登録/更新年月日:2025年1月10日
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1.はじめに 本稿では、クラーク記念国際高等学校姫路キャンパス(以下、「クラーク姫路校」と表記する)でおこなった、地域が抱える課題の発見・解決を目指した授業実践について紹介する。 |
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2.実践の概要 ここでは、本実践の概要について整理を行う。 1)名 称:姫路を盛り上げる企画を作ろう! 2)対 象:クラーク姫路校3年生 3)担 当:筆者 4)期 間:2022年4月〜2023年1月まで 5)授業実践の流れ 授業冒頭に「姫路を盛り上げる企画作り」を1年間かけておこなうことを生徒たちに伝えた。そのうえで、「姫路を知ろう!」「姫路にはどんな人がいるの?」「企画づくり」「発表」の順に学習を進めた。なお本実践の随所で「新聞を読む方法」「インターネットから適切な情報を選ぶ方法」など、情報の収集・分析をテーマにした実践をおこなっているが、本稿では取り上げていない。 | ||||||||||||
3.実践の流れ 1)姫路を知ろう! クラーク姫路校に在籍する生徒のなかには、近隣市町から通学している生徒も一定数いるため、まずは「姫路を知る」ところから授業をはじめた。具体的には、インターネットや図書、映像資料、フィールドワークなどを通して、姫路の概要や歴史、産業、文化について学んだ。その際、姫路の抱える課題や、問題点についても考える時間をとった。 2)姫路にはどんな人がいるの? 次に姫路に居住する(もしくは訪れる)多様な人々の存在に目を向ける時間を設けた。姫路には、姫路城や書写山圓教寺などを目的に観光に訪れる人はもちろん、近隣地域から買い物や娯楽をもとめて来訪する人も多い。加えて、クラーク姫路校の生徒のように、通学で姫路を訪れている人もいる。そのため、姫路に訪れる人々の多様な属性について考える授業を展開した。 加えて、「目が見えない人」という意見が生徒からあがったことを受け、視覚障害者や点字について学ぶ機会も設けた。学校周辺を歩き点字を見つけてもらうなかで、「街中に点字が少ないこと」、「点字以外に情報を知らせるツールが不足していること」などの問題点を指摘する生徒が確認できた。視覚障害や点字に理解を深めるために、携帯用点字器を用いて、点字をうち、アイマスク体験をおこなった。姫路を訪れる視覚障害者を事例に「何に困っているのか」、「どのような手助けを必要としているのか」について深く考えるきっかけとなった。 3)企画作り 姫路の概要や往来する人々の存在を学習したうえで、姫路が抱える問題や課題の解決を目指した企画作りに取り組んでもらった。まず、ゴールをイメージしやすくするために、筆者が「播磨西国三十三か所霊場」を事例に問題点と解決策をスライドにまとめて発表した。そのうえで、スライドの作成方法について説明した。なお先述したように、姫路市出身でない生徒も多く在籍しているため、出身市町を盛り上げる企画作りも許可している。スライドが完成したグループから発表練習に移行した。 4)発表 授業の総まとめとして、自分たちの考えた企画を教職員へ発表してもらった。生徒からは、「廃校になった校舎を宿泊施設に生まれ変わらせる」「御立公園を盛り上げる」「しろまるcafeを作る」など、様々な提案がなされた。いずれの発表も姫路が抱える問題や課題、解決策が明確に提示されており、参観した教員からも好評であった。 |
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4.本実践の成果と課題 本実践の成果としては、「高校生でも地域の活性化や課題解決に参加・参画できること」を体験的・納得的に知ってもらった点が挙げられる。年度の冒頭に「姫路を盛り上げる企画作り」をテーマとして設定した際は、「それは市役所(公務員)が考えること」「自分たちには関係ない」という反応が返ってきた。しかし、実践を進めていくなかで、「自分達にもできることがある」「これだったらできそう」と考え方が変容していく姿を確認した。「自分たちには関係ない」から「自分達にもできることがある」という発想に変わったことが本実践の最大の成果と考えている。一方で課題としては、1)振り返りの時間や発表後の交流時間等を十分に確保できなかった点、2)授業時数の関係から、スライドで発表したことを行動に移すところまで実現しなかった点、などが挙げられる。 |
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5.さいごに 本稿では、クラーク姫路校でおこなった、地域が抱える課題の発見・解決を目指した授業実践について紹介してきた。本実践で生徒が取り上げた課題・問題点は、いずれも自分たちの日常生活のなかで感じた疑問が軸になっている。例えば、「母校が廃校になった(なりそう)だから、廃校後の活用を考えたい」といった具合である。自分自身が感じた疑問や違和感だからこそ、より深い学びにつながったと感じている。これからも、生徒の「知りたい」や「なぜ」を大切にした実践を心がけたい。 |
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(参考文献) 【謝辞】 本実践を行うにあたって、クラーク姫路校の先生方に大変お世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。なお本稿は、筆者が関西教科教育研究会でおこなった紙上研究発表「地域課題の克服を目指した通信制高校における授業実践−「姫路を盛り上げる企画づくり」を事例に−」をもとに執筆しています。そちらも合わせて参照ください。 【引用参考文献】 ・中元孝迪『姫路BOOK』神戸新聞総合出版センター、2013年 ほか |
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