生涯学習研究e事典
 
登録/更新年月日:平成18年1月27日
 
 

「新しい公共」と生涯学習推進 (あたらしいこうきょうとしょうがいがくしゅうすいしん)

キーワード : 新しい公共NPO自立と寛容の精神個人の需要と社会の要請地域子ども教室推進事業
山本裕一(やまもとゆういち)
1.何が新しいのか
  
 
 
 
  【中教審答申への登場】
 生涯学習の分野で「新しい公共」という表現が使われたのは、中央教育審議会答申「青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策について」(平成14年7月)からである。答申では、「個人や団体が地域社会で行うボランティア活動やNPO活動など、互いに支え合う互恵の精神に基づき、利潤追求を目的とせず、社会的課題の解決に貢献する活動が、従来の『官』と『民』という二分法では捉えきれない、新たな『公共』のための活動とも言うべきものとして評価されるようになってきている。」としている。
 なお、本答申は新たな公共を創り出すことに寄与する活動を幅広く「奉仕活動」として捉え、社会全体そして推進する必要があるとした。とりわけ青少年の時期には、多様な体験活動の機会や豊かな人間性、社会性を培うことが必要であり、そうした機会を充実することが新たな公共を支える人間に成長していく基盤になるとして、青少年期の奉仕活動の重要性について提言している。
【説明】
 この二分法論については、私的領域と公共的領域を二分論で考え、公共的領域を役所だけが担うという発想であり、これまで当たり前のように受け入れてきた二分論では説明しきれない活動が活発化し、新たな公共的領域の担い手としての「私」が、高く評価されるようになってきたという現実を踏まえる必要がある。
 「新たな公共」を論ずるうえで、欠かせないのは小渕総理(当時)によって設立された「21世紀日本の構想」懇談会(河合隼雄座長)の「日本のフロンティアは日本の中にある―自立と協治で築く新世紀―」(2000年1月)である。この報告書では、インターネットの普及やNPO活動、ボランティア活動の活発化などを背景として、21世紀は個人がこれまでにないほど力を持つとし、その力を政府と社会の活性化に役立たせるべきであると提言し、個と公との関係の再定義、再構築をあげ、次のような指摘を行っている。
 自由で自立し責任感のある個が自らの意思で公的な場に参画し、押し広げることで、躍動的な公が作り上げられていく。ここでいう公は、行政によって一方的に決められた従来の公共や公益ということではなく、個人を基盤に力を合わせて共に生み出す新しい公であるとしている。また個を確立し、公を創出するにはこれまでの日本の社会では十分に表現の場を与えられてこなかった自立と寛容の精神を育てなければならないとしている。前者では、自立した個人の才能、やる気、決断、倫理観、美意識そして知恵が国の骨格と品格をつくり、自立の精神があって個人は潜在力を外に押し出すことができるとしている。後者では、個々人の特質と才能の違いを認め、それを伸ばしていくという寛容の精神があって、社会は潜在力を中から引く出すことができるとしている。
 このように個人の側から、あるいは社会の側から必要とされるキーワードを提示しているが、いずれも我々一人ひとりが意識していかなければならない課題である。そして、そのための具体策をどう講じていくか、それを行政に委ねるのではなく、多くの人々の参画によって進めていくことが、今求められているのであり、そのことが新しい公共を築いていくことにつながるであろう。

 
 
 
  参考文献
・ 中央教育審議会答申「青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策について」(平成14年7月29日)
・ 「21世紀日本の構想」懇談会「日本のフロンティアは日本の中にある―自立と協治で築く新世紀―」(2000年1月)
 
 
 
 
  



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