生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2019年2月5日
 
 

博物館の自己収入(はくぶつかんのじこしゅうにゅう)

self-revenue of museum
キーワード : 博物館 、自己収入 、外部資金 、寄付 、クラウドファンディング
船木茂人(ふなきしげひと)
 
 
 
  1.国立科学博物館における外部資金獲得への取り組み−平成28(2016)年度〜平成29(2017)年度−
 博物館を取り巻く環境は、予算や職員数の減少等によって年々厳しさを増している。
 本項目では、国立科学博物館(以下「科博」という。)における外部資金(自己収入)獲得に資する取組のうち、筆者が科博に在籍していた平成28(2016)年度〜平成29(2017)年度における取組を紹介する。
 科博においては、運営費の削減という逆風に抗するため、平成28(2016)年度〜平成32(2020)年度を対象期間とする第4期中期計画において積極的に自己収入の増加に努める旨を記載している。科博における寄付制度を添付資料において整理しているが、科博では、様々な寄付制度を設定し寄付者のニーズに応えられるようにしているところである。なお、本図では館内に設置されている募金箱も広義の寄付と整理している。 
 外部資金の獲得に向けては、それぞれの寄付制度に特徴をもたせ、それぞれの制度が相補する関係になるよう設計することで結果として寄付者に対して間口が広がる形で機能することが理想的である。
 
 


添付資料:科博における寄付制度の整理

 
  (参考文献)
・日本博物館協会『博物館研究』 Vol.52, No.12, 2017(平成29)年, p.14-17
 
 
 
  2.賛助会員制度
 科博では、平成16(2004)年度から賛助会員制度を設けている。本制度の特徴として、1)寄付金の使途をあらかじめ明示(地域博物館と連携したイベントの実施、標本資料の保存・修復等、青少年の自然科学等への幅広い興味・関心の向上に関する事業 等)、2)寄付者に対する特典を寄付金額に応じて設定、3)(寄付ではあるが)有効期限を1年間とした会員制度とすることで、寄付者の1年後の再度の寄付を前提とする、といった点が挙げられる。更に寄付者に対して寄付金の使途を報告するため、パンフレットを作成し、ウェブサイト上に掲載しているほか、賛助会員のつどい(寄付者を科博に招待した上で展示の見学会等を行う事業)においても報告している。
 この賛助会員制度については、平成29(2017)年9月より改定を行い、クレジットカード払いへの対応等を行った。これまで個人が賛助会員に加入する際は、書面での手続きに加え銀行振込が必要であり、寄付者に対して非常に煩雑な対応を求めていたが、クレジットカード払いの導入によってインターネットだけで寄付を完結させることができるようになった。
 
  (参考文献)
・日本博物館協会『博物館研究』 Vol.52, No.12, 2017(平成29)年, p.14-17
 
 
 
  3.クラウドファンディング
 科博では、平成28(2016)年2月から4月にかけて、国内の博物館では初となるクラウドファンディングを実施した。これは、「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」(3万年前の人類がどのように海を越えて日本列島に渡ってきたのかを検証するため、学術的証拠をもとに復元した舟を用い、台湾から与那国島への実験航海を実施する研究プロジェクト)の実施経費への支援を求めるものである。
 クラウドファンディングは、インターネットを通じてプロジェクトが有する魅力や成果等を発信し、それに賛同した多くの個人・団体から支援を得ることが目的であるため、いかに魅力的なプロジェクトを提示するかが重要となるが、本プロジェクトの場合は、1)単なる冒険を超えた科学的な裏付けに基づくロマンあふれる壮大な実証実験となり、地域への貢献や国際交流にも寄与する取組であること、2)活動資金の支援を通してプロジェクトへの参画意識及び連帯感の醸成が見込まれること、3)プロジェクトを展開する中での試行錯誤や失敗までの情報を共有することで研究者だけでなく支援者も一緒に謎を解く体験ができる、といった点がクラウドファンディングに適した特徴を有しているといえる。
 平成28(2016)年度に実施したクラウドファンディングでは、公式ホームページやSNS等を通じた積極的な情報発信と拡散、報道への積極的な情報提供、ナイトミュージアムの参加権等科博ならではの魅力あるリターンの設定(クラウドファンディングは一般的に購入型と寄付型に大別されるが、科博では購入型にて実施)など様々な取組を組織的に行うことによって、目標額2,000万円に対して、875人の支援者から2,638万円の支援を得ることに成功した。
 
  (参考文献)
・日本博物館協会『博物館研究』 Vol.52, No.12, 2017(平成29)年, p.14-17
・国立科学博物館Webサイト『3万年前の航海 徹底再現プロジェクト』, 2019(平成31)年1月27日参照
 https://www.kahaku.go.jp/research/activities/special/koukai/
 
 
 
 
   



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