登録/更新年月日:2011(平成23)年1月1日 |
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(浅井〔2009〕)によれば、生涯学習には意図的に学ばれたものと、生まれてから現在まで、コミュニティの成員として非意図的になされた学ばれた知といったものがあり、これらを縦軸にとると、横軸には、私的な楽しみを目的になされた生涯学習と公的な活躍を志してなされた生涯学習の、4層に区分できると述べている。ここで述べるコミュニティの知・体験知とは、浅井氏の生涯学習についての区分を発展させて、「社会の様々な部分システムに参入し活動を行った経験から、自ら学び取った知」を指すと定義する。 徳島大学では平成20(2008)年度より文科省質の高い大学教育プログラムに採択された「地域社会人ボランティアを活用した教養教育」というプロジェクトにおいて、初年次の教養科目に、地域社会人ボランティア(=以下、大学教育ボランティア)に参画してもらい、教員、社会人、学生の3者で学びを構築している。この大学教育ボランティアは、学内にある生涯教育センター(=徳島大学開放実践センター)の受講生から応募を募っている。つまり先の「コミュニティの知・体験知」とは、様々な部分システムに参入し活動したことから自然と学び取った非意図的な知であるだけでなく、生涯学習センターという学習共同体で意図的に学んできたことで洗練された「コミュニティの知・体験知」である。 このような知を大学教育に有効に活用するためには、大学教育ボランティアの体験知の多様性を学生の学習効果へとつなげていくための授業科目を創設することが課題となる。徳島大学の教養科目では、知識の習得よりも運用を重視した一連の社会性形成科目群がある。大学教育ボランティアは主に社会性形成科目群の授業科目に参画・活動している。 大学教育ボランティアが授業に参画することで次のような学習効果が見られた。事例として、名著講読「自分探しと現代社会」のグループディスカッションを挙げる。読書経験の少ない初年次の学生であっても、教員のように「普遍的な知」から発せられる問題意識ではなく、社会人が発する「具体的な体験知」からの問題意識によって、課題に共感し、また共通の土俵に乗れることで、有意義な発言を引き出すことが出来た。また社会人から提起される現代社会の課題(=コミュニティの課題)は、学生の初発の問題関心を伸長させる上でも学習効果が見られた。 br> |
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参考文献 ・浅井経子「生涯学習社会の新たな支援」徳島大学開放実践センター講演レジュメ、2009 ・大橋眞他「大学教育ボランティアを活用した教養教育―地域に知の循環型社会の構築を目指す新しい形の生涯学習―」日本生涯教育学会、第31号、2010 |
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