登録/更新年月日:2024年8月31日
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1.コミュニティ・スクールの必要性と社会教育士の役割 1 コミュニティ・スクールの必要性 西郷村の地域課題は、「地域のつながりの希薄さ(人口増加、新興住宅地)」「村事業や地域行事の認知度や関心の低さ」であり、未来を担う子どもたちを育成するためには、学校・家庭・地域がそれぞれの役割を果たし、社会総がかりで教育活動を行うことが求められている。 そこで、西郷村では、地域学校協働本部事業が設置され、放課後子ども教室事業では平成26年度、地域学校協働活動事業では令和元年度に文部科学大臣表彰を受賞した。学校支援事業も整備され、地域コーディネーターが中心となって、学校支援を進めている。地域学校協働本部では、運営委員会と評価・検証委員会が協働活動を推進し、「学校支援事業」「学習支援ステップフリー事業」「放課後子ども教室」の3つの活動を行っている。 また、地域においては、子どもや学校は貴重な存在であり、地域行事や奉仕活動に積極的に参加してほしいというニーズや、若者に地域の活性化を期待する声とともに、子どもたちのために、地域が役に立ちたいという話も聞こえてくる。このため、学校教育の充実と地域の活性化を一体で行うことにより、相乗効果が生まれてくると考える。そのためには、学校運営協議会を設立し、学校と地域住民等が力を合わせて学校運営に取り組む「コミュニティ・スクール」と学校と地域が相互にパートナーとして行う「地域学校協働活動」の一体的な実施を推進する必要がある。 この必要性をふまえ、熊倉小学校が西郷村のモデル地区として、自校の課題解決のために、学校運営協議会を立ち上げることで、西郷村地域学校協働活動事業の基盤を生かすとともに、コミュニティ・スクールにより地域学校協働活動を活性化させていく。さらに、西郷村の小・中学校で、先行的に実施することで、その成果を村全体に広げ、持続可能で新たな時代に向けた体制づくりを進めていく必要がある。 2 社会教育士の役割 社会教育士制度は、令和2年度から始まった制度である。もともとは「社会教育主事」という社会教育を行う者に対する専門的技術的な助言・指導に当たる専門的教育職員の制度があり、社会教育法に基づいて教育委員会に置くこととされていた。社会教育士制度は、この社会教育主事になるために修得すべき科目等を定めた社会教育主事講習等規程の一部改正によってできた制度である。社会教育士は、社会教育の制度や仕組み、基礎的な知識に加え、専門性を活かしながら、地域の思いに寄り添った長期的な地域づくりのビジョンを持ち、地域活動や市民活動が持続的に展開していく支援をする。地域と学校をつなぐコミュニティ・スクールを推進していくためには、社会教育士としての役割を活かしたマネジメントが必要であり、実効的で持続可能な仕組みの構築が期待される。 |
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(参考文献) ・文部科学省「小学校学習指導要領解説総則編」(2018) ・福島県教育委員会「福島県地域学校活性化構想」(2019) ・福島県教育委員会「第7次福島県総合教育計画」(2022) |
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2.学校でのコミュニティ・スクールのマネジメント 1 設立1年目(令和3年度)の実践 令和3年に、西郷村で初めてとなる熊倉小学校の「学校運営協議会」が設立された。第1回の会議では、学校経営運営ビションの承認とともに、協議会のスローガン「大人も子ども(地域の宝)も、みんなであいさつしよう!」を決定した。 コミュニティ・スクールでは、地域の伝統文化・伝統芸能を柱とした活動により、地域と学校の連携・協働を進めるところが多いが、熊倉小学校ではそのようなものがなかった。そこで、地域課題解決や地域のよさを生かした教育的価値があるもので、持続可能なシステムが構築できるよう、主催事業「地域清掃」「くまっこ美術展」「防災授業」を3本企画し実施した。日常的には、地域人材の積極的な活用を図り、体験活動の準備や指導、学習環境の整備などの協力がある。ミシンボランティアは、婦人会の方々の協力で、5・6年生の授業に毎回5・6人ずつ入っていただいた。このようなことから、子どもたちにとって充実した体験活動と地域の方と交流する機会が増えた。 また、運営協議会を地域や保護者に周知するため、学校だより、掲示物、マスコミなど様々な広報活動を進めた。その中で好評だったのが、学校だよりによる各委員の「リレーコラム」である。委員の想いが込められた内容で、これからの学校と地域との連携・協働の方向性を示唆するものであった。 2 設立2年目(令和4年度)の実践 特別事業として栃木県の鳳麟雅楽会による雅楽の授業を行った。雅楽は、高学年の音楽にも出てくる内容であるが、実際に本物を鑑賞する機会はなかった。当日は、楽器演奏体験もさせていただくなど、貴重な機会となった。また、地域人材をさらに積極的に活用する機会も増え、絵画指導、木工指導、押し花教室、ふるさと西郷講座、文化琴体験、茶道教室を実施した。このことで、地域人材の掘り起こしがさらに進み、地域と学校との連携・協働がさらに進んだ。さらに、これまでの活動に加え、各種団体や大学との連携も図り取り組んだ。 このような実践により、熊倉小学校では、児童・保護者・教職員を対象に令和3年度と令和4年度にアンケート調査を行った。結果の考察は、次の通りである。 ○学校と地域の距離感が縮まってきた ○子どもと大人とのコミュニケーションが増えた ○本物の体験など教育的価値のある活動ができた ○職員のコミュニティ・スクールの理解が深まり、多忙化解消にもつながった ○将来は西郷村のために役に立ちたいという子どもの意識が高まった この結果をもとに、リーフレットを作成し、保護者や地域、村内各小中学校にコミュニティ・スクールの実施報告やよさを伝えた。 |
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(参考文献) ・文部科学省「コミュニティ・スクール2018」 ・福島県教育委員会「地域と学校の連携・協働の手引き」(2019) |
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3.行政の立場でのマネジメントと今後の展望 1 行政の立場でのマネジメント 令和4年度には、西郷村内すべての小中学校で、学校運営協議会が設立され、地域による教育活動の支援や環境整備などを進めている。また、コミュニティ・スクールと地域学校協働本部事業が一体的に推進できるよう、地域コーディネーターを増員するとともに、私自身が統括コーディネーターとして、本部事業の運営委員会と小中学校への支援や助言を行った。 公民館運営や事業の中でも、各学校への文化協会加盟団体や自主サークル団体の協力を依頼し、くまっこ美術展、押し花教室、茶道教室の支援を行った。また、コミュニティ・スクールによる学校支援者を公民館事業にも依頼し、学校教育・社会教育の双方向での活用につなげた。 また、羽太地区は、少子高齢化が進み、県重要無形民俗文化財の「上羽太天道念仏踊り」の継承が課題となっている。そこで、令和5年度は、羽太小学校での10月の学習成果発表会に先立ち、その由来や歴史について、西郷村生涯学習課で学芸員でもある職員が、「ふるさと西郷講座」として6年生に出前授業を行った。その後、地域の保存会の方が来校して、3年生から6年生までの児童に、踊りの指導を行った。学習成果発表会では、初めに6年生がふるさと西郷講座で学んだことを発表した。続いて、保存会の方が太鼓をたたき、3年生以上の児童が「軽井沢」「竹島」「うちわ太鼓」と呼ばれる演目を踊った。踊りは、観客の心に響き、涙ぐむ高齢者の姿もあった。 2 今後の展望 ○コミュニティ・スクールを核とした連携・協働をさらに進め、人づくり・つながりづくり・地域づくりをさらに推進していく。 ○社会教育を推進する中で、さらに地域人材の掘り起こしを図り、地域コーディネーター等の推進者の特定化・高齢化の課題に対応する。 ○コミュニティ・スクールと地域学校協働本部事業の取組について、地域や保護者に様々な方法で周知し、理解者と協力者を増やしていく。 ○社会教育士として、地域や学校にさらに寄り添い、持続可能なしくみづくりを構築していく。 そして、子ども達には、「将来は西郷村民の役に立ちたい」「西郷村に貢献したい」「西郷村を応援していきたい」という思いで、震災の復興創生に向け、歩み続けていきたい。 また、社会教育士としての実践を通して、「現場に出向く」「情報共有・情報発信」「地域人材の活用」「コーディネート」「コンサルタント」が特に大切だと実感した。今後も、行政の立場から、コミュニティ・スクールの推進により、地域住民と一緒に汗をかき、人づくり・つながりづくり・地域づくりに貢献していきたい。 |
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(参考文献) ・福島県教育委員会「地域と学校の連携・協働のために」(2024) |
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