登録/更新年月日:2020年8月18日
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1.実践の概要と基本情報 ここで紹介する実践は、地域の有志リーダーのつながりづくりを基盤に、地域の公園を活用して子どもたちの多様な活動を支援し、それを通してコミュニティづくりに貢献するというものである。平成30(2018)年12月の中教審答申「人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策」は社会教育を基盤とした、人づくり・つながりづくり・地域づくりを提唱したが、まさにそのような社会教育の今日的課題に応える実践ということができるであろう。 (1)本実践におけるコミュニティの範囲 ○黄金中央町内会(1925世帯4085人、小学生307人中学生163人)。 ○隣接する黄金北町内会(1270世帯2628人、小学生139人中学生63人)の2つの町内会。 (2)地域の資源:両町内会を挟んで設置されている「恵庭ふるさと公園」(地区公園4ha、カシワの木他50種類の樹木1200本が生育、平成4(1992)年開園)。 (3)「課題意識を持った人とのつながりづくりとコミュニティづくり 1)3人のキーマン−人脈の深耕力のある人ー ○B氏(男50代、グラフィックデザナー・恵小っ子と地域をつなぐ会代表)=恵庭小PTA役員や黄金北町内会育成部長経験者、市の観光ポスー制作等多様な人脈。 ○H氏(男60代、建設会社員・黄金北町内会育成部長)=恵庭市の建設業界の多種多様な人材とのネットワークを保持、イベントに必要なあらゆる機材の調達が可能。 ○K氏(男80代、市のまちづくり委員等各種委員の経験者・現黄金中央町内会子ども育成部長)=町内会の子どもの多様な出番づくりの仕掛け人。毎月第3日曜日広報車で、町内を子どもたちがあいさつ運動などの放送活動の他、毎月15日子ども回覧板の作成など。 2)3人の出会いと人づくり・つながりづくり 両町内会に居住する小学生は、大部分が恵庭小学校に通学していることから、子どもたちの多様な体験と出番づくりを行うため、恵庭小学校の「通学合宿」を企画実施することとし、実行委員会を立ち上げて関係者の参画を呼び掛けた。その結果、PTA役員・地元大学生・主婦・行政職員(教育委員会・市役所)・恵庭小学校区内の14町内会長など、普段顔を合わせたことの無い人たちがこの事業によってつながった。 (4)地域の資源「恵庭ふるさと公園」の活用 1)冬期間ほとんど利用されないふるさと公園の活用策をB・H・Kの3者で協議。 2)恵庭市の冬の一大イベントである「シーニックナイト」:毎年2月第1土曜日16時30分から20時30分まで国道・市道を雪ランタンやアイスランタンにキャンドルを灯す行事(全町内会・企業・団体・学校等参加)。翌日破棄される使用済みのアイスランタンの有効活用策を検討。使用済みアイスランタンについては、サッポロビール工場が使用した400個のアイスランタンを譲渡してもらい、翌日のふるさと公園のイベントに再利用することにした。 3)4人目のキーマン Y氏(女30代、恵庭まちづくり協同組合(恵庭市から市内の公園管理を受託)公園管理担当主査)=市の職員には無い柔軟な発想と企画力、前向きな決断力の持ち主。 平成30(2018)年厳冬の2月、第1回恵庭ふるさと公園「黄金ふゆフェスタ」を実施。夜間9時まで開場して 延べ300名を超える子どもや市民が参加。これまで暗黒だったふるさと公園が約1千個のキャンドルの明かりに輝く新たな冬のイベント創出に成功。 Y氏の発案で令和元(2019)年8月には恵庭小学校の通学合宿プログラムの中に、農耕馬がふるさと公園の太い倒木を曳く様子を見学後、公園内の草を摘んで馬に与える体験が実現。令和2(2020)年2月には馬の所有者の快諾を得て、馬そりに子どもたちを乗せて公園内を回る体験が実現した。馬の所有者は来年度もこの事業への積極的な協力を申し出ている。 |
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2.実践活動とその成果 (1)人のつながりづくり−多様な人々の特性を生かせる機会の創出− イベントをどのように立派に成功させるかよりも、どれだけ多くの人が関わり、それぞれの役目を果たせたかが評価のポイント。 平成30(2018)年恵庭ふるさと公園「黄金ふゆフェスタ」の成果 1)企画:4人のキーマンの役割分担と人脈の広さ・深さの活用 2)準備:両町内会の役員等の協力・会場設営と後片付け 3)当日 a.テント内での温かい飲み物提供(両町内会女性部・個人の差し入れ) b.そりすべり見守り(老人クラブ・地元大学生) c.ミニ雪像づくり(町内の希望者と子ども) d.グルーづくり(経験のある札幌の会社員が指導) e.巨大シャボン玉遊び(シャボン玉液体造りの達人) f.公園内のスノウキャンドルづくりと配置(市民有志。学生ボランティア等) (2)持続的に発展する地域づくり−単発・マンネリ化したイベントから、次への発展につながるワクワク感のあるイベントの創出− 1)交流と活発な意見交換 黄金ふれあいセンターで「黄金ふゆフェスタ」の報告・懇親会を行ない、両町内会の役員をはじめ、市民ボランティア・学生・民間会社・行政等の関係者が多数参加して活発な意見交換が行われた。その結果、第2回から運営を実行委員会組織に変更することとした。 第1回(平成30(2018)年)の実行組織 主催:黄金北町内会・黄金中央町内会 共催:恵庭まちづくり協同組合 協賛:えにわプレーパーク実行委員会・恵小っ子と地域をつなぐ会・(株)環境緑地研究所(札幌市) 2)実行組織の改編 第2回(令和元(2019)年)の実行組織 主催:黄金ふるさと公園ふゆフェスタ実行委員会 共催:黄金北町内会・黄金中央町内会・恵庭まちづくり協同組合 後援:恵庭市・恵庭市教育委員会 協賛:環境緑地研究所・恵小っ子と地域をつなぐ会 3)小中学生の出番づくり:令和元(2019)年ミニ雪像づくり a.黄金中央町内会の町内盛り上げ隊メンバー12名で1基制作。 b.恵明中学校美術部生徒8名及び美術部顧問が参加して、2基制作(2年目にして中学校との連携が成立)今後、幼稚園児高校生の雪像づくり参加へと発展させる。 4)市の公園管理課が公募した平成29(2017)年から2年間「ふるさと公園再整備プロジェクト」メンバーに、両町内会役員及びふゆフェス関係者多数応募「幼児から高齢者まで幅広く公園を楽しむことができ、長く親しまれる公園」づくりについて7項目のグランドデザインを市役所に提案し、要望が叶って令和2(2020)年から工事着工予定。(地域住民提案型の地区公園づくりが実現した。) |
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3.次のステップとしての持続するコミュニティづくり−今後の取り組みへの課題− 1)両町内の小学生が通学する恵明中学校の体育館において、両町内会合同防災訓練を計画。さらに災害時の両町内会役員の役割分担の確認及び避難場所である中学校において、避難者の案内や校内の施設設備の案内など、中学生が率先してその役割を果たせるよう訓練する。 2)ふるさと公園再整備完成記念イベント開催(両町内合同の運動会・仮装盆踊り大会等交流機会の拡大)とその定例化。 3)黄金地区子どもたちのふる里意識を育む場所として、世代を超えた一体的な活用と保全管理方策を検討。 コミュニティは理論ではなく着実な実践を通して形成されるものである。ふるさと公園に関わる一人一人が、私たちの公園という愛着を持ち、子どもから大人まで公園を楽しい場所にするための役割意識を持ち、世代を超えて混ざり合い、支え合い、助け合うという地道な営みの具現こそがコミュニティである。それを創出できるのは、人脈深耕力のあるキーマンによる子どもたちの多様な出番づくりであると確信している。 |
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