登録/更新年月日:2022年1月28日
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1.ジオパークの観点での生涯学習 ジオパークは、地学的な価値を持つ場所や景観を保全し、教育やツーリズムに活用しながら、持続可能な開発を進める地域認定プログラムであり、地域の生涯学習を担っている。ジオパークの概念では、地域の素材・多様性・活動は階層性を持っている。地域の素材については、大地の上に動植物や生態系がのり、さらに人の暮らしがのっている。また、地域の活動については、保護の上に教育がのり、さらにツーリズムがのっており、全てを一体として地域振興が図られる(図1)。このように、地域の生活・文化・歴史・産業・食などは自然を基盤としており、地域振興にも自然が関係している。 生涯学習としての地域学習では、公民館の講座のように人の暮らしのテーマがほとんどで、自然のテーマはかなり少ない。そこで、地域の地形・地質に着目し、掘り起こし、価値付けすることによって、地域学習に新たな視点を入れたり、学習に深みを与えられると考えられる。すなわち、地域の地形・地質は生涯学習の種ということができる。小項目2、3では、名古屋地域の地域学習として、地形・地質からみて興味深い地点を紹介する。 |
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(参考文献) ・植木岳雪「生涯学習の種としての地形・地質:文系の大学生を対象とした身近な地域を知るためのフィールドワークを通して 」日本生涯教育学会論集、42号、pp. 65-74、2021 |
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2.普段気付かない地形・地質の例 (1)日進市から豊田市の丘陵には、主要道を通っても目につかないが、粘土、硅砂、砂利を採掘する鉱山が多くある(写真1)。それらは、瀬戸物、ガラス、コンクリートの原料として、現在も地域の産業を支えている。しかし、採掘に伴う自然破壊を懸念して、住民による反対運動が起き、「未成鉱山」となった場所もある。また、かつて粘土を運搬していたトロッコのレールが残っており、鉱業の衰退を感じられる場所もある。 (2)豊田市の名鉄浄水駅北側の平坦な地形は、太平洋戦争中に軍の飛行場になった人工改変地形である。そのため、古い集落がなかったり、約2 kmの直線的な道路を造ることができた(写真2)。名鉄猿投駅は平坦な河成段丘上にあるため、広い車両基地を作ることができた。猿投駅からは、段丘崖に沿って勾配を小さくするようにして、線路が引かれている。 |
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(参考文献) ・中島 礼・植木岳雪・山崎 徹・高木哲一・斎藤 眞『豊田地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅)』産業技術総合研究所地質調査総合センター、91p、2022 |
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3.地形・地質を基盤とした人の暮らしの例 (1)日進市から豊田市の丘陵には、信仰の場やニュータウンになっている場所がある。宗教公園の五色園では、昭和初期から始まったコンクリート製の仏像が、尾根、谷、湿地などの微地形を生かして配置されている(写真3)。御嶽山は周囲の丘陵から突き出て、遠方を見渡せるスポットであり、山岳信仰の聖地となっている。山麓には信者が修行する滝、山腹には講による多くの石碑、山頂にはのぼりがはためく神社が位置する。保見団地は、1970年代に丘陵をひな壇状にして造成され、4、000人規模の集合住宅が建てられている。市街地から離れて不便なことから、1990年以降外国人居住者が急増し、多文化共生が図られている。 (2)愛知県は、大きな河川が平野に出て、扇状地で伏流水となり、気候が山間部で取れる原料米や発酵に適していることから、古くから日本酒の生産が盛んである。豊田市にも江戸時代末期から続く酒蔵があり、地元で消費されている(写真4)。一方、中山間地では、農業振興のためにもともと自生する山ごぼう(モリアザミ)を栽培し、味噌漬けを製造するようになった。 |
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