登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日 |
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【定義】 経営診断を行うための手法のことで、経営診断の一連の手続きをいう。 【説明】 経営診断技法のうちの問題を特定するための技法の開発では、主に次の2点に考慮する必要がある。 第1は、診断の核心ともいえる標本照合に関することで、そのための診断カテゴリーが不可欠であるということである。標本照合とは、診断対象(例えば生涯学習関連施設)に経営上の問題があるのかどうか、そして問題があるとすればそれがどのような問題であるかを明らかにすることである。そのような標本照合を可能にするためには、問題状況を示す診断カテゴリーの設定が必要である。 さらに、標本照合の作業は、判別、あるいは推定としてとらえられる。なぜなら、例えば医学では、病名を決定するということは、病気であるかそうでないかを判別することであるか、あるいは、複数の病名の候補の中から最もあてはまりの度合いが高い病名を推定することと考えられるからである。このように考えると、経営診断技法は、経営上、特定の診断カテゴリーにあてはまるかどうかを判別によって示す技法、あるいは複数の診断カテゴリーのうちのいずれに相当するかを推定によって示す技法といえる。 第2に、経営診断は可能な限り正確に行われることが求められる。つまり、それは情報抽出、標本照合、およびその妥当性の検討が正確に行われるということであり、かつ、実際に問題があれば問題があるということを、問題がない場合は問題がないということ示すことである。そのためには、情報抽出の段階では、診断に有効な項目を定量的に測定するか、あるいは定性的な項目であっても「あり」「なし」等で測定できるようにしておくとよい。経営診断技法では信頼性が保たれていることが条件といえるだろう。 そこで、これまでに開発した公民館経営診断技法では、公民館の問題状況を示す診断カテゴリーとして 1)条件整備の不良 2)資源の活用不足 3)事業の活用不足 4)1と2の合併症 5)1と3の合併症 6)2と3の合併症 7)1と2と3の合併症 を設定した。これらの診断カテゴリーが示す問題状況にあてはまるかどうかを個別に判別する経営診断技法としては多変量解析手法の数量化II類を用いた技法、および判別分析を用いた技法がある。数量化II類、および判別分析で示される「社会教育主事資格保有者の有無」等の独立変数が、正確な診断を行うのに有効な項目となっている。これらの情報を収集するのが情報抽出の過程である。この場合は、サンプルスコア(ないし判別得点)と判別区分点を比較し、診断カテゴリーごとに「問題なし」「やや問題あり」「問題あり」の判別を行うことが可能となっている。いずれも正確な診断が行える確率は90パーセント以上である。 また、7つの診断カテゴリーのうちで最もあてはまりの度合いの高いものを推定する技法として、統計的推定法の最尤法を用いた経営診断技法がある。この技法では診断カテゴリーの推定に有効な項目に関して情報抽出を行い、それを用いて診断カテゴリーへのあてはまりのよさの度合い(尤度)を比較する。その結果、最も尤度の大きい診断カテゴリーを「問題あり」の可能性が最も大きいと推定する。なお、ここで推定された診断カテゴリーについては、数量化II類または判別分析による診断を行い、「問題あり」であるかどうかを確かめる必要がある。 br> |
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参考文献 ・原義彦「社会教育施設の経営診断−公民館を中心として−」浅井経子編著『生涯学習概論』理想社、2002年 ・原義彦「公民館の経営診断技法の開発-判別関数を用いた診断技法-」『日本生涯教育学会年報』15号、1994年 ・原義彦「公民館経営診断技法の検討-利用率の観点から-」『教育学系論集』19(1)、筑波大学教育学系、1994年 |
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