登録/更新年月日:2024年1月30日
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1.社会教育法の一部改正―平成20年 (1)改正の趣旨と経緯 今回の改正は、平成18(2006)年の教育基本法改正を踏まえ、社会教育行政の体制の整備等を図るため、社会教育に関する国及び地方公共団体の任務、教育委員会の事務、公民館の運営等に関する規定を整備するものである。 具体的内容は、平成20(2008)年の中央教育審議会答申「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」の提言に沿ったものとなっている。 (2)改正の概要 第1に、教育基本法の改正を踏まえた規定の整備等が行われた。 改正教育基本法においては、生涯学習の理念(第3条)、家庭教育(第10条)及び「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」(第13条)に関する規定が設けられた。 これを受け、社会教育法第3条に、国及び地方公共団体が社会教育に関する任務を行うに当たって、「生涯学習の振興に寄与するものとなるよう努めるものとする」との趣旨が追加された(第2項)。 また、第3項において、学校教育との連携、家庭教育の向上への配慮に加え、「社会教育が学校、家庭及び地域住民その他の関係者相互間の連携及び協力の促進に資することとなるよう努めること」と規定された。 さらに、20年答申の趣旨も踏まえ、教育委員会の事務に、家庭教育に関する情報の提供、社会教育における学習の成果を活用して行う教育活動等の機会を提供する事業の実施等が追加された。 第2に、公民館は、その運営状況の評価及び改善とともに、その運営に関する地域住民等への情報提供に努めるべきこととされた(第32条及び第32条の2関係)。 第3に、地方公共団体が社会教育関係団体に対し補助金を交付しようとする際には、社会教育委員の会議への意見聴取が義務付けられているが、当該地方公共団体に社会教育委員が置かれていない場合には、条例で定める審議会等の意見を聴くことをもってこれに代えることができることとされた(第13条関係)。 第4に、社会教育主事となる資格を得るために必要な3年以上の実務経験の対象として、司書、学芸員等、学校や社会教育施設における一定の職を加えることとされた(第9条の4関係) 第5に、社会教育主事は、学校が社会教育関係団体等の関係者の協力を得て教育活動を行う場合には、その求めに応じて助言を行うことができることが明示的に規定された(第9条の3関係)。 (3)留意事項 本改正法施行通知においては「留意事項」が付されている。第1に、教育委員会の事務として追加された「社会教育における学習の成果を活用して行う教育活動等」の例示として、学校における「学校支援地域本部事業」として行われるボランティア等による支援活動、図書館における子どもへの読み聞かせ活動、博物館における展示解説活動などが挙げられている。 また、このような活動の機会を提供する事業の実施については、最終的には教育委員会が、学校長や社会教育施設の長の判断を尊重しつつ、判断するものとされている。 第2に、第13条改正については、「本条の改正後も社会教育委員の役割の重要性は変わらないこと。したがって、引き続き各地方公共団体においては、社会教育に関する諸計画の立案や青少年教育に関する助言、指導など社会教育委員の積極的な活動が展開されるよう留意すること」と特記されている。 なお、本改正とあわせて、図書館法、博物館法についても、所要の一部改正が行われている。また、関連の政省令の改正及び告示が行われた。 |
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(参考文献) ・社会教育法等の一部を改正する法律等の施行について(平成20年6月11日 各都道府県教育委員会等あて 文部科学事務次官通知)、文部科学省ホームページ、https://www.mext.go.jp/a_menu/01_l/08052911/1279324.htm、2024年1月29日参照。 |
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2.社会教育法の一部改正―平成29年 (1)改正の趣旨と経緯 今回の社会教育法の改正は、「義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図るための公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律」の一部として改正されたものである。この法律は、子供をめぐる教育課題が複雑化・困難化する中、学校の指導・運営体制を強化するとともに、地域住民との連携・協働を含めた学校運営の改善を図ることにより、学校の機能強化を一体的に推進することが重要であることから、関係法令の改正を行うこととされたものである。 同法においては、地方教育行政の組織及び運営に関する法律についても、学校運営協議会の設置の努力義務化等の改正が行われた。 改正の内容は、平成27(2015)年の教育再生実行会議第6次提言及び同年の中央教育審議会答申「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」を踏まえたものである。 (2)改正の概要 第1に、都道府県及び市町村の教育委員会は、地域住民その他の関係者が学校と協働して行う地域学校協働活動の機会を提供する事業を実施するに当たっては、地域住民等の積極的な参加を得て当該地域学校協働活動が学校との適切な連携のもとに円滑かつ効果的に実施されるよう、地域住民等と学校との連携協力体制の整備、地域学校協働活動に関する普及啓発その他の必要な措置を講ずるものとされた(第5条第2項及び第6条第2項関係)。 第2に、「地域学校協働活動推進員」制度が設けられた。すなわち、教育委員会は、地域学校協働活動の円滑かつ効果的な実施を図るため、社会的信望があり、かつ、地域学校協働活動の推進に熱意と識見を有する者のうちから、地域学校協働活動推進員を委嘱することができることとされた。地域学校協働活動推進員は、教育委員会の施策に協力して、地域住民等と学校との間の情報の共有を図るとともに、地域学校協働活動を行う地域住民等に対する助言その他の援助を行うものとすることとされた(第9条の7関係)。 (3)留意事項 本改正法施行通知においては、「留意事項」が付されている。主なものを挙げると、第1に、地域学校協働活動の意義について、「住民等が学校の授業や部活動等を含めた多様な学校の教育活動に参加するなど、教育課程の内外に関わらず、地域と学校の連携協働が促されることにより、社会総がかりでの教育を実現し、地域の活性化が図られることが期待されている」と指摘されている。 第2に、教育委員会が講ずべき連携協力体制の整備等の措置(第5条第2項等)の具体例が示され、「その他の必要な措置」の例示として、地域学校協働活動に関する目標・計画の策定・評価が例示されている。 第3に、学校運営協議会と地域学校協働活動との関係について、今回の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正により、学校運営協議会は「学校の運営への必要な支援」に関しても協議することとし、その委員として「地域学校協働活動推進員その他の対象学校の運営に資する活動を行う者」を含めることとされた(第47条の6)。この趣旨について、学校運営協議会において地域学校協働活動推進員も参画して「必要な支援」について協議を行い、これを地域学校協働活動に反映させることで、教育活動の充実や教職員の負担軽減等、学校運営の改善を図るものであると指摘されている。 |
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(参考文献) ・義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図るための公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律等の施行について(平成29年3月31日 各都道府県教育委員会等あて 文部科学事務次官通知) |
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3.社会教育法の一部改正−令和元年 (1)改正の趣旨と経緯 今回の社会教育法の改正は、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための 関係法律の整備に関する法律」(いわゆる第9次一括法)の一部として改正されたものである。この法律は、平成30(2018)年の閣議決定「平成30年の地方からの提案等に関する対応方針」を踏まえ、地方公共団体への事務・権限の移譲等、所要の措置を一括して講ずるものである。 このうち社会教育関係法律の改正は、教育委員会が所管する公立の図書館、博物館、公民館その他の社会教育に関する教育機関(以下「公立社会教育機関」という。)について、一定の場合に、所要の措置を講じたうえで、条例により、地方公共団体の長が所管することを可能とするものである。 このため、同法においては、社会教育法のほか、図書館法、博物館法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)の一部改正も行われている。 改正の内容は、平成30(2018)年の中央教育審議会答申「人口減少時代の新しい地域づくりに向けた社会教育の振興方策について」を踏まえたものである。 (2)改正の概要 第1に、地方公共団体は、条例の定めるところにより、当該地方公共団体の長が、公立社会教育機関のうち当該条例で定めるもの(以下「特定社会教育機関」という。)の設置、管理及び廃止に関する事務(以下「特定事務」という。)を管理し、及び執行することとすることができることとされた(改正後の地教行法第23条、社会教育法第5条第3項及び第6条第3項関係)。 第2に、これに伴い、社会教育の適切な実施の確保に関する所要の担保措置が設けられた(地教行法第33条第3項、社教法第8条の2及び第8条の3)。 (3)留意事項 本改正法施行通知においては、詳細な「留意事項」が付されている。主なものを挙げると、 1)特定事務を地方公共団体の長が管理・執行することとする場合でも、当該事務を除く当該地方公共団体の社会教育に関する事務は引き続き教育委員会が管理・執行するものであること 2)都道府県が関係法の規定に基づき域内の社会教育機関に関して行う指導、助言や研修等については、社会教育機関の設置者としての事務ではないことから、特定事務を地方公共団体の長が管理・執行することとする場合でも、教育委員会が引き続き行うこと 3)地方公共団体の長が特定社会教育機関を所管することとなった場合であっても、当該機関が社会教育法、図書館法、博物館法等に基づく社会教育機関であることに変わりはなく、社会教育の政治的中立性、継続性・安定性の確保、地域住民の意向の反映、学校教育との連携等に留意するとともに、多様性にも配慮した社会教育が適切に実施されることが重要であること また、法律及び法律に基づく基準等を踏まえた専門的職員の配置・研修、運営状況の評価・情報発信、審議会や協議会等の積極的な活用等が重要であること 4)地方公共団体の長が特定社会教育機関を所管することとなった場合であっても、教育委員会には、総合教育会議等を積極的に活用しながら、首長部局やNPO等の多様な主体との連携・調整等を行い、社会教育の振興のけん引役としての積極的な役割を果たしていくことが求められること 等である。 特に最後の点については、むしろこれを契機として、前記の中央教育審議会答申の趣旨に沿った適切かつ総合的な社会教育行政が期待される。 |
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(参考文献) ・第9次地方分権一括法(地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(令和元年法律第二十六号))による社会教育関係法律等の改正(令和元年6月) 、文部科学省ホームページ、https://www.mext.go.jp/a_menu/01_l/08052911/1417789.htm、2024年1月29日参照。 |
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