生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2011(平成23)年12月11日
 
 

大学を核とした学びのコミュニティ (だいがくをかくとしたまなびのこみゅにてぃ)

community-based learning in university education
キーワード : コミュニティ、生涯学習、世代間交流、ファッシリテータ-、教養
大橋眞(おおはしまこと)、斉藤隆仁(さいとうたかひと)
1.大学を核とした学びのコミュニティ
   
 
 
 
   コミュニティは、集団生活をする人間が日常的にコミュニケーションをする範囲の「社会の単位」という考え方ができる。このコミュニティは、コミュニケーションを基本とした主体的な学びの場でもある。特に世代間交流による学びは、地域社会の知を次世代に伝える役割を果たしてきた。近代社会の発展に伴い、都市部の集合住宅や都市近郊の新興住宅地では、核家族化と共に、このようなコミュニティを中心とした学びの場が、形成されにくくなってきた。また、学校制度の普及により、教育は専門職の教員が行うようになり、コミュニティによる教育はしだいに形骸化するようになった。学校での教員が教育を授け、学生(児童、生徒)は、学問を受け取るものという立場が明確に分かれるようになり、学生の学習態度は受動的になった。このようなスタイルは、大学で行われている生涯教育の場でも一般的になってきている。
 受動的な勉学姿勢を改めて、主体的に学ぶ意義を考えることが大学の使命でもある。そのために、大学を核として、主体的な学びを行うためのコミュニティを形成する試みが、「大学を核とした学びのコミュニティ」である。ここでは、教員はインストラクターとしてではなく、ファッシリテータ-としての役割を果たすことを基本としている。この場において、コミュニケーションを通じての主体的な学びを実現すると共に、世代間交流により知を次世代に伝える役割を果たす。ファッシリテータ-としての教員は、コミュニケーションが教養を深めるために機能するような話のテーマを選定することや、コミュニティの構成員の側からテーマの選定するときのアドバーザーとしての役割を果たす必要がある。また、ファッシリテータ-役の教員は、出来る限り全員参加のコミュニケーションにより、主体的な学びへと発展していくように、発言の誘導や適切な時期にコミュニケーションの適切なとりまとめを行い、次第に話題が発展していく方向に誘導することが必要である。
 このような大学でのコミュニティの構成員は、自らの学びの成果をそれぞれの居所におけるコミュニティに持ち帰り、大学で得た知を他の構成員に伝える役割を果たす。また、インターネットを用いた遠隔ビデオ会議システムを用いることにより、離れた地域間における大学間連携が容易になった。これにより、大学を核とした学びのコミュニティがネットワークを形成し、「地域や国を超えての学びのコミュニティ」へと発展させていくことが出来る。ファッシリテータ-役の教員は、このような発展型学びのコミュニティの形成において、ネットワーク化の中心的な役割を果たす。このような形態の学習社会は、生涯学習と大学教育の融合のモデルとなり得る。教員は、ファッシリテータ-の役割を果たすことを学ぶことにより、専門に拘らないテーマ設定が可能となり、例えば現代社会の諸課題のように多様な学問分野を横断するようなテーマを扱うことも出来る。これにより、教員を含めて地域社会人が教養を学ぶ生涯学習の場として発展していくことが期待されよう。
 
 
 
  参考文献
・.大橋 眞 生涯学習と大学教育の融合から生まれる知の循環型社会構築―持続可能な社会に向けた地域の大学の課題―日本生涯教育学会年報 32:227-244 (2011)
・大橋 眞・中恵真理子・光永雅子・斎藤隆仁・廣渡修一 大学教育ボランティアを活用した教養教育 -地域に知の循環型社会の構築を目指す新しい形の生涯学習-日本生涯教育学会年報 31:83-96 (2010)
 
 
 
 
   



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