登録/更新年月日:2011(平成23)年1月1日 |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
|
|||||||||||||
生涯学習振興行政の視点から生涯学習振興ガイドライン(以下、ガイドライン)の役割について考えると、政策等の指針と指導目標という2つの点が浮かび上がる。 政策等の指針という点について、以下のように考えられる。まちづくりが進行し、市民協働型社会に移行しつつある今日、政策立案機能が行政だけに委ねられるのではなく、協働関係を構成する各アクターがパートナーシップ関係を構築し、相互に課題の共有化を図った上で施策を立案、実施することになるため、関係者によって承認された指標が求められる。そこでの説明責任もあることから、指標となるガイドラインを策定する必要が生じ、策定に当たっては、地域の自律性に基づいた地域主権の質を明示することが必要である。ガイドライン策定に当たっては、行政や住民などの協働関係を構成する各主体が協議することになるが、研究者の参加も望まれる。策定されたガイドラインは、施策の重点項目化を図るものであり、予算要求の根拠を示すことにもなる。 指導目標という点については、ガイドラインがその自律性が保障されるなかで、継続的な行政施策の改善につながる評価基準となる役割を持つことがあげられる。ガイドラインは、その意味で行政や関係機関からの指導目標としての役割を持ち、生涯学習振興行政評価の根拠になり得る。 生涯学習振興行政におけるガイドラインの役割から、今後の課題と可能性について考えると以下のようになる。 第1点として、このガイドラインには、法律や条例とは異なる側面からの行政支援方策であることという認識が求められる。具体的な施策を明示することではなく、基本的なコンセプトを提示することであり、優れた論理によって構成される。そのためには施策の必要性が理解されるような説得力のある指標であることが重要である。 第2点として、ガイドラインには、具現化法とは異なる柔軟性が要求され、協働関係を構成する各アクターの主体性が発揮できるような内容になっていることが望まれる。また、生涯学習振興行政の重要課題である教育行政と一般行政の結び付き、いわゆるネットワーク行政を形成する際のフレームづくりの役割も期待できる。 第3点として、ガイドラインが設定されると、それに基づく行政評価が発生することから、行政の責任が明確になる。このことは、行政の責任としての指導基準を明らかにすることでもある。指導と助言という行政の助成作用が働くことによって、行政の質が保証されることになるとともに、行政支援の内容の共通理解が図られることにつながる。行政自身が何をすべきかが明らかになり、総合的な行政運営を可能とする。 生涯学習振興ガイドラインについては、こうした課題と可能性があるが、我が国ではガイドライン行政全般についての議論は未だ緒に就いたばかりである。EUなどの海外でのガイドラインを研究している澤野由紀子氏や、具体的に行政システムを検討している田井優子氏らの先駆的な研究とともに、今後の研究の成果が待たれる。 br> |
|||||||||||||
|
|||||||||||||
参考文献 |
|||||||||||||
『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。 |
|||||||||||||
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved. |