生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2025年1月10日
 
 

高校生による阪神・淡路大震災の聞き取り調査実施報告(こうこうせいによるはんしん・あわじだいしんさいのききとりちょうさじっしほうこく)

キーワード : 防災教育 、阪神・淡路大震災 、聞き取り調査 、通信制高校
八田 友和(はった ともかず)
 
 
 
  1.はじめに
 本稿の目的は、2023年度にクラーク記念国際高等学校芦屋キャンパス(以下、「クラーク芦屋校」と表記する)および姫路キャンパス(以下「クラーク姫路校」と表記する)でおこなった阪神・淡路大震災の聞き取り調査および報告書の作成について紹介することにある。
 
 
 
  2.実践の概要(その1)
 ここでは、クラーク芦屋校でおこなった聞き取り調査の概要について整理する。
1)期  間:2023年7月(聞き取り調査実施)
2)場  所:クラーク芦屋校
3)担  当:菊地健也、八田友和
4)主  体:クラーク芦屋校 防災部(部活動)
5)対  象:クラーク芦屋校関係者および地域防災に取り組んでおられる方など
 クラーク芦屋校の実践は、防災部(部活動)が中心になりおこなった。具体的には、阪神・淡路大震災発災時に「教員」「救急隊員」「新聞記者」「主婦」「会社員」だった方に当時の状況について聞き取りをおこなった。また、聞き取った内容を整理し、レポートを作成した。そのうえで、聞き取り調査に協力していただいた方や関係者を学校に招き、校内発表会を開催した。発表会では、聞き取った内容はもちろん、生徒が感じたこと、今後防災部として取り組んでいくことについて発表がおこなわれた。
 
 
 
  3.実践の概要(その2)
 次に、クラーク芦屋校・姫路校でおこなった聞き取り調査の概要について整理する。
1)期  間:2023年7月〜8月(聞き取り調査実施)
2)場  所:クラーク芦屋校・クラーク姫路校
3)担  当:八田友和、菊地健也
4)主  体:専修学校クラーク高等学院芦屋校(地理・公民受講者)
        クラーク芦屋校(キャリア探究受講者)
        クラーク姫路校(日本史B受講者)
5)対  象:保護者・親戚・教職員など
 クラーク芦屋校・姫路校の両校において、保護者や教職員を対象に阪神・淡路大震災の聞き取り調査をおこなった。事前に授業でインタビューの練習をおこなったうえで、授業の課題として聞き取り調査を実施している。なお、調査項目は必要最小限のみ提示し、自然な会話の流れから話を発展させるように指示を出した。「当時のことを思い出したくない」「話したくない」と話される方もおられるため、聞き取り調査が困難な場合は、実施を見送っている。
 
 
 
  4.報告書の作成
 先述した「実践(その1)」「実践(その2)」をもとに、『2023年度 阪神・淡路大震災聞き取り調査報告書』(ISSN 2759-0658)を刊行した。刊行にあたっては、生徒が原稿(記事)の執筆を行い、教職員がISSNコードの取得、報告書の編集、体裁の確認などを行った。完成した報告書は、国立国会図書館に納本したうえで、参加した生徒および全教職員に配布、調査協力者や学校関係者、各地の専門家には報告書を郵送した。なお、クラーク芦屋校防災部では、防災関係のイベントや行事においても報告書を配布している。
 
 
 
  5.本実践の成果と課題
 本実践の成果としては、1)報告書そのものが災害史や地域の歴史を継承するための資料になった点、2)報告書を専門家や教育委員会、関係者に配布し様々なコメントをいただくことで、自分たちの活動を内省し、より深い学びに繋げることができた点、3)学校を挙げた活動に発展するきっかけづくりとなった点、などが挙げられる。
 一方で課題としては、1)聞き取り調査を継続しておこなっていく点、2)特定の授業だけでなく、全生徒が参画する活動を企画する点、3)地元の教育委員会などと連携した取り組みを推進する点、4)担当者が代わっても継続できるように、「属人的な連携」にとどまらない「組織的な連携」に発展させていくこと、などが挙げられる。
 
 
 
  6.さいごに
 本稿では、クラーク芦屋校・姫路校で行った、阪神・淡路大震災の聞き取り調査および報告書の作成について、概要を整理してきた。
 今回の取り組みを踏まえて、「自分たち一人ひとりに何ができるのか」、「高校生に何ができて、何をしなければならないのか」を具体的に検討していく必要を感じた。今回の取り組みを一過性のものにせず、継続・深化させていくことが今後の課題であり、展望といえる。
 
 
 
  (参考文献)
【謝辞】
 本実践を行うにあたって、聞き取り調査への協力者をはじめ、多くの方にお世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。過去におこなった実践については、拙稿「生涯学習への発展を企図した高校生による聞き取り調査の実践−広域通信制高等学校における事例紹介−」(『関西教育学会年報』第47号、2023年)および拙稿「聞き取り調査を組み込んだ防災教育の実践事例紹介−阪神・淡路大震災の記憶を後世に伝える取り組み−」(『子どもたちと考える教科教育』第5巻、2022年)で紹介しています。あわせてご参照ください。
【引用参考文献】
・日本社会科教育学会(編)『社会科教育と災害・防災学習−東日本大震災に社会科はどう向き合うか―』明石書店、2018年
・八田友和「生涯学習への発展を企図した高校生による聞き取り調査の実践−広域通信制高等学校における事例紹介」『関西教育学会年報』第47巻、2023年
・八田友和「聞き取り調査を組み込んだ防災教育の実践事例紹介−阪神・淡路大震災の記憶を後世に伝える取り組み−」『子どもたちと考える教科教育』第5巻、2022年 ほか
 
 
 
 
   



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