込まれたり、ボランティアとのふれあいが学習意欲を起こす場合もある。
イ)地域密着型学習
 その博物館が人文科学系であれ、自然科学系であれ、対象とするフィールドは多くの場合、地域に関係するものである。地域の課題を扱ったり、地域に対する愛着を醸成したり、交流を促進したりすることもできる。
ウ)現代的課題に対する学習
 博物館は展示をはじめとする教育・啓蒙活動において、情報化、環境問題、国際理解、高齢化社会などの現代的課題を扱うことができる。また、コンピュータによる情報獲得を展示室の情報端末やインターネットで促進する。
エ)参加型、参画型、交流型、発展型学習
 博物館の学習はギャラリートークや展示解説ツアー、科学ショー、観察会や見学会などにおいて、参加者とコミュニケーションを取りながら進めるものが多い。それは講師と参加者の双方向性があるとともに、参加者同士の交流も含んでいる。とりわけ、友の会会員や同好会・研究会会員で行う場合はその傾向が顕著である。そして、交流しながら自分たちで学習を企画したり、さらには調査したものや創作したものを発表したり、と発展し、新たな価値が生まれる場合もある。
オ)さまざまな機関、団体による利用
 博物館は誰でも利用することができる。家庭が家族で利用するほか、保育園、幼稚園、学校、大学、専門学校、さらには少年鑑別所、高齢者施設、福祉作業所などが本来の機能を補完、発展させるために利用する。別言すれば、博物館はさまざまな教育を支援する。
2)博物館における学習支援活動の課題
ア)魅力度の向上
 博物館がいかによいと思う企画を実施しても参加者がいなければ評価は得られない。個性、希少性を磨くとともに、多くの人々に魅力を感じさせる企画を立てることが重要だ。ときにはアミューズメント化も必要であるが、従来と同じテーマの素材でも、視点をずらして切り口や実施方法を変えたり、ネーミングを工夫することで魅力がアップする。そして、広報が重要で、テーマによりツールやメディアを変えたり、関連する団体へ直接チラシを渡したりする工夫が必要だ。
イ)体験型、参画型、交流型事業の開発
 教える、教わるというだけでなく、受講者が積極的に参加できる方法、実験、観察、工作、制作などの体験型、受講者同士が交流できる方法などを開発することが重要だ。
ウ)連携
 より魅力的な事業をより多く企画し、より有効に広報をするためには、企業、団体等と連携、協力することが大切だ。
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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