生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年5月31日
 
 

いじめ問題と国の対策 (いじめもんだいとくにのたいさく)

キーワード : 自殺、友だち関係、不登校
斎藤哲瑯(さいとうてつろう)
1.いじめ問題と国の対策
   
 
 
 
  【定義】
 いじめとは、(1)自分よりも弱いものに対して一方的に、(2)身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、(3)相手が深刻な苦痛を感じている状態にあり、いじめが起こった場所は学校の内外を問わない、とされている。
【説明】
 学校におけるいじめが社会問題化したのは、1980年代になってからと言えよう。特に、教師も加わっていた「葬式ごっこ」が原因で自殺した東京都中野区立中野富士見中学校2年の鹿川裕史君(昭和61(1986)年)の事件。また、山形県新庄市の体育館内の運動用のマットに逆さまに突っ込まれた形で死んだ明倫中学校1年の児玉有平君の事件。川に沈められたり、100万円以上の現金をとられていたという遺書を残して自殺した愛知県西尾市立東部中学2年の大河内清輝君の事件(昭和61(1986)年)など、人の命を奪うような陰湿ないじめが学校現場において発生し、社会に大きな衝撃を与えた。
 公立小中高等学校におけるいじめの発生件数は、昭和62(1987)年度は52,610件、平成元(1989)年度29,088件、平成5(1993)年度21,598件と年々減少してきている。ただ、平成6(1994)年度以降は、特殊教育諸学校が含められたことや調査方法が改められたこととから単純比較はできないが、平成16(2004)年度は21,671件である。
【国の対策】
 このような事態を受けて当時の文部省内に置かれた「児童生徒の問題行動に関する検討会議」は、昭和60(1985)年に「いじめ問題の解決のための緊急アピール」を提言し、文部省はすぐに「児童生徒のいじめ問題に関する指導の充実について」を関係機関等に通知。そして平成6(1994)年7月には、いじめや校内暴力等の実態や適切な対応のあり方等に関する調査研究を行うための専門家会議「児童生徒の問題行動等に関する調査研究協力者会議」を設置し、いじめ問題についての総合的な調査研究を行ってきている。その間、いじめを受けて自殺した西尾市の大河内君の事件を受け「いじめ対策緊急会議」として平成6(1994)年12月に「緊急アピール」を発表。そして平成7(1995)年3月には、「いじめの問題の解決のために当面取るべき方策についてを文部省に提出。さらに、同調査協力者会議は平成8(1996)年7月には、「いじめの問題に関する総合的な取組について〜今こそ、子どもたちのために我々一人一人が行動するとき〜」と題する報告を取りまとめ文部省に提出。これを受けて文部省は、初等中等教育局長名で「いじめの問題について当面緊急に対応すべき点について」を、都道府県教育委員会、都道府県知事、国立大学長あてに通知している。 
 なお、「児童生徒の問題行動等に関する調査研究協力者会議」では平成7(1995)年以降、数回の現地調査や児童生徒、保護者、教師役2万人を対象とした「児童生徒のいじめ等に関するアンケート調査」を行い、平成8(1996)年5月にその結果を発表している。
 
 
 
  参考文献
・文部科学省『生徒指導上の諸問題の現状と文部科学省の施策について』
・文部科学省『児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』
・http//www.mext.go.jp/
 
 
 
 
   



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