生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2007(平成19)年7月22日
 
 

「放課後子どもプラン」への期待 (「ほうかごこどもぷらん」へのきたい)

キーワード : 子育て支援から自立・発達支援へ、少子高齢社会対応、地域指導者の費用弁償
森本精造(もりもとしょうぞう)
1.「放課後子どもプラン」への期待
   
 
 
 
   平成19年度の新規補助事業「放課後子どもプラン」は、文部科学省ではポスト「地域子ども教室」事業である。
 旧穂波町(現「飯塚市」)では、18年度「地域子ども教室」事業を受託し、全小学校5校を活用し、275日間「子どもマナビ塾」事業として実施した。その概要は子どもたちの学習や体験活動プログラムを各期(1学期、夏休み、2学期、冬休み、3学期、春休み)ごとに選択させ、1回100円の受講料をとった。対象児童の約3割が受講し、延べ約10、000人に及ぶ高齢者等の地域のボランティア指導者を活用した。効果も評価も高かった。それだけに「放課後子どもプラン」には大きな期待をもったが現実は実施できなかった。財政難も理由だが、今後の重要事業だからこそ、本事業補助要項の再考を期待する。
1.「放課後子どもプラン」事業の持つ意義
(1)学童期の子育て支援事業
 核家族化や共働き家庭の保護者は、放課後・休日に安全・安心できる子どもの居場所を求めている。その時間帯に子どもを預かってくれる場があるかどうかは子育て支援上の今日的課題であり、その意味で児童クラブ(以下「学童保育」)の存在は大きい。現に参加する児童数も増加している。
(2)少子化対策事業
 子育て支援は働く保護者とっての重要課題である。少子化対策には、特に女性にとっての働きやすい環境づくりが不可欠である。
(3)男女共同参画社会づくり事業
 女性にとって子育てに心配なく働ける環境づくりは、女性の社会参加につながる。男女共同参画社会づくりの原点である。
2.「放課後子どもプラン」の発展
 ここまでは従来の厚生労働省の学童保育事業で良かったと考える。しかし変化する社会は「放課後子どもプラン」をそれに留めていない。
(1)学社連携事業
 小学校の空き教室を活用する事業になった。学社連携も現実は決して車の両輪にはなっていなかった。この事業で学校が開かれ、学校が動くことになれば、一気に真の学社連携や融合が進む。
(2)教育と福祉の連携が可能になる事業
 教育の「地域子ども教室」と福祉の「学童保育」は対象児童が同じであるが担当部局が異なる。同じ行政で子どもの取り合いはできない。大臣同士で話し合いがついたと聞き、縦割り行政の壁が無くなると期待したのだが。現実はそうならなかった。一体化のチャンスである。
(3)高齢社会対応事業
 増加する高齢者を限りなく活用できる事業である。高齢者が持つ豊かな知恵や能力を、体験不足の現代っ子に伝えたい。子どもたちと高齢者の交流は、高齢者の生きがい対策や医療費の削減にもつながる。子どもたちの欠損体験が補える。期待は大きい。
(4)子育て支援を超えた自立・発達支援事業
 共働き家庭は、家庭の教育力の低下に不安を抱き、預けることだけで満足できなくなっている。高齢者を指導者とし、学習・体験のプログラムを導入すれば、子育て支援の機能に自立・発達支援機能を付加させることができる。その時指導者になる高齢者に費用弁償程度の財政負担をすることが安定事業推進の鍵である。
3.「放課後子どもプラン」の可能性
 「放課後子どもプラン」は、参加する子どもは有料とし、高齢者をボランティアとして活用し費用弁償程度支出を行い、意図的プログラムを取り入れたとき、はじめて現在社会の重要課題である「少子高齢社会」対策の教育事業になり、類似事業の多少削減もカバーする革命的事業に発展するはずである。期待は大きい。
 


 
 
 
 
  参考文献
 
 
 
 
   



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