生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2018(平成30)年2月13日
 
 

レジリエンス (れじりえんす)

resilience
キーワード :生涯学習、社会の活力、持続可能な社会、復興、少子高齢化
山本恒夫(やまもとつねお)
1.レジリエンス
   
 
 
 
  【定義】
 一般的には弾力性、回復力、立ち直る力のことで、回復後の成長力までも含めることがある。生涯学習関連領域では、力の落ち込みからの回復力・成長力をいう。
【説明】
 生涯学習関連領域では、学習によってレジリエンスを身に付けるという観点からこれを取り上げている。レジリエンスを必要とする社会的背景としては、少子高齢化の急速な進展の中で、社会の活力が衰え、停滞感に覆われるおそれがあるため、レジリエンスが持続可能な社会(sustainable society)構築の原動力となることへの期待がある。また、社会の流動化も激しくなり、個人の生涯にあってもさまざまな起伏が生じるの中で、落ち込みを回復し、さらに成長を図るために、レジリエンスを身につけることが必要とされるようになりつつある。
 生涯学習関連領域のレジリエンスに関する学習機会としては、社会通信教育講座があり(生涯学習支援実践講座『生涯学習コーディネーター新支援技法研修 第T単元・成人の学習の理解とV字型回復力・成長力(レジリエンス)』平成26年1月、社会通信教育協会)、そこでは専門力の共通基盤となる情報収集力・事象把握力・論理力・判断力・問題解決力・創造力が取り上げられている。
 レジリエンスについての関心は高まっており、心理学のレジリエンス研究が学校教育、育児等で活用されたり、看護学でも患者のレジリエンス研究が行われたりしているが、他にも次のようなものがある。
 まず、国レベルでは「ナショナル・レジリエンス(防災・減災)」がある。これが広く知られるようになったのは、平成23(2011)年3月の東日本大震災の後、平成25(2013)年3月に、「ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会」が内閣官房に設置されたことによる。その検討範囲は、産業、エネルギー、情報、環境、地方行政、農林水産業、コミュニティ、財政・金融、国土エネルギーとなっている。
 防災・復興については、京大・NTTリジリエンス共同研究グループ『しなやかな社会の創造―災害・危機から生命、生活、事業を守る』(日経BP企画 日経BP出版センター〔発売〕、2009)がある。
 さらに、経済の分野では、economic resilience(経済的な強靭性、弾力性)、resilience of financial markets(金融市場の回復力)などがあり、研究が行われている。
 なお、包括的な概念解説書としては、Andrew Zolli and Ann Marie Healy; RESILIENCE, 2012(アンドリュー・ゾッリ、アン・マリー・ヒーリー(須川綾子訳)『レジリエンス 復活力』ダイヤモンド社、2013)があり、そこでは、個人、集団、金融市場、都市、コミュニティ、ネットワーク、大地震などのレジリエンスが取り上げられている。
 また、一般書としては、Sheryl Sandberg, Adam Grant ;Option B: Facing Adversity, Building Resilience, and Finding Joy,2017(シェリル・サンドバーグ(著)/アダム・グラント(著)/櫻井祐子(訳)『OPTION B(オプションB) 逆境、レジリエンス、そして喜び』日本経済新聞出版社、2017)などがある。
 
 
 
  参考文献
 山本恒夫 「生涯学習事象理論」第3章第3節「レジリエンス」、日本生涯教育学会編『生涯学習研究e事典』(http://ejiten.javea.or.jp/)、2013・4、39−48頁
 
 
 
 
   



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