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登録/更新年月日:平成22年1月4日
 
 

派遣社会教育主事制度の歴史 (はけんしゃかいきょういくしゅじせいどのれきし)

キーワード : 社会教育主事派遣社会教育主事専門的職員社会教育主事未設置市町村派遣社会教育主事給与費補助
坂本登(さかもとのぼる)
1.派遣社会教育主事設置の経緯
  
 
 
 
   制定時(昭和24(1949)年)の社会教育法には,社会教育主事に関する条項がない。同法に社会教育主事が登場したのは,昭和26(1951)年の改正時のことである。この改正では,都道府県の教育委員会に対して「社会教育主事及び社会教育主事補を置く」ことを義務付け,市町村の教育委員会に「置くことができる」と,任意設置とされた(同法第九条の二)。
 市町村の教育委員会に,社会教育主事の設置が義務づけられたのは,昭和34(1959)年の同法改正時のことである。しかし,人口1万人未満の町村の教育委員会には,当分の間の措置として,設置義務が猶予された(昭和34年,政令158号附則2)。
 ところが,これ以降も社会教育主事の設置が改善されず,これを憂慮した社会教育審議会は,昭和46(1971)年の答申「急激な社会構造の変化に対処する社会教育のあり方について」で,「社会教育主事の重要性とその整備充実」の必要性を指摘し,「人口1万以上の町村にはすみやかに設置させるとともに」,「設置義務を猶予されている人口1万未満の町村にも極力設置を勧奨する」よう提唱した。また同答申では,設置に要する「財源を保障するため」,地方交付税を活用した「派遣社会教育主事方式」が勧奨された。
 同審議会はまた,昭和49(1974)年6月にも「市町村における社会教育指導者の充実強化のための施策について」を答申した。この答申に際し同審議会は,社会教育主事の設置義務が課せられている人口1万人以上の市町村に対し,「たびたびの行政指導も行われているが」,かなりの市町村で未設置の状況にあり,「設置している市町村においても専任者の数は少な」く,「市町村の財政力の問題」もあって,人材の確保を「すべての市町村に求めることが容易でない」との認識を示した。そのうえで,市町村の社会教育の充実・振興を期すためには,「市町村における社会教育主事の確保充実をひとり市町村に期待するばかりでなく,県および国においても積極的に協力する必要がある。」と提唱した。
 ここに「派遣社会教育主事」制度は,社会教育の現場である市町村が,社会教育推進の中核としての専門的職員を確保できるよう,都道府県が適切な人材を市町村の求めに応じて派遣するため,国が都道府県に対して必要な財政的援助の措置(派遣社会教育主事給与費補助制度)として,昭和49(1974)年度から開始された。
 これを契機に,市町村の社会教育主事の設置が伸張する。その設置率は昭和46(1971)年度の63.2%から,平成2(1990)年度に85.5%(派遣社会教育主事のみを置く教育委員会を含めると92.2%)に,社会教育主事数は昭和46(1971)年の3,305人から,平成2(1990)年に6,988人となった。こうして当制度は,社会教育主事の設置促進と指導体制の充実にとどまらず,学級・講座等の拡充とプログラム開発,社会教育関係団体・グループの活動の助長など,幅広く市町村の社会教育推進体制の充実に寄与することとなった。
 しかし,平成10(1998)年,国の地方に対する人件費補助の見直しが図られたこと,この制度がすでに各道府県の事業として定着していること,などを理由に,制度の財源措置が,個別事業に対する助成から地方交付税措置いわゆる地方公共団体の一般財源に組み込まれることとなり,派遣社会教育主事給与費補助制度は終了する。
 
 
 
  参考文献
・今村武俊編著『新訂社会教育行政入門』第一法規
・北海道教育委員会『派遣社会教育主事の役割等に関する調査研究』昭和57年度
・(社)全国社会教育委員連合『社教情報』NO.3(昭和51年2月)
・(社)全国社会教育委員連合『社教連会報』第13号(昭和57年3月)
 
 
 
 
  



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