生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2009(平成21)年12月10日
 
 

IT戦略と生涯学習 (あいてぃせんりゃく と しょうがいがくしゅう)

“IT strategy” and lifelong learning
キーワード : ICT、情報化、インターネット社会、IT戦略本部
伊藤康志(いとうやすし)
1.IT戦略と生涯学習
   
 
 
 
  【字義】
 内閣総理大臣を本部長とする「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)」が最先端のIT国家を目指し平成13(2001)年に決定した「e-Japan戦略」以降、平成15(2003)年の「e-Japan戦略U」、平成18(2006)年の「IT新改革戦略」、平成21(2009)年の「i-Japan戦略2015」と、政府全体の戦略的かつ集中的な取組が展開されている。
【説明】
1)当時、先進諸国に比して大きく情報インフラの整備が遅れていた日本の状況を踏まえ、2000(平成12)年に「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)」が成立、IT戦略本部によって平成13(2001)年に、5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指した行動計画「e-Japan戦略」が決定された。これまでの遅れを取り戻すために、四つの重点政策分野の第一に「超高速ネットワークインフラ整備及び競争政策」を挙げ、必要な制度改革や施策が緊急かつ集中的に実行された。結果、インターネット普及率が57.8%(平成14(2002)年)→75.3%(平成20(2008)年)、ブロードバンド契約数が784万契約→3,011万契約、また超高速ブロードバンド(光ファイバ)でも21万契約→1,442万契約と、世界で最も安価で高速のブロードバンドが利用できる水準となった。
2)ポストe-Jpanとして決定された「IT新改革戦略」では、現在「我が国はインフラ整備においても利用者のレベルにおいても世界最高水準」と分析、今後は行政サービス、教育・医療などソフト面の課題解決にITがどう貢献できるかに重点をシフトし「「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」使えるユビキタスなネットワーク社会」の実現を目指すとした。
3)平成21(2009)年に「i-Japan戦略2015」という新しい戦略が決定された。副題は「国民主役の「デジタル安心・活力社会」の実現を目指して」「Towards Digital inclusion & innovation」で、デジタル技術が「経済社会全体を包摂する」(inclusion)、「経済社会全体を改革して新しい活力を生み出」す(innovation)という意である。これまでのコンピュータやインターネットを中心とした「IT」から「デジタル技術」に焦点化することでデジタルテレビなどの家電なども視野に入れたより包括的な戦略化が図られている。
4)「i-Japan戦略2015」では、(1)三大重点分野、(2)産業・地域の活性化及び新産業の育成、(3)デジタル基盤の整備を目標とし、重点分野の一に「教育・人材分野」を盛り込んだ。2015年までに、「子どもの学習意欲や学力を向上させる」「子どもの情報活用能力を向上させる」「高度デジタル人材のミスマッチが生じない安定的・継続的な仕組みを確立する」「大学等における情報教育、デジタル基盤、遠隔教育等を充実する」を実現するとした。
5)平成21(2009)年度補正予算でも学校を中心に電子黒板、地上デジタルテレビ、コンピュータ、校内LANの整備等に多額の予算が措置されたが、景気対策の側面も強く、政権交代を受け、どこまで実のある施策が図られるかは課題として残る。
6)IT戦略は情報インフラ整備というハード面では最大効果を発揮したがソフト面では未だ十分な展開を見い出せないままである。
 
 
 
  参考文献
・高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部) 
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/ 
・総務省「平成21年版 情報通信白書」
 
 
 
 
   



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