生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年10月29日
 
 

飯塚市穂波地区の生涯学習支援 (いいづかしほなみちくのしょうがいがくしゅうしえん)

キーワード : 学社連携事業、教育と保育の連携、学校の「安全宣言」
森本精造(もりもとしょうぞう)
2.子どもの安全のための「学校宣言」
  
 
 
 
  【学校宣言の内容】
 学校が保護者向けに出した「学校宣言」次のとおりである。
 『緊急!!子どもの安全のための「学校宣言」、○○小学校
 最近の子ども達の痛ましい事件に鑑み、我が校の子ども達を
 守り、安全を確保するため、3学期から平日の放課後、18時まで、
 希望する子ども達を学校で預かります。』
【学校が動きだす】
 旧穂波町(合併後、現「飯塚市」)の全小学校5校は、平成17(2005)年12月22日の2学期終業式の日、連続して起こった小学生の痛ましい事件に鑑み、子ども達の安全確保のため、上記「学校宣言」をだした。
 旧穂波町では、完全週5日制が始まった平成14(2002)年度から、学校週5日制の社会教育事業として、学校施設を活用し、平日の毎日の放課後「子どもマナビ塾」事業を17時30分まで開設している。この財産が子どもの安全のための「学校宣言」につながった。
 旧穂波町の学校でも、校内での子ども達への指導は当然怠ってはいない。加えて保護者や地域の皆さんに登下校中の子ども達の安全について、パトロールや情報提供等の協力依頼もしている。そこまでは一般的であろう。しかし本町では社会教育(公民館主管)の「子どもマナビ塾」という財産があることから、校長会に諮り、保護者の迎えを条件に、終了時間を18時まで延長し、放課後・土曜日に学校で子ども達を預かることにした。「学校宣言」までの経過である。預かるには条件を付している。
【安全宣言の条件】
(1)必ず「子どもマナビ塾」を受講すること
(2)受講料を1日(放課後も土曜日も同じ)100円徴収すること
(3)1,2年生も対象とすること(「子どもマナビ塾」は3年生以上)
(4)18時までに、保護者が必ず迎えにくること
(5)既に学童保育に通っている人は、学童保育を優先すること
(6)曜日選択制(出席曜日だけを選択できる制度)をとること
等である。
 平成17(2005)年度3学期の「子どもマナビ塾」の受講者数は全小学校5校で対象児童数の約17%が受講した。
【学校宣言の成果】
 この「学校宣言」の重要な成果は、学校が子ども達の安全確保について具体的な行動の意思表示をしたことである。
 今まで学校は、学校での子どもたちへの安全教育は進めてきていたが、登下校時の安全管理については、地域や保護者にお願いする立場になりがちであった。そのような中、18時まで学校で子どもたちを預かるという宣言は、核家族や共働き家庭の増加の中で、「学校への信頼」回復のチャンスといえよう。学校の信頼が増せば、地域や保護者の学校への支援や協力はもっと高まることになる。
 「子どもマナビ塾」は17時30分までプログラムを準備し、地域の指導者が関わる社会教育事業である。17時30分から18時まではお迎えタイムで、特にこの時間帯に学校に立ち会って貰うことにしている。ここには学校教職員への強制もサービス残業も出てきていない。あくまでも子どもたちを守る学校としての姿勢である。まさに学校教育と社会教育の連携・融合事業ともいえる。
  平成18(2006)年度は、合併後の新たなスタートになったが、「子どもマナビ塾」事業は継続し、受講者も全児童数の26%に増加している。
 子どもたちの事件の多くは放課後の帰宅時間に起こっている。それだけに、18時まで学校という安心安全な施設で子どもを預かる意義は大きい。


 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
  



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