登録/更新年月日:2022年12月21日
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1.コミュニティ・スクールの必要性 近年、少子化や過疎化、核家族化などが進行し、子どもたちを取り巻く人間関係は、希薄化しており、福島県では東日本大震災及び原子力発電所事故の影響が、これらに拍車をかける状況にある。このような中、子どもたちのコミュニケーション能力や自己肯定感を育みながら、社会規範等を身に付けさせるためには、親や教員以外の大人など、年代の違う人との接点を意図的に増やすことが大切である。 また、地域においては、子どもや学校は貴重な存在であり、地域行事や奉仕活動に積極的に参加してほしいというニーズや、若者に地域の活性化を期待する声とともに、子どもたちのために、地域が役に立ちたいという話も聞こえてくる。このため、学校教育の充実と地域の活性化を一体で行うことにより、相乗効果が生まれてくると考える。 そこで、熊倉小学校でも、地域が子どもたちを支援するという従来の一方向の関係だけではなく、学校も地域に貢献していくことで、地域と学校が強固なパートナーシップを構築し、学習指導要領のポイントとなる社会に開かれた教育課程を実施しながら、地域づくりと一体となった社会総がかりによる教育を推進する必要がある。 そのためには、学校運営協議会を設立し、学校と地域住民等が力を合わせて学校運営に取り組む「コミュニティ・スクール」と学校と地域が相互にパートナーとして行う「地域学校協働活動」の一体的な実施を推進する必要がある。 熊倉小学校は、18学級、全校生393名の中規模校である。西郷村では、地域学校協働活動事業が積極的に行われており、熊倉小学校でも学校と地域の連携・協働による取組が進んでいる。そうした中で、学校と地域の連携・協働の視点から、次の4点が課題となっていた。 ○ 地域人材活用の実態やよさを教職員が理解していない。 ○ 地域の協力者が、特定化・高齢化している。 ○ コロナ禍のため、地域との連携がなかなか進まず、学校と地域に距離感がある。 ○ 持続可能なしくみができていない。 特に、東日本大震災から10年が経過し、学習指導要領総則にある「学校と地域の連携・協働」がますます必要となっている。しかし、現状は教職員の理解が難しく、地域の協力も特定化の傾向にある。また、コロナ禍により、これまでのような連携・協働が困難となってきた。 このような中、感染症対策を講じながら、新たな時代に向けた視点で、地域人材の積極的な活用、学校の地域貢献等、持続可能なしくみづくりのため、コミュニティ・スクールを推進していくことで、学校の課題解決を図っていくこととした。 |
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(参考文献) ・文部科学省「小学校学習指導要領解説総則編」2018年 ・文部科学省「コミュニティ・スクール2018」2018年 ・福島県教育委員会「地域と学校の連携・協働の手引き」2019年 ・福島県教育委員会「福島県地域学校活性化構想」2019年 |
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2.コミュニティ・スクールの実践 令和3年(2021年)3月3日に、西郷村で初めてとなる熊倉小学校の「学校運営協議会」を設立し、学校経営運営ビションの承認とともに、協議会のスローガンを「大人も子ども(地域の宝)もみんなであいさつしよう」とした。 ○主催事業「地域清掃(地域をきれいに)」(6/16) ダンロップスリクソン福島オープン記念、FCT「ふくしま海ごみ削減プロジェクト」を共催として、5・6年生が学校周辺と公共施設の清掃(ごみ拾い)を行った。今回の目的は、学校周辺の環境美化と子どもたちの地域貢献である。この活動を通して、子どもたちはゴミのないきれいな村にしたいという意欲とともに、環境問題への関心も高まった。 ○主催事業「くまっこ美術展」(7/14〜7/19) コロナによる子どもたちの不安やストレスを和らげ、豊かな心を育成していくため、「西郷村絵画サークル四季の会」と「フォトサークルあぶくま」の作品を校舎内に展示した。これは、コロナ禍により西郷村総合美術展が中止となったため、子どもたちが学校で地域の方のすばらしい作品を鑑賞できるよう依頼したものである。展示期間は、授業参観日にも合わせたため、多くの保護者にも鑑賞してもらうことができた。 ○主催事業「防災授業さすけなぶる」(12/21) 福島大学特任教授の天野先生のご指導と国立那須甲子青少年自然の家のご協力により、4年生が社会科の授業の一環として行った。授業では、実際に災害が発生したときの対処のしかたや、学校での避難所運営で自分たちにできることなどを話し合い、不測の事態でもお互いに協力して助け合うことの必要性も実感した。この授業は、西郷村防災課も参加し、今後の連携を地域と共にさらに深めていくことを確認できた。 ○学校行事の協力・支援と地域人材の積極的な活用 学校運営協議会では、学校行事の支援・協力も行ってきた。入学式で会長から黄色い帽子贈呈、運動会での種目協力と会長の講評、熊倉小学校卒業生によるキャリア教育「チェロ演奏鑑賞会」などである。このような取組により、学校運営協議会の存在を少しずつ地域に広めてることができ、地域人材の新たな発掘や地域サークルとの連携も生まれた。 また、運営協議会委員が、それぞれの立場で、体験活動の指導や環境整備など積極的に協力している。その中でも、環境整備・学校行事の安全確保・作物の植え付けや収穫の支援等は、地域の方々の協力を随時仰ぎ、安全・安心で本物の体験活動を行うことができた。ミシンボランティアは、婦人会の方々の協力で、スムーズに作品を仕上げることができた。 ○運営協議会の周知 運営協議会を地域や保護者に周知するため、学校だより(回覧板)、掲示物、ホームページ、マスコミなど様々な取組を行った。その中で好評だったのが、学校だよりによる各委員の「リレーコラム」である。委員それぞれの想いが込められた内容で、これからの学校と地域との連携・協働の方向性を示唆するものであった。 |
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3.本実践の成果と今後の展望 1 本実践の成果 コミュニティ・スクールの導入による様々な取組により、子どもと地域がより身近な関係になり、保護者や地域の学校教育に対する関心が高まった。その検証のため、年度末に児童・保護者・教職員の全員を対象として、アンケート調査を行った。その結果は良好で、次のような成果があげられる。 ○ 教職員・保護者がコミュニティ・スクールのよさを理解し、地域の学校に対する支援が広がってきた。 ○ 地域人材の掘り起こしが進み、地域の協力者による教育的価値のある体験活動が充実してきた。 ○ 運営協議会と地域協働活動を一体的に実施してきたことで、教員が子どもと向き合う時間が増えた。 ○ 運営協議会のスローガンが少しずつ浸透し、子ども・保護者のあいさつが以前よりも数段よくなった。 ○ 主催事業・連携事業・周知活動などの実施により、運営協議会の役割や企画運営がやりやすくなった。 ○ 学校運営や教育活動について、必要に応じて校長が協議会委員に気軽に相談できる体制ができた。 また、令和3年(2021年)度の最後の運営協議会では、各委員から次のような意見をいただいた。 ・この活動が5年後10年後に、子どもにとって良かったという評価になればいい。 ・婦人会で子ども達に関わり、子ども達の笑顔や楽しい会話で心が癒やされた。 ・元気なあいさつを継続し、西郷村の企業も元気になればいい。 ・地域住民の生きがいづくりに、さらにつながっていけばいい。 ・熊倉小学校の子どもの頑張る姿の発信力がすばらしい。 ・地域の人材や環境をうまく活用し、熊倉小学校のよさが生きている。 ・ボランティアをしていて、子どもから名前を呼ばれると励みになる。 さらに、西郷村では、2022年度より村内の各小中学校で、学校運営協議会の設立を目指していた。その中で、熊倉小学校が先行事例として、村校長会で設立までの経過と取組状況を説明した。その後、村内の各校での学校運営協議会説明会に出向き、本校の実践内容を説明した。そして、学校運営協議会の必要性が村内にさらに浸透し、2022年度には村内小中学校の8校すべての学校で運営協議会を設置することができた。 2 今後の展望 ○ コミュニティ・スクールを核とした連携・協働と地域づくり ○ 持続可能なしくみづくりの推進により、子どもと地域がより身近な関係を構築 ○ Society5.0とSDGsを視野に入れた取組 そして、子どもたちには、「将来は西郷村民の役に立ちたい。」「西郷村に貢献したい。」「西郷村を応援していきたい。」という想いで、震災復興とともに、子ども達の将来を家庭や地域とともに見据えて、コミュニティ・スクールを核とした連携・協働によりさらに歩み続けていきたい。 |
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