登録/更新年月日:2022年2月9日
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1.定義及び内容 【定義】 消防団大学は消防団員が1年間を通じて消防・防災に関する高度な専門知識や技術を学ぶとともに、消防団組織の現状を踏まえた課題の研究を行い、将来の地域防災を牽引していく若手消防団員を育成する山口市独自の消防団員研修である。「消防団大学」第1期(2018)では、「若手消防団員の育成」という目的から概ね50歳以下の山口市内消防団員を対象として分団ごとに希望者を募り、計30名が受講した。 第2期「消防団大学」は、カリキュラムの大枠や年齢制限は変わらなかった一方、対象地域を山口市に限らず、山口市を含む6市1町(山口市、宇部市、萩市、防府市、美祢市、山陽小野田市、島根県津和野町)で構成された連携中枢都市圏域(山口ゆめ回廊)の連携事業として、これら7市町の消防団員にも募集し計31名の消防団員が参加することになった。募集の対象地域を広げたことにより、第1期では山口市の消防団活動の課題解決が中心テーマであったが、第2期では市の枠組みを越えて、地域防災のために消防団員にできることは何かを考える場となった。さらに新型コロナウィルス感染症の感染拡大を受け、実施方法の一部変更も行われた。 【内容】 2019年6月23日(日)に山口市南消防署にて第2期消防団大学が始まった。 1日目は、開講式と人材育成課程の講義、訓練が実施された。開講式後には、消防団員としての基礎知識である「地域防災」や「安全管理」について地震等の大規模災害でのケースを中心に座学が行われた。また、「応急手当」と「人命救助」について実技実演を交えながら講義が進められた。 2日目となる8月4日は、人材育成課程として午前は「火災原因と防火指導の手法」「消防用設備と防火管理」についての講義が実施された。午後からは「ホース延長訓練」を実施し、常備消防(消防署員)が行っている消火戦術を実践した。訓練後には、研究課程として「消防団の活性化」に向けた課題と現状についてグループに分かれて意見交換をした。 3日目(9月29日)は、「消防団の活性化」に向けた研究テーマ決定のためのプロセスや手法について講義が行われた。また、「消防団にとっての活性化とは何か」についてグループ毎に話し合い出た意見を、別のグループの団員と対話を繰り返すという変形型のジグソー法が用いられ、昨年度にはなかった新たな気づきや共感が生まれていた。同様に第2期の新たな試みとして講義の最中には、グラフィック・ハーベスティング技法により、講義や話し合いの重要なポイントや意見などのプロセスがグラッフィックとして記録され、リフレクションを促す構成がされた。最後はグループごとに研究テーマを仮決定し、解決すべき課題と目指す消防団の理想の姿を発表した。 4日目となる11月24日は、「消防団の活性化」に向けた研究テーマの具体的な方策について話し、成果報告会に向けた発表資料作成にも着手した。午後は研究内容を中間発表し、グループ間での意見交換を行った。以降は成果報告会まで各グループで集合しそれぞれ研究を進めていく。 5日目の成果報告会はコロナウィルスの感染拡大を受け、対面での実施は見送られ、オンデマンド型の成果報告会に代えた。各グループで発表の様子を撮影し、その様子をDVDに収録し各分団に配布したほか、一部のグループの成果報告については動画共有サイトの限定公開機能を利用して配信された。 |
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(参考文献) ・中嶋克成「消防団における教育システムの構築への萌芽的研究」『日本生涯教育学会論集』41号、pp.111-120、2020 ・山口市『トップページ > 組織で探す > 警防課 > 『消防団大学』の開講式を開催します』、https://www.city.yamaguchi.lg.jp/soshiki/100/43898.html、2021年4月30日参照 ・中嶋克成、河村靖則、原田進、森次裕之、河村光範、田中結希「消防団大学の実践と継続に向けた今後の課題」『日本生涯教育学会論集』41号、pp.121-130、2020 |
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2.成果 2019年度消防団大学では5つの成果が報告されたが、この中でもB班は2018年度A班の研究を継続する形で新しい教育システム「新消防団大学」を構想した。 2018年度A班は「消防団における教育システムの構築への萌芽的研究−消防団の活性化を図るための団員への教育制度の構築に向けて−」と題し、消防団教育に関するアンケートを消防団員246名に実施し、消防団教育システムの必要性について考察している(中嶋、河村ほか2020に詳しい)。2019年度消防団大学では2018年度A班の研究成果をベースに研究を進めた。2018年度A班では「教育システムの必要性」の考察が主であったが、2019年度B班ではその「教育システムを具体化」することに主眼が置かれた。 消防団大学が、現在の消防団員の質の向上に大きく貢献していることは疑いようもない事実である。一方で、数年後には現・消防団大学受講生が各分団に数名ずつは所属することになる。そのため、山口市消防本部でも詳細は未定であるが数年後に消防団大学の形態を大きく変える予定であった(2019年当時)。B班では消防団員の専門性を担保しつつ、より対象者を広げた消防団教育システムを構築するため、既存の消防団大学をより進化させていく必要があると考え、「若手消防団員の育成」を目的とする現在の消防団大学を「専門的技術・知識の指導者育成の場」とする「新消防団大学」を考案した。消防団員が新消防団大学で指導者として育成されることで、各分団に専門技術・知識の指導者が所属することになり、消防団員同士の循環型人材育成が可能となる。 「新消防団大学」では、(1)専攻科(コース制)の設定と、(2)循環型人材育成により各分団の指導者となる人材を育成し、消防団大学各分団サテライトを創設することを目論んだ。 |
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(参考文献) ・中嶋克成、河村靖則、原田進、森次裕之、河村光範、田中結希「消防団大学の実践と継続に向けた今後の課題」『日本生涯教育学会論集』41号、pp.121-130、2020 |
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3.専攻科の設定と消防団大学サテライトの創設 【専攻科の設定】 新消防団大学で学ぶべき内容を明らかにするため、必要となる知識・技術を2018年度A班の行ったアンケート結果をもとに挙げていった。挙げられた知識・技術をKJ法によりカテゴリー別に分類したところ、「救助」「応急手当」「指揮」「消火活動」「安全・防火」「基礎知識」の6つが抽出された。ただし、1人の消防団員がすべての知識・技術の指導者となることは困難であると考えられる。そこで、新消防団大学では抽出されたカテゴリーごとに専攻科を設定し、専攻ごとに指導者を育成することとした。また、専攻科の教育内容や受講対象者などを設定していった (1)安全管理・防火管理(必修) 安全管理・防火管理は現行の消防団大学「人材育成課程」でも実施されている消防団員にとっての基幹知識である。2018年度A班の調査でも、消防団員の多くが「基礎」、「基本」の知識・技術の教育を求めていることが示唆されており、新消防団大学においても安全管理・防火管理は専攻科何故、必修とすることにした。 (2)消火活動コース 消火活動コースでは対象者をポンプ操法指導員や機関員経験者を中心に選定することとした。消火活動コースで取り扱う内容は、資機材取扱い、危険予知トレーニング、水利部署、消火戦術を想定している。 (3)応急手当コース 応急手当コースの対象者は応急手当指導員を中心に、普通救命講習修了者向けに実施を想定している。内容は、AED取扱い、心肺蘇生法、応急手当実戦(固定・止血・搬送等)などである。分団によっては、全消防団員に普通救命講習を実施していることもあり本コースの素地のある消防団員も少なくない。 (4)救助コース 救助コースは大規模災害で安全に活動できる消防団員指導員を育成するコースである。対象は消防団救助部隊を中心に考えている。山口市の消防団救助部隊は、広域的かつ多発的な災害に備えるため設置されてる。この救助部隊員をベースに指導員を育成していく。訓練の内容としてはロープ結索、救助器具取扱い、危険予知トレーニング、救助実戦(火災・水災・地震等)等を想定している。 (5)現場指揮コース 対象は現場指揮を執る可能性のある班長以上の消防団員である。訓練内容は、現場指揮、情報収集、危険予知トレーニングのほか、普段からの地域連携についても学ぶ想定である。 【消防団大学サテライトの創設】 各コースでの教育を通して専門性を養った消防団員は、最後に全コース集合して成果発表会を行うことを想定している。この成果発表会は実戦訓練会形式で行う。設定される訓練内容は、各コースで学んだ知見を結集しなければ達成できないものを想定している。訓練終了後はチーム同士で活動内容をふりかえる。 これら消防団大学専攻科を受講した団員が各分団に戻ることで、各分団に数名ずつの指導者が所属することになり、団員同士の循環型人材育成に基づく消防団大学のサテライトキャンパスが各分団にできることになる。 なお、「新消防団大学」構想は、2021年度から山口市の消防団教育システムとして正式に採択実施された。採択初年の2021年度は、(1)火災防ぎょコース(提案名では(2)消火活動コース)、(3)救助・応急手当コース(提案(3)(4)を合算したコース)の2コースでスタートすることとなった。 |
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(参考文献) ・総務省消防庁『総務省消防庁ホーム>- 2 -防災・危機管理eカレッジ>1.消防団員の身分>5.団の階級』、https://www.fdma.go.jp/relocation/e-college/senmon/cat2/cat2/cat/1/cat/post-986.html、2021年4月30日参照 |
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