生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2017(平成29)年1月7日
 
 

栃木県における地域連携教員制度の成果 (とちぎけんにおけるちいきれんけいきょういんせいどのせいか)

キーワード : 地域連携教員、社会教育主事有資格者、地域連携担当教職員
山崎浩之(やまざきひろゆき)、井上昌幸(いのうえまさゆき)
1.栃木県独自の地域連携教員制度の目的と成果の広がり
   
 
 
 
   栃木県独自の指針を定めた地域連携教員は平成26(2014)年4月から設置され、公立学校(小学校、中学校、高等学校、特別支援学校)でさまざまな取り組みが行われている。栃木県独自の指針とは以下の通りである。 
【目的】
 各学校に地域連携に携わる教員を「地域連携教員」として設置することにより、学校と地域が連携した教育活動を、生涯学習の視点から効果的・効率的に展開することを目的とする。
【指名】
 所属長の校長が指名し校務分掌に位置づける。
(1)社会教育主事有資格者(社会教育法第9条4の規定)
(2)地域と関わる教育活動に積極的に取り組み、力を発揮していると認められる者
   学校と地域との連携において優れた実践力を有すると認められる者
(3)学校と地域との連携の重要性を十分に理解し、地域連携業務を推進する意欲を
  有すると認められる者
【職務】
 地域連携教員は主に次の業務を行うものとする。
(1)学校と地域が連携した取組の総合調整に関すること
(2)学校と地域が連携した取組の連絡調整や情報収集に関すること
(3)学校と地域が連携した取組の充実に関すること
 そして、特に目的と職務を強く意識した地域連携教員が、公立学校で学校と地域の連携を推進する窓口となり、地域の教育資源を生かした教育活動をそれぞれ行っている。
 地域連携教員を設置することによる成果として、「地域連携に関する学校の窓口の明確化」、「地域連携に関する校内の推進体制の整備」、「児童生徒の生きる力の育成」、「地域に根ざした特色ある学校づくりの推進」、「学校を核とした地域づくり」などがある。
 また、実際に地域連携の活動に参加することによる成果として、児童・生徒にとっては「社会性やコミュニケーション能力の育成」、「学びの充実」、「自尊感情や自己肯定力の育成」、「地域への愛着と地域の担い手としての自覚」などがある。学校にとっては「充実した教育活動の展開」、「地域への理解」などがある。地域や保護者にとっては「自己有用感や生きがい」、「住民同士のつながり」、「地域づくり」などがある。地域連携教員にとっては「やりがい」、「自己教育観の変化」、「視野の広がりや意欲向上」などがあり、このようにそれぞれの立場でそれぞれの成果があげられる。
 実際の事例として、校内各委員会や部活動などでそれぞれ行っていた地域連携活動を地域連携教員が調査をすることで、学校全体としての地域連携活動として内容や日時を把握することができ(管理職や学校全体としても把握することができる)、これらを効率良く改善及び実施することで、今まで以上の教育的効果があったというケースもある。また無理のない範囲でということで、既存の制度を活用することで市内の中高での部活動を通じた連携活動に発展したケースもある。
 栃木県をはじめ、岡山県、仙台市(宮城県)、南部町(鳥取県)や東みよし町(徳島県)でも同様の取り組みを行っており、これらの成果を受ける形で、文部科学省は地域の力を生かした学校教育の充実や学校全体の負担軽減、マネジメント力の向上を図るため、学校内において地域との連携や協働の推進の中核を担う教職員を、地域連携担当教職員(仮称)として法令上明確化することの検討を始めた。
 
 
 
  参考文献
・地域連携教員の設置に関する指針(栃木県教育委員会教育長決裁)
・平成27年度地域連携教員活動支援事業資料(栃木県教育委員会)
・栃木県教育振興基本計画2020−教育ビジョンとちぎ−(栃木県教育委員会)
・「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」(中央教育審議会平成27年12月21日)
 
 
 
 
   



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