生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2018年10月20日
 
 

学校教育と博物館の関係(がっこうきょういくとはくぶつかんのかんけい)

キーワード : 中央教育審議会 、学習指導要領 、博物館法 、地域連携担当教職員 、地域コーディネーター
八田友和(はったともかず)
 
 
 
  1.定義と法律関係
2008(平成20)年の中央教育審議会(以下、中教審)答申において、博物館が学校を支援すること(博学連携)の重要性が明記された。本稿では、学校教育と博物館の関係性を考える上で「博学連携」を取り上げたい。博学連携とは、「博物館と学校とが望ましい形で連携・協力を図りながら、子どもたちの教育を進めていこうとする取り組み」と定義できる。つまり、授業での連携の他にも、修学旅行や遠足、職場体験、部活動などの連携も含む広範な教育活動であるともいえよう。
 博学連携について、述べる前に、学習指導要領と博物館法の該当箇所について整理しておきたい。
○学習指導要領(社会・美術・特別活動など)
「家庭や地域の人々との連携、社会教育施設等の活用などを工夫すること」(H20小学校特別活動学習指導要領)
博物館、郷土資料館などの施設を見学・調査したりするなど具体的に学ぶことを通して理解させるように工夫すること。(H29中学校社会科学習指導要領)
○博物館法 第3条(博物館の事業)
九 社会教育における学習の機会を利用して行つた学習の成果を活用して行う教育活動その他の活動の機会を提供し、及びその提供を奨励すること。
十一 学校、図書館、研究所、公民館等の教育、学術又は文化に関する諸施設と協力し、その活動を援助すること。
2 博物館は、その事業を行うに当つては、土地の事情を考慮し、国民の実生活の向上に資し、更に学校教育を援助し得るようにも留意しなければならない。
 
 
 
  2.説明・動向・現状
博学連携を博物館側から見た場合、博物館の強みであるヒト(学芸員)・モノ(ホンモノの資料)そして、それらに裏付けられた情報(データベース、資料など)を活かした支援が想定される。一方で、現在行われている学校教育における博物館活用は大きく以下の3つに大別できる。
1)教科教育における活用(社会科、理科、総合的な学習の時間など)
2)キャリア教育における活用(インターンシップ、職業体験など)
3)課外活動での活用(クラブ、サークル、修学旅行、遠足など)
従来の博学連携とは、主に@を指しているケースが多かったが、開かれた学校づくりや学社融合が求められるなかで、AやBの連携も増えつつある。
また、具体的な博物館の活用方法としては、以下の6点をあげることができる。
1.博物館での展示解説、ガイドツアー
2.体験活動(職場体験を含む)
3.無料の配布物・ワークシート
4.資料の借用
5.出張授業・出前授業
6.博物館施設そのものの利活用
従来、活用方法としては1(博物館での展示解説、ガイドツアー)が主流であったが、授業だけでなくキャリア教育や課外活動での活動が広がるなか、活用方法も増え始めている。特に、2(体験活動)を重視する博物館活用が増え、5(出張授業・出前授業)も全体における割合が増えてきている。
 
 
 
  3.課題
上記のような現状の中で、ここでは学校と博物館の関係について二つの課題を提示しておきたい。
第一に、「博学連携」が目的化した連携が多いことである。博学連携の目的は、冒頭でも述べたように、「博物館と学校とが望ましい形で連携し、子どもたちの教育を進めていくこと」であり、あくまでも学校と博物館の強みを活かした子どもたちのための教育活動である。しかし、結果として「連携の実施」が目的化した取り組みが行われているケースも多々見受けられる。「そもそも何のために連携するのか」「博学連携とは何なのか」という博学連携の意義を改めて確認しつつ、連携を行う必要があるだろう。
第二に、同じ子どもを対象とした、継続的な博学連携が行われていない点である。多くの連携は一過性のものであり、継続して行われることは少ない。そこには、学校と博物館双方の受け入れ態勢が整っていないことはもちろんのこと、両施設の多忙や関心の有無が大きな問題としてある。そんな中、平成27(2015)年の中教審答申により「「チームとしての学校」と家庭、地域、関係機関との関係」について言及され、地域連携を担当する教職員の配置や地域コーディネータの活用など具体的な方針が示された。従来、連携の窓口は実際に活用を行う教員が担う場合が多かったが、連携に特化した教員を配置・活用することで、博物館の活用内容や活用方法の蓄積、さらに教員間の情報共有などが図られよう。キャリア教育やアクティブ・ラーニングなど、学校教育における教育環境が目まぐるしく変化するなか、博物館の需要はますます高まっている。今後は、地域連携を担当する教職員を中心に、学校教育における博物館活用の在り方を再考・検討することが求められよう。
 
  (参考文献)
・八田友和「学校教育における博物館活用の実態と課題-兵庫県東播磨地域に所在する学校へのアンケート調査を踏まえて-」『日本生涯教育学会論集38』日本生涯教育学会2017年
・浅野晋司「「もうひとつの特別教室」であることを目指して〜“博学連携”で学習支援課が大切にしていること〜」『兵庫県立考古博物館研究紀要第8号』2015年
・市川須美子『教育小六法 平成26年版』学陽書房2014年
・浜田弘明『シリーズ現代博物館学1博物館の理論と教育』朝倉書店2014年
・日本博物館協会『子どもとミュージアム 学校で使えるミュージアム活用ガイド』ぎょうせい2013年
・村野正景「学校考古を支援する博物館の取り組み」『朱雀第27集』2015年
・文部科学省ホームページ 中央教育審議会諮問・答申等(2018/10/08 取得)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/toushin.htm
 
 
 
 
   



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