登録/更新年月日:2020年6月27日
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1.ESD(持続可能な開発のための教育)の定義とその動向 2002年には、持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネス・サミット)が開催され、日本が提唱した「ESD(持続可能の開発のための教育)」が第57回国連総会で採択された。 2005年〜2014年には、「国連持続可能な10年」が施行され、ユネスコが主導機関となった。2014年には名古屋市と岡山市において「ESDに関する世界会議」が開催された。「国連ESDの10年」の後継プログラムとして募集された「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」の優先課題は「ユース、教育者、地域コミュニティ、政策的支援、機関包括型アプローチ」の5つであった。つづく2015年〜2019年の5年間をグローバル・アクション・プログラム(GAP)の実施期間と決めた。 さらに、2019年以降も継続しようとポスト・グローバル・アクション・プログラム(Post-GAP)の枠組を日本がユネスコに提案した。その概要は、@国際的枠組をつくり、Aその中にSDGsをいれ、B加盟国政府を巻き込み持続的に継続することである。これは40カ国の政府の賛同を得て、第74回国連総会で採択された。 ESDが目指す目標は環境、経済、社会の総合的発展で、内容は環境、国際理解、世界遺産や地域の文化財、エネルギー、防災、生物多様性、気候変動など幅広い。これまでの教育分野に「持続可能な社会の構築」という共通の目的を与え、方向づけをすることである。 わが国において、「ESD:持続可能な開発のための教育」の文言が、ようやく学習指導要領の中に「持続可能な社会の担い手の育成」として明記されるようになった。文部科学省は「地球規模の諸課題を自らに関わる問題として主体的に捉え、その解決に向け自分で考え、行動する力を身に付けるとともに、新たな価値観や行動等の変容をもたらすための教育」「国際理解、環境、文化多様性、人権、平和等の個別分野を持続可能な開発の観点から総合した分野横断的な教育」と説明している。 |
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(参考文献) ・文部科学省国際統括官付日本ユネスコ国内委員会『ESD(持続可能な開発のための教育)推進の手引』2018(平成30)年5月改訂版 |
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2.SDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)の定義とその動向 SDGs(Sustainable Development Goals持続可能な開発目標)の起点となる1992年のリオ・サミットでは、「環境と開発に関するリオ宣言」「アジェンダ21-持続可能な開発のための行動計画」が採択された。「リオ宣言」は「持続可能な開発及びすべての人々のより質の高い生活を達成するために、各国は持続可能でない生産及び消費の様式を減らし、取り除くとともに、適切な人口政策を推進すべきである」(第4原則)と宣言して、「持続可能な開発(Sustainable Development)」に焦点を当てた。さらに、「アジェンダ21」では「持続可能な開発の促進には教育が不可欠である」と明記し、「地球の資源は有限である」と人類に警告を発していた。 2000年には、国連は「ミレニアム宣言」を発し、2001年には「ミレニアム開発目標 (MDGs)」を採択した。これは、1990年代の主要な国際会議で採択された国際開発目標を統合したものである。発展途上国にむけて2015年までに達成することをめざした8つの目標@貧困・飢餓、A初等教育、B女性、C乳幼児、D妊産婦、E疾病、F環境、G連帯が盛り込まれ、それに対して先進国が支援するという側面があった。それぞれに数値目標が設定されて一定の成果はあったが、2015年を前に未達成の課題も残り、世界の環境も大きく変化していた。 そうした状況の中で、SDGsは2015年9月の国連総会の冒頭に首脳が集まって採択され、「誰一人取り残さない社会」を2030年までに実現するという17の国際目標を掲げた。その特徴は「普遍性、包摂性、参画型、総合性、透明性」とされ、17の目標は「1.貧困、2.飢餓、3.保健、4.教育、5.ジェンダー、6.水・衛生、7.エネルギー、8.経済成長と雇用、9.社会基盤・産業化イノベーション、10.不平等、11.持続可能な都市、12.持続可能な生産と消費、13.気候変動、14.海洋資源、15.陸上資源、16.平和、17.実施手段」で、それぞれの目標に対して努力すべき点は169項目にわたる。 目標の1〜6は、おもに発展途上国の伝統的な開発問題の解決、7〜12は先進工業国のどの国も包摂的な成長をはかること、13〜17は全世界的な新しい課題を含み、17の目標は世界中の参加者がパートナーシップを持つことをめざしている。 日本政府もSDGsを重要課題ととらえ、「持続可能な開発目標推進本部」を設置して、国内向けに8つの優先課題に整理した「SDGs実施指針」を定めて目標達成に向けて推進している。 |
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(参考文献) ・国際連合広報センター資料『SDGs』2018(平成30)年 |
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3.ESDの視点から見るSDGsの実践事例 従来の教育課程を「持続可能な社会の担い手を育てる」というESDの視点で捉えなおすと、教育プログラムを統合的に再構築することで学際的・実践的な学びに発展させることができる。つまり、ESDでは学習者を主体とした体験・探求そして問題解決により重点をおいた学習スタイルや地域連携に向けた学びに変容でき、受講者が能動的に関わる参加型学習になるという効果がある。 つまり、SDGsの17つの目標すべての達成にESDは深く関わっている。なかでも目標4は教育分野で「すべての人に包摂的かつ公正で質の高い教育を保障し、生涯教育の機会を拡充する」ことが目標である。 我が国では、SDGs推進本部があげた「SDGs実施指針」の8つの 優先分野を配分して実践活動に取り組んでいる。政府が発表した『SDGsアクションプラン2019』では、I. SDGsと連動する「Society 5.0」の推進、II. SDGsを原動力とした地方創生、強靱かつ環境にやさしい魅力的なまちづくり、III. SDGsの担い手として次世代・女性のエンパワメントを三本柱とする「日本のSDGsモデル」を設定している。 現在、外務省が国内のSDGsの事務的役割を担っており、各省庁や地方自治体、小中高校・大学等の教育機関、企業、団体等、多様なステークホルダーが連携し合う実践活動を推奨している。たとえば、SDGs達成に向けた自治体を公募して「SDGs未来都市」として指定したり、優れた取り組みの企業や団体を「ジャパンSDGsアワード」において表彰するなど積極的に推進している。 たとえば、身近な例を挙げれば、一般社団法人新宿ユネスコ協会は従来の事業をSDGsの概念で組みなおし、区委託講座「SDGsスクール」として多様なステークホルダーと連携して活動している。今後は、こうしたSDGsを原動力とした地方創生が全国津々浦々に波及していくことが期待される。 |
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(参考文献) ・SDGs推進本部『SDGsアクションプラン2019〜2019年に日本の「SDGsモデル」の発信を目指して〜』2018(平成30)年12月 ・一般社団法人新宿ユネスコ協会『SDGsスクールと「ESD for 2030」』2020(令和2)年3月 |
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