生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

学習ボランティア (がくしゅうぼらんてぃあ)

volunteer activity for lifelong learning
キーワード : 学習の成果を生かす、他者の学習の支援、ボランティア活動の分野
馬場祐次朗(ばばゆうじろう)
1.学習ボランティア
   
 
 
 
  【定義】
 学習ボランティアとは、自らの知識・技術・能力や学習の成果を生かし、他者の学習を支援するボランティアをいう。
【説明】
 今日、我が国ではボランティア活動が活発化し、多様な分野でボランティア活動が行われるようになった。公民館、図書館、博物館など生涯学習関連施設においても、各種講座・教室等の指導者、展示解説、スポーツや自然体験活動の指導など、市民の学習活動を支援するボランティア活動が活発に展開されている。こうした生涯学習・社会教育の分野におけるボランティアについては、自らの向上を目指すことや、他者の学習を支援するためなど、ボランティア活動そのものに内在する「学習」との関連を強調する意味で、また、社会福祉ボランティアなど他の分野のボランティアとの区別化を図る意味もあって、「学習ボランティア」、若しくは「生涯学習ボランティア」という名称が用いられている。
 生涯学習とボランティア活動との緊密な関連については、平成4(1992)年の生涯学習審議会答申において、「第一は、ボランティア活動そのものが自己開発、自己実現につながる生涯学習となるという視点、第二は、ボランティア活動を行うために必要な知識・技術を習得するための学習として生涯学習があり、学習の成果を生かし、深める実践としてボランティア活動があるという視点、第三は、人々の生涯学習を支援するボランティア活動によって、生涯学習の振興が一層図られるという視点である」と示されている。学習ボランティアという用語は、これまで、この答申に示される、生涯学習の支援者、いわば指導者という側面に着目して論じられてきた。
 学習ボランティアについては、次のような説がある。まず第一に、学習ボランティアは市民の生涯学習を援助するボランティアのこと、言い換えれば市民の人間性や知識・技能などの向上をめざす生涯にわたる学習の指導や助言や援助をするボランティアのことをいい(稲生勁吾)、学習ボランティア活動は、個人の自由意思に基づき、その知識・技能や時間等を進んで提供し、生涯学習の促進に貢献することで、学習ボランティアの役割としては、ア.学習の指導、イ.学習集団等の運営上のリーダー、ウ.生涯学習のコーディネーター、エ.学習活動の援助者がある(上條秀元)。
 一方、第二に、ボランティア活動は各人が持っている能力、労力、自由な時間あるいは財産を社会に役立てる活動であり、自発性、無償性、公益性という三つの条件を重視する。その上で、生涯学習ボランティアとは、以上の活動を自己の学習成果・体験などを活用して実施する行為者をさし、この生涯学習ボランティアの枠の中に、学習成果を生かさない人のボランティア活動、例えば子ども会で指導はしないが、子ども会のことを近所の人にPRしてくれる高齢者なども含めて考え、生涯学習ボランティアの枠の拡大を提言するものがある(岡本包治)。
 学習ボランティアという場合に、こうした自らの学習成果を生かすこととは直接関係しない人々まで含めることは議論が分かれると思われるが、これまでの指摘を踏まえると、学習ボランティアとは、自らの知識・技術・能力や学習の成果を生かし、他者の学習活動を支援するボランティアと捉えるのが相当である。
 
 
 
  参考文献
・ 生涯学習審議会答申(平4.4.29)については、生涯学習・社会教育行政研究会編集『生涯学習・社会教育行政必携(平成16年版)』第一法規
・ 稲生勁吾他『学習ボランティア活動』(生涯学習テキスト(5))、実務教育出版、1987年
・ 上條秀元「生涯学習社会とボランティア」日本生涯教育学会年報第14号、1993年
・ 岡本包治『これからの指導者・ボランティア[養成・研修・活用]』(現代生涯学習全集5)、ぎょうせい、1992年
 
 
 
 
   



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