生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2018(平成30)年3月12日
 
 

地方分権の中の生涯学習推進 (ちほうぶんけんのなかのしょうがいがくしゅうすいしん)

promotion of lifelong learning under the decentralization reform
キーワード : 地方分権、規制緩和、地方分権一括法、指定管理者制度
猿田真嗣(さるたしんじ)
1.地方分権改革と社会教育行政
  
 
 
 
   1990年代後半から政府による地方分権、規制緩和、地域主権などを標榜する改革が進められ、各地域において自主的・自律的な地方自治のあり方が模索されている。その中で、社会教育・生涯学習に関する行政のあり方も少なからぬ影響を受けている。
【地方分権改革の動向】
 平成7(1995)年、「地方分権推進法」のもとで「地方分権推進委員会」が発足した(内閣総理大臣の諮問機関)。同委員会は平成8(1996)〜10(1998)年にかけて5次にわたる勧告を行うとともに、平成12(2000)年には2度の意見、平成13(2001)年には最終報告を内閣総理大臣に提出した。
 同委員会の勧告等に基づき、平成13(2001)年には、「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(いわゆる地方分権一括法)が制定され、機関委任事務の廃止、国の関与・必置規制の見直しなど、広範な分野で分権改革・規制緩和が行われた。
 その後も政府は「地方分権改革推進会議」(平成13(2001)〜16(2004)年)、「地方分権改革推進委員会」(平成19(2007)〜22(2010)年)などを設置し、地方分権改革の推進に関する基本的な事項に関する調査・審議を継続している。
【生涯学習審議会の平成10(1998)年答申】
 地方分権推進委員会の勧告を受ける形で、平成9(1997)年、文部大臣は生涯学習審議会に対して「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」諮問を行い、翌年、同審議会は答申をとりまとめた。その中で、戦後の社会教育行政制度は「住民が社会教育施設の運営に参加する仕組みを持つなど、今日においても先進的な考えを持って整備されたものである」が、「住民参加の仕組みが形骸化したり、地域の特色が生かせなくなっている」と指摘された。そして、「規制の廃止、基準の緩和、指導の見直しなど地方分権、規制緩和の観点からの改革を積極的に進める」よう提言した。
 具体策としては、「地方公共団体に対する法令等に基づく規制の廃止・緩和」として「公民館運営審議会の必置規制の廃止と地方公共団体の自主的判断の反映」など5項目、「社会教育施設の運営等の弾力化」として「社会教育施設の管理の民間委託の検討」など4項目が提言されている。
【地方分権一括法による社会教育行政改革】
 同答申に基づき、平成11(1999)年、社会教育法と関係法令は大幅に改正される。いわゆる「地方分権一括法」の制定である(施行は平成12(2000)年4月)。これにより、社会教育法制における住民参加条項の改定をはじめ、基準・要件の緩和などが具体化される。この法改正は、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(平成11(1999)年)による「PFI方式」や、「地方自治法」の改正(平成15(2003)年)による「指定管理者制度」などとも連動し、以後、社会教育施設の整備と維持管理・運営への民間事業者等の参入の動きが加速することとなった。
 
 
 
  参考文献
・生涯学習審議会答申「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」1998。
・内閣府「地域主権改革」(URL: http://www.cao.go.jp/chiiki-shuken/index.html、2010年9月24日参照)。
 
 
 
 
  



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