登録/更新年月日:2008(平成20)年1月1日 |
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ニューバトル・アビー・カレッジ(Newbattle Abbey College)は、1937年創設でエディンバラ近郊に立地する。その最大の目的は、不利な立場に置かれている成人の社会復帰や高等教育進学を支援することである。 その中核となる取り組みが、全寮制の「アクセス」課程(‘Access’courses)である。その入学要件は、年齢20歳以上で、大学等高等教育機関に在学経験がなく、かつ中等教育修了水準の学力認定資格が不成績もしくは未習得であったことである。上記の条件の満たす志願者に対して、学習への動機・意欲が十分であることおよび1年間寄宿生としてしっかり勉学に励むことができるかどうかを、面接と参考人2名に対して確認する。ただ、定員が満たされていない年度も多い。入学志願者は定員をはるかに超えているものの、全寮制での勉学に1年間耐えられる段階に至っているかが問題となるからである。 入学者の男女比は、平均すれば男性6割、女性4割程度である。大学等高等教育機関への進学準備を目的とする者も多いが、全員ではない。学びたいから学ぶ者、教育を受けることで就職したい者、また工芸等職業専門教育機会のための準備学習をする者もいる。入学者は、9月開始で翌年6月までで「ニューバトル認定証(Newbattle Award)」という資格の取得を目指す。その正式名称が、「ニューバトル・アビー人文・社会科学認定証」(Newbattle Abbey Arts and Social Science Award)であるように、人文・社会科学的素養を認証する。 入学者は、情報技術、コミュニケーション、数的処理力(Numeracy)、文章創作、文学、心理学、社会学、歴史、エコロジー、政治学について学習する。教育の方法は、少人数教育で、グループ学習や討議形式を多く取り入れている。それは、従来型学校教育にあまりなじんでこなかった場合の多い入学者への適切な教育方法でもある。 普通学力を培うことと併せて、将来の進路を見据えるためのキャリア教育も熱心に実施されている。在学者はニューバトル・アビー・カレッジで学ぶ内容と進路の関係がさらに意識づけできるようにマインド・マップを自ら作成する。それはまた入学時にはまだ漠然としがちであった将来進むべき道をより明確かつ具体的にするための作業でもある。 同カレッジ「アクセス」課程在学生には、給付奨学金が支給となる。その額は授業料と生活費を賄うことができるので、社会的に不利な立場に置かれた人々に経済的負担を負わずに済む。 修了後の進路としては、入学者の半数以上が大学等高等教育機関に進学し、25パーセントがそれ以外の教育機関に進み、15パーセントが就職している。好成績で修了すれば、エディンバラ大学などの銘柄大学にも入学できる。なお、高等教育機関進学先には、短期高等教育水準職業資格取得を目指す課程も含まれる。 以上のように、成人に対して、直ちに「手に職」を付けるタイプの教育機会ばかりでなく、上級の教育・職業能力開発へと進んでいくことで自立支援をしていこうとする学習機会も併せて用意されているのである。それは、ある程度の基礎固めをした上で上級の教育・職業能力開発に進んでいくという方式でもある。そのような取り組みを支えている一つの学舎が、まさにニューバトル・アビー・カレッジなのである。 (2006年3月21日に筆者現地訪問調査) br> |
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参考文献 ・柳田雅明「イギリス・スコットランドにおける成人学習・能力開発支援実践 -ニューバトル・アビー・カレッジの事例-」『産業教育学研究』36-2、2006 ・柳田雅明「イギリスにおける成人向け大学等進学準備課程の再検討 -自立支援政策との関連を焦点に-」『日本生涯教育学会論集』28、2007 ・ニューバトル・アビー・カレッジ・ホームページ(英語) ・http://www.newbattleabbeycollege.ac.uk/(2007年12月30日参照) |
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