生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:2006(平成18)年1月27日
 
 

マスコミと生涯学習 (ますこみとしょうがいがくしゅう)

mass communication and lifelong learning
キーワード : 特性・現況、自主規制、自主審査機関、社会的課題、ユピキタス
永尾和樹(ながおかずき)
2.マスコミの社会的課題と活用
  
 
 
 
  【マスコミの社会的課題】
 1)戦争報道と有事法制:湾岸戦争やイラク戦争で、外国軍隊による取材規制が行われ、プール取材(指定された人員のみで指定された場所のみの取材誘導)が行われた。テログループによるペルー日本大使館占拠事件では警察の取材規制があった。
 2)個人情報保護法:平成15(2003)年5月国会で成立し、個人情報を扱う全ての者に対する基本理念のほか、個人情報取扱い事業者に対して、利用目的の通知、公表、第三者への提供制限などの義務規定が定められている。戦後の法律で初めて報道が定義され、個人を含む報道機関や著述業など5つの分野で義務規定の適用除外が盛り込まれている。
 3)少年法:61条は、少年の保護と将来の更生を可能にするため犯罪を犯した少年の氏名、年齢、住所などの報道を禁じているが、特に週刊誌などの写真や似顔絵の掲載をめぐって論争が生じている。
 4)その他:国民の知る権利に対応する自由な取材・報道活動の制約や規制条項が盛り込まれている「人権擁護法案」「青少年健全育成基本法案」「裁判員制度法案」などが国会で審議または検討されている。マスコミ事業者や関係者はこれらの法案に懸念を表明している。
 5)自主審査機関:視聴者や市民が取材・報道によって誤報道や人権・名誉・プライバシーの侵害を受けた場合に、日本民間放送連盟と日本放送協会(NHK)は「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の中に「放送と人権等権利に関する委員会」(BRC)を委員8名によって平成3年に組織し、裁判事項にならない視聴者からの申し立てを受付けて審査している。判定によっては放送局に訂正放送などの勧告ができる。
【生涯学習とマスコミ】 
 1) 活用:多メディア化・多チャンネル化したメディアで日常発信される様々な番組・記事・映像ソフトの活用は、学習目標に対応した視聴覚的間接教育効果が期待できる。
 2) 接触・交流:活動・研究報告内容を地域の新聞、ケーブルテレビ、ラジオ、雑誌などのマスコミに発信し、地域・全国に知らせることは重要である。また、マスコミスタッフ(記者、カメラマン、ジャーナリスト)との交流により、地域社会の報道、研究部門の取材報道など、研究成果またはその応用など意見を交換することも重要になる。各都道府県の庁舎の中に新聞・放送を中心とした記者クラブがあり、そこへの情報提供など有効になる場合がある。
 3)マスコミではないが、地域コミュニティー放送も規制が緩和され増加傾向にあり、学習・教育普及活動と結びつけて構築することもできる。
 日本は情報通信社会の新たな概念、ユピキタス(Ubiquitous)ネットワーク社会の構築へ進んでおり、情報のデジタル化、ネットワーク化がより高度に進化する社会である。マスコミは情報提供の立場から、より人間同士のコミュニケーションが重要になり、より真実、より正確、迅速性、安全性が要求されていく。
 
 
 
  参考文献
櫛田磐、土橋美歩「新訂・視聴覚教育」学芸図書、平成14年
「情報通信白書」平成16年版、総務省
 
 
 
 
  



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