生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2021年1月7日
 
 

Jプラン教員の生涯学習に関する意識(じぇいぷらんきょういんのしょうがいがくしゅうにかんするいしき)

キーワード : Jプラン 、小・中学校間の接続 、小・中学校間の人事交流 、中1ギャップ
綱河信一(つなかわしんいち)
 
 
 
  1.Jプランの概要
  「Jプラン」とは、埼玉県教育委員会が独自に行う、いわゆる中1ギャップの解消を主なねらいとする人事交流で、中学校の教員が同一学区にある小学校に異動し、2年間5年・6年生を担当し、着任した時の小学5年生が中学校へ進学をする時に、いっしょに中学校に戻る制度のことである。埼玉県教育委員会の通知(2015)によると、「Jプラン」とは、埼玉県教育委員会及び市町村教育委員会が行うもので、次のようなものである。その趣旨については、埼玉県教育委員会では以下のように規定している。「中学校区を単位とする小・中学校教員の人事交流をとおして、協働関係を構築し、児童生徒一人一人の実態に応じたきめ細かな学習指導、生徒指導等の一層の充実に資することを目的に研究等を実施するものである。特に、子供達が小学校から中学校へ円滑に適応するための架け橋とするものである」。具体的な内容については、「『学習指導の充実』及び『生徒指導の充実』を図るものである。『学習指導の充実』では、中学校教員の教科の専門性を、小学校における教科等の担任制に活用し、基礎学力の向上及び発展的な学習などの専門的指導を行うものとしている」。また、「小学校教員のきめ細かな指導を中学校の学習指導に生かし、小学校から入学してきた生徒の実態に応じた学習指導に資する。『生徒指導の充実』では、小・中学校が一体となった生徒指導体制を構築する。例えば、中学校の生徒指導主任等の経験者を小学校に、小学校高学年の担任等の経験者を中学校に配置することによって、小学生が中学校に入学する際の不安、戸惑い等を解消する。特に、中学校の1年生で急増する不登校など生徒指導上の課題に対応するものとしている」と述べている。小・中学校教員の交流における人事異動の概要等については、(1)原則として中学校区の小・中学校を対象にし、(2)原則として小学校普通免許状を所有する中学校教員を小学校へ、中学校普通免許状を所有する小学校教員を中学校への異動するものである。
 小・中学校間を異動し、両方の校種を経験することにより、児童・生徒の不安を解消し、小学校から中学校まで継続的な指導を行うことのできるJ プラン教員は、異校種間両方を異動したことのない他の教員に比べて、子どもの将来まで見すえた指導をしようという意識が高いことが考えられる。
 
  (参考文献)
・埼玉県教育委員会通知「教小第273号埼玉県公立小中学校間人事交流(Jプラン)実施要領」平成27(2015)年9月
 
 
 
  2.Jプランの実際と課題
 滑川町では、「中学校の教員が小学校に2年間在籍し、5年生、6年生を担当して3年目に一緒に中学校に戻ってくるシステムのことで、中学校新入学生徒の学校不適応(いわゆる中1ギャップ)の解消をねらった人事交流の一形態」としている。三郷市では、「中学校を単位とする小中学校教員の人事交流を通して、学習指導、生徒指導等の一層の充実に資することを目的に実施するものである。本年度より2カ年間、A先生が、B中学校より本校に来られた」と記述している。久喜市では、「小中学校9年間を一貫した教育の推進を図るために、小・中学校間の異動に努める」の質問に対して、市は、「県の施策では、『Jプラン』という、期限を決めて中学校の教員を小学校に送り、そのまんま小学生を指導して、指導した子どもたちと一緒に中学校に戻るというもの。免許については特に制限は示していない」としている。川口市では、「一貫教育において、小・中学校の教員が往ったり来たりというのはあるのか」の質問に対して、市側は「県のJプランというものがあり、異動先の校種異動先の校種の免許を有していることを前提にとして、小学校から中学校へ、またその逆で、中学校から小学校へ、2年間という期間を定めて異動することがある」としている。また、「本市ではJプランによって異動している教職員はいるのか」の質問に対して、「平成25年度・26年度でC中学校の理科の教員が、D小学校に異動している。」としている。川越市では、「今年度、川越市立E中学校から本校に着任しましたF教諭を紹介する。現在、5年生の副担任をしている。また、算数のチームティーチングや少人数指導も行っている。本校には、Jプランという人事異動で配属された。Jプランとは、小学校から中学校への進学を円滑にするために、埼玉県教育委員会が行っている小学校と中学校の人事交流である。埼玉県では、今年度9人がJプランとして小学校に配属されている。本校には、2年間勤務する予定である。現在の6年生や5年生が中学校へ進学する際、入学への不安、戸惑い等を少しでも解消できるように、中学校の学習や生活の様子を伝えたり、相談に乗ったりしていく」としている。
 筆者が行ったJプラン教員への生涯学習についての意識に関する聞き取り調査等によると、小・中学校間を往復するJプラン教員などは、生涯学習理念や生涯学習と学校教育との関係を理解し、そのことが、児童・生徒への日常における指導や児童・生徒の将来まで見すえた指導に生かされる可能性があることが確認された。 
 このように、埼玉県内の市町村において、Jプラン教員はそれぞれ置かれた立場で教育活動に従事しているが、単年度、県全体で20人程度の参加であり、すべての公立小・中学校において存在しているわけではなく、Jプラン制度が小・中学校の教育に対して極めて大きな影響力をもつものとは考えられない。しかし、その働きに着目することは、小学校と中学校を橋渡しし、児童生徒の将来に向けての育ちを支援するという意味で、生涯学習の視点での研究に欠かせないものと考える。
 
  (参考文献)
・埼玉県滑川町「平成21年度滑川町教育行政重点施策」平成21(2009)年
・埼玉県三郷市立北郷小学校「平成22年度学校だより4月号」平成22(2010)年4月
・埼玉県久喜市「平成25年度第9回定例教育委員会」平成25(2013)年9月
・埼玉県川越市立広谷小学校「平成27年度学校だより第3号」平成27(2015)年
・日本生涯教育学会第40回大会研究発表「生涯学習の視点からみたJプラン教員等の意識に関する調査・研究」令和1
(2019)年11月
 
 
 
 
   



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