生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2009(平成21)年9月9日
 
 

障がい者に対する図書館サービス (しょうがいしゃにたいするとしょかんさーびす)

library services to people with special needs
キーワード : 障がい者サービス、障がい者、図書館サービス
孫誌衒(そんじひょん)
2.障がい者に対する図書館サービスの歴史
  
 
 
 
   日本における障がい者サービスの始まりは、大正5(1916)年に、東京市の本郷図書館に点字文庫が設置されたことである。その後、各地の図書館に点字文庫や盲人閲覧室などが併設されるなどの活動が継続して行われた。しかし、「身体障害者福祉法」(昭和24(1949)年)において、更生援護施設として「点字図書館」が規定されると、点字部門が公共図書館から切り離され、点字図書館に改編されるようになった。これによって、公共図書館における障がい者サービスの発展は20年あまり遅れをとることになる。
 公共図書館が視覚障がい者サービスに改めて着手するのは、昭和44(1969)年の東京都立日比谷図書館の対面朗読サービスからである。これは、日本盲学生会、盲学生図書館などの働きかけによるところが大きい。のちに、これらの団体は視覚障害者読書権保障協議会(視読協、1970年)を結成し、「読書権」の保障のための活動を続けた。
 昭和49(1974)年の全国図書館大会で、初めて「身体障害者への図書館サービス」をテーマに部会が開かれた。昭和51(1976)年の大会では「障害者への図書館サービス」の分科会が設けられ、「身体障害者」に限らず、図書館利用が困難な様々な人々が「障害者」に含まれるようになった。
 昭和56(1981)年の「国際障害者年」とこれに始まる「国連障害者の十年」、そして昭和61(1986)年に東京で開催されたIFLA世界大会が日本の図書館界に与えた影響も大きい。この大会以降、特に非識字者や施設生活者、在日外国人に対する多文化サービスに目が向けられるようになった。
 日本図書館協会障害者サービス委員会では、これまで5回にわたって「障害者サービスの全国実態調査」を実施している(昭和51(1976)年、昭和56(1981)年、平成元(1989)年、平成10(1998)年、平成17(2005)年)。その調査項目の変化からも、「障がい者」概念の広がりを知ることができる。まず、平成元(1989)年調査では、視覚障害者、聴覚障害者、肢体不自由者、内部障害者の利用者数の調査を開始し、平成10(1998)年調査では、知的障害者、入院患者、施設入所者、在宅障害者、高齢者、受刑者が追加された。平成17(2005)年調査で、精神障害者、学習障害者の2つの項目が増えている。
 歴史的にみると、日本の公共図書館における障がい者サービスは、長い間視覚障がい者サービスに限られていたが、身体障がい者に対するサービス、図書館利用に障がいのある人へのサービスへと発展してきた。2008年、IFLAは障がい者サービス関連の分科会名称を変更し、「障害者サービス図書館分科会」(Libraries Serving Disadvantaged Persons Section)を前述の「特別なニーズをもつ人々への図書館サービス分科会」に改めた。図書館や情報へのアクセスが困難な人たちの社会的不利をもたらす「障がい」は、図書館の側にあることを認識し、利用者一人一人の特別なニーズに対応することが求められている。
 
 
 
  参考文献
・日本図書館協会障害者サービス委員会編『すべての人に図書館サービスを−障害者サービス入門』日本図書館協会、1994
・日本図書館協会障害者サービス委員会編『障害者サービスの今をみる 2005年障害者サービス全国実態調査(一次)報告書』日本図書館協会、2006
・日本図書館協会障害者サービス委員会編『障害者サービス 補訂版』日本図書館協会、2008(図書館員選書・12)
 
 
 
 
  



『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。
<トップページへ戻る
 
       
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved.