生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:平成18年11月2日
 
 

研究課題・学習成果認証において社会的包摂をいかに実現するのか (けんきゅうかだい・がくしゅうせいかにんしょうにおいてしゃかいてきほうせつをいかにじつげんするのか)

How do we realize social inclusion at assessment to learning outcome?
キーワード : 学習成果認証社会的包摂資格診断的評価スコットランド
柳田雅明(やなぎだまさあき)
3.スコットランドに見る制度設計の現状と課題
  
 
 
 
   イギリス連合王国のスコットランドでは、「すべての人のための学習(Learning for All)」に向けた取り組みが進んでいる。従来からスコットランドでは高い税金・国民負担を前提としつつも手厚い就学支援政策がされてきた。そして、あらゆる学習者への首尾一貫した支援を体系的に実施するための枠組みとして、SCQF(Scottish Credit and Qualifications Framework, スコットランド単位・資格枠組み)が、現在設定されている。
 学習成果認証において社会的包摂に向けた取り組みは、そのSCQFのもとに行われている。アファーマティブ・アクション(積極的差別是正処置)をする場合でも、その到達度水準を原則として明示した上で運用する。それらの取り組みを紹介する。
 アクセス1資格(Access 1 Qualifications)とアクセス2資格(Access 2 Qualifications)は、義務教育年限終了後に学習に遅れがみられる者向けに設定されている資格である。普通学力を対象とする中等教育水準の資格群の下の水準に位置づいているアクセス1資格とアクセス2資格は、生活スキルをも認定していく。このようにきめ細かく段階を踏む方式は、インランド・ウェールズにおけるエントリー資格水準(Entry levels)よりもさらにきめ細かい設定である。
 アクセス1資格とアクセス2資格は、SCQFにきちんと位置づけられており、その上の到達度水準ともきっちりかみ合っている。したがって袋小路の学習成果認証ではない。学習者はその習得速度に応じて、追って標準的な到達度を目指すことになる。知る人だけが知るものでなく、国公認の資格として位置づけられ、認知されている。そこには、到達度に関する厳正さがあり、かつ社会的包摂がある。
 成人向け高等教育進学準備課程(Access to HE courses)も、社会的包摂に該当する取り組みの一つである。不利な立場に置かれている成人の社会復帰や高等教育進学を支援する寄宿型教育施設であるニューバトル・アビー・カレッジ(Newbattle Abbey College)におけるニューバトル認定証(Newbattle Abbey Award)で求められる到達度は、一般の高等教育入学者よりも1学年下の水準である。そして修了生は、スコットランド内の多くの大学に入学している。
 スターリング大学(University of Stirling)では、IT講習や基礎学力向上の講座等を、無料かつ託児完備・交通費支給で、学内もしくは近隣地域で実施する取り組みであるCAML、ならびに既習得の知識・技能を、グループ学習を通じてポートフォリオ方式で確認することで自信を付け、学ぶ意欲が向上することを目的とした取り組みであるVaLExが、ともに時限付きであるが取り組まれている。これらの学習機会は、成人向け高等教育進学準備課程への入学を促すきっかけ作りとなるよう設定されている。ただ、その修了後直ちに学部の正規学生として入学することは想定されていない。このように、きっかけ作りであっても到達度水準の確認がない学習機会は原則として進学の到達度要件とはならない。
 一方、より幅広い一般成人を主な対象とする「スコットランド集積認定証(Scottish Group Awards)」に関しては、現時点であまり機能していないことを、現地の政策執行を担当する「スコットランド資格機関(Scottish Qualifications Authority)」も自ら認めている状況であり、今後の課題ではある。
 
 
 
  参考文献
・Scottish Qualifications Authority, National Qualifications: Explaining Access 1 and 2 Qualifications Glasgow: Scottish Qualifications Authority, 2006.
・Mary Simpson, Assessment, Dunedin Academic Press, 2006.
 
 
 
 
  



『生涯学習研究e事典』の使用にあたっては、必ず使用許諾条件をご参照ください。
<トップページへ戻る
 
       
Copyright(c)2005,日本生涯教育学会.Allrights reserved.